1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

he meets idol

なかまくらです。

終わる気がしない・・・とか言って、まだ8000字くらい。時間にしてほんの20分くらいでござる。

ほんまかいな。*http://1cm3.mamagoto.com/Entry/437/のつづき。


 

 
リポート   ただいまー。おなか減ったー。
 
リポートは、早着替えで、目立たない格好になっている。
 
アイ     おかえりー。
リポート   なにやってんの?
アイ     腹筋。やる?
リポート   えー。
アイ     ノリノリジャン。
リポート   最近おなか出てきちゃって。
アイ     えー、ぜんぜんそんなことないって。
リポート   そう?
アイ     ねえ、
リポート   ん?
アイ     こっちにはもうすっかり慣れたね。
リポート   そうだね。
アイ     ねえっ! 何か思い出さない?
リポート   ・・・何を?
アイ     私ね、実は初めて会った時から思ってたんだ。あのさ、リポートはさ、
リポート   ねえ、私、普通の女の子だよね。どこにでもいる。
アイ     うん。すっかりそうだね。
リポート   じゃあ、いいじゃん。もうさ、普通に私は私じゃダメなの?
アイ     リポートにアイちゃんから問題。
リポート   ・・・なに?
アイ     私は何故腹筋をしているでしょう。
リポート   知らないよ。
アイ     でしょ? 私はね、アイドルなの。しかも、たくさんのライトを浴びて歌ってみんなに笑いかけてた。私はだから自分を磨くの。私ってそういう、それでも普通の女の子なの。知ってた?
リポート   ・・・知らなかった。アイちゃんって、アイドルのアイちゃんなんだ。
アイ     そう。ねえ、あなたは?
リポート   え?
アイ     あなたは、なんなの?
リポート   ・・・・・・。
アイ     私は最初から思ってたの。あなたの服は私達のとはちょっと違った。素材も、雰囲気も。だから思ったの。あなたは、
リポート   私は・・・。
アイ     あなたは、ユートピアから来たんでしょ?
リポート   え?
アイ     この世界にはまだ人類の生きている場所があるんでしょ?
リポート   そうなのかな?
アイ     え? だって、リポートはそこから来たんだから。ねえ、それってどこにあるの? どうやったら行けるの?
リポート   分からないよ。
アイ     まあ、そうだよね。ゆっくり思い出してくれたらいいから。ねっ。
リポート   ・・・うん。
アイ     まあ、さ、ゆっくり思い出してくれたらいいから。私ね、嬉しいの。ずっと私ひとりで、みんなの希望を背負ってきたみたいで苦しかった。でもさ、今は、リポートもいるから。
リポート   いないよ。
アイ     え?
リポート   リポートなんて、そんな人、いないから。
アイ     名前、思い出したの?
リポート   ううん・・・。でも、私の名前はやっぱりそんな名前じゃない。私、ここにいていいのかな。・・・ごめんね。
 
リポート、はける。
 
アイ     ・・・・・・待って。
 
アイちゃん、はけようとして、
隊長、現れる。
 
隊長     あっはっはっはっは。
アイ     ・・・・・・あんたは・・・。
隊長     あっはっはっはっは。私か? 私は、誰でしょう~~。
アイ     シンドバット?
隊長     ぶー。私は~~、アイちゃんファンクラブ会員番号00000102の、taichoだ~~。そして、君のことを捕まえに来たのだ~。隊長だからな~。
アイ     どうしてここが・・・
隊長     この国に置いてある監視カメラの個数を知っているか?
アイ     確か、1500台・・・
隊長     ほほう、さすがアイちゃん。勤勉だな。が、しかし! 真実は違う。
アイ     まさか・・・。
隊長     そう。実際はその10倍・・・いや100倍とも言われている。この国にいる限り、逃れられはしないのだよ。わかるね。
アイ     ・・・・・・っ
隊長     叫ぶ? 助けを求める? 誰に?
アイ     ・・・・・・
隊長     私にだ。
アイ     え?
隊長     私にだ。
アイ     ・・・・・・。
隊長     私だけが君を助けられる。分かるね。
アイ     つまり、私を私自身を売れと。
隊長     ねえ、私ね、もうひとつ資金があるんですよ。ある女の子の話なんですけどね? その子はこの国の人間の服を着ていなかった。この国の厳格なる人口統制のデータベースに乗っていない人間でね・・・。
アイ     それは・・・
隊長     その子は例のアインハップの化物のスパイなんじゃないか、というのが私の見解なんだが?
アイ     ・・・。
隊長     そこで、相談だ。私が、君が私のものになったら、彼女の存在をこっそりデータベースに書き加えておこう。
アイ     そんなことが?
隊長     私なら、可能だ。私を誰だと思っている? この国の隊長であるぞ。
アイ     ・・・・・・そうしたら、彼女はどうなるの?
隊長     この国で今までどおりに幸せに暮らせるさ。
アイ     そう。
隊長     どうだ? 悪い相談ではないと思うのだが?
アイ     ・・・・・・。
 
暗転。





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kyo-kagaku

気晴らしに短編。

30分くらいで書いたので、ちょっと荒いカモ。。。




狂科学者の密室
なかまくら
ふはははは、これで世界はワシのものじゃ!
 
と、どこかで聞き古した台詞を吐きながら跳び去っていくBMW(バッタもんウイング)を、イイダイイダ君は追いかけることにした。
手がかりは瓦礫の中、音速で跳び去るBMWの車体に取り付けられたナンバープレート。
 
イイダイイダ君は社会科の時間に使っていた地図帳を開くと、持ち前のダウジングマシンのテクでBMWの現在地を突き止めた!
一旦突き止めると、地図上をバッタがゆっくりとなんか南下しているのが見えてきた。
 
そして、南極に秘密基地を構えている博士が降り立つのが見えた。
イイダイイダ君は、持ち前の瞬間移動のテクで、博士の居城を訪れることにした。しゅぴん。
 
 
* 数日後 *
 
抗ウイルス学の権威と呼ばれる科学者が次々と謎の死を遂げる事件が起こった。
外傷は一切無いが、一様に頚動脈からの内出血が見られた。
 
ウイルステロに対する特別措置が採られ、ウイルス学の博士達は、厳重なシェルターの中に保護された。
翌日には全滅していた。その監視カメラの映像には、一人の少年が映っていた。
 
少年はあるフレームに突然現れると、軽く手を降り下ろした。その瞬間、近くでトランプゲームに興じていた博士たちが一斉に倒れる。倒れる音を聞きつけた別室の博士たちが、酸素マスクをつけて現れる。床からは神経毒が噴出される。少年は飛び上がると、フッと消えた。その瞬間、何かを口にしていた。
後日、口唇術の専門家に画像を解析してもらうと、「ジャマヲスルナ」と言っていたことが分かった。
それからほどなく、世界は支配される。
 
 
 
* 数日前 *
 
博士は大いににやにやしていた。内閣総理大臣の、ソーリーと謝って済む問題じゃない秘密を握ってやったのだった。
国家予算を極秘に研究費に吸い上げ、世界最強のウイルスを作ってやるのだ。そのウイルスにかかると、人のココロは変化し、人と人とは愛し合い、その愛の聖地としてひとつの街を作る。その街には当然笑顔が溢れ、ウイルスによって笑顔が絶えない。
 
イイダイイダ君と博士はその中で防毒マスクをして過ごす日々を送ることになるのだが、それはまた、別の話。





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palet

やっぱり、趣味じゃなかった。



パレット
作・なかまくら
2012.4.16
 
 
ぱたん。
ドアが何事もなかったように閉まると、さっきまでのことが背中の後ろにいないことに安堵する。
 
音がひとつひとつ遠ざかっていき、
数分も経つと音が身体から全部剥がれ落ちていた。
 
 
ゆっくり靴を脱ぎ棄てて、ふと、揃え直した。どたどたと人が上がってくるイメージが浮かんだ。食器を洗う。水がつつーっと流れる。食器がかちゃんと音を立てる。きゅっきゅと、蛇口を戻すと、静寂が間もなく帰ってくる。
 
ビニール袋を開くと、ロープを取り出して、輪を作る。それを天井の蛍光灯を外したところに掛けると足が届かない位置に輪を提げる。台代わりにつかった机から降りると、ビニール袋を踏んづけてしまい、がさがさと音を立てた。音を立てているのはなんだろう。音を立てて崩れ落ちようとしているのはなんだろう。音を立てているのはこの命だろう。崩れ落ちようとしている、今まさに。それが、意外なくらいにすんなりと、しっくりときていて、妙に納得できていた。
 
机に乗って、首に縄をかける。それから、乾いた目のまま、ひゅっと。
 
風が後ろに流れた。
 
 

 
 
ビニール袋をもって、ドアを閉めると、目を疑った。
 
「おいおいおいおい」
苦しい。待って、こんなに苦しいのはおかしいこんなはずじゃなかったごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいもうにどとしませんからませんからせんからんらかあららんごめんもにとま・・・
 
気が付けば、病院だった。
 
「おはよう」
そして、目をそちらに向ければ、自分と同じ背格好の、男が見えた。
生き別れた双子かと思ったが、そんなものはいないと、直感的に分かった。振り返ったその顔は、間違いなく自分だった。
 
「驚いた顔をしているな、君」
自分は驚いていた。
「驚くのも無理はない。君は生き残るはずじゃなかったんだ」
自分は驚いた顔のままそう言った。
「でね、モノは相談なんだが」
自分は、あっけらかんとした顔をして、
「早く死ね」
そう言った。
「僕には、無理だった」
僕はそう言った。
「そうは言うけどね、君は確かに死のうとしたわけだ」
自分はそう言って、
「そのおかげで、生きたい部分が集まった僕と、死にたい部分が集まった君に、僕らは僕と君に分かれたんだよ。今更どうしろっていうんだよ」
憤りが僕にも伝わってきて、それはよく分かった。
「ごめんなさい」僕は素直に謝って、
「謝ってすむならけーさつは要らないんだよ!」自分は腹立たしそうに言う。
「いいか、簡単な話さ。君は死にたい僕の集合体さ。死にたい君が望み通り消えればいいだけの話さ」自分はそう言って、リンゴをむいていた果物ナイフで僕の身体をピッと刺した。僕はその切っ先がただただ恐ろしかった。
「そうは言うけどさ、君にとって僕はもう必要ないものなの?」僕は寂しくなった。
「・・・・・・」自分は答えない。
僕はあの直前の時を思い出していた。音のない部屋。音が剥がれ落ちていってしまった僕。でも、本当はとくん、とくんと、大切な音はずっと身体の中にあったのに。
「まだ、僕の中に僕を居させてください」僕は僕だった自分にお願いをする。
自分は、何かを考えているようだった。
「僕の中にも死がある」「え?」「僕の中の生きたいという部分はときどき死ぬ気で頑張るということでもあるそれにね、」そう言って自分は、僕を不意に温かく抱きしめてくれる。
「たったこれだけの出会いで僕らの価値観はまたごちゃごちゃに混ざり合ってしまったんだよ」
 
僕は、僕の中の優しい眠りの中についた。





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【戯曲】ONDEMAND

新作! 「ONDEMAND」急に書くのはいつものことです。

15分くらいの短編なのは、体力不足のせい。





ちょっとだけ、前書き。
この作品は、去年大学祭で観た「PEEP」という作品に触発されて書いたものです。
ミステリーでもないホラーでもないSFでもないファンタジーでもないラブロマンスでもない。なんだこれ? 分類できないぞ、という作品を書きたかったのです。
今のちょっとした目標。その実験作です。



ONDEMAND
 
作・なかまくら
2012.4.10
 
 
登場人物
 
加治佐・・加奈子
山田・・・やんまだ
長谷部・・ボーイフレンド
峠原・・・ぱんぴー
 
 
机。漫画のネタに悩む加治佐。
入ってくる、女。山田。
 
 
      山田   しりとりしよう?
      加治佐  しりとり?
      山田   りからね。
      加治佐  理由。
      山田   後ろ盾
      加治佐  て、そうじゃなくて。
      山田   手招き。
      加治佐  聞いてる?
      山田   ルアー
      加治佐  あのね。
山田   寝言。
      加治佐  とりあえずどうした?
      山田   タータンチェック
      加治佐  ・・・苦言を呈するぞ。
      山田   ぞ!? ぞ、かぁ・・・。
 
      加治佐  で、なに?
      山田   うん。家でした。
      加治佐  うん? ここは私の家だけど。
      山田   ううん。家でした。
      加治佐  そうだね、ここは私の家だけど。
      山田   なるほどなるほど。
      加治佐  分かってもらえた?
      山田   よーく分かった。ヨーグルトみたいに冷たいあなたは、家出した私を受け止めてくれないわけね。飛べない豚! ばかっ!
      加治佐  あっ、それを開いてしまうとは! それは、楽しみにとってた最後の・・・
      山田   あまい~。幸しぇ~
      加治佐  この山田のばか!
      山田   どの山田のことです? てれれれってれー。これは?(ジェスチャー)
      加治佐  海だ。
      山田   これは?(ジェスチャー)
      加治佐  雲だ。
      山田   これは?(ジェスチャー)
      加治佐  お前だよ! お前のことだよ!
 
      山田   あっ、ぞ、
      加治佐  ぞ?
      山田   ゾンビ!
 
      加治佐  ・・・・・・・・・。
      山田   ・・・・・・。
      加治佐  あのさ。
      山田   ゾンビがね、
      加治佐  うん。
      山田   こんな昔話知ってる?
      加治佐  知ってる。
      山田   そう、なら話すけどいい?
      加治佐  勝手にどうぞ。なんか飲む?
      山田   ホットミルクがいいらしい。
      加治佐  誰が飲むの?
      山田   私。
 
      加治佐、はける。
 
      山田   でね、或る仲の良い親友がいたの。でね、ふたりはプリティできゅあきゅあだったんだけどね、ある約束をするの。「私が先に死んだら壁に埋めて」って。そうしたら「いつまでも一緒にいられるでしょ?」なんて、なんてことを。程無くして一人は死んで、
 
      加治佐、戻ってきて、
 
      加治佐  ちょっと待って、それ、私に話してるんだよね?
      山田   ・・・え?
      加治佐  いや、私さ、なんか早く飲んでほしいんだよね。というか、飲み込んでほしいんだよね。
      山田   なんで、私が?
      加治佐  これ、誰が飲むの?
      山田   ところがね、恋のビートは無情だわ。二人の仲を引き裂くの。それで私の家の隣に住んでる女の子は引っ越しちゃうの。引っ越したはずなのにね、時々、カリカリっカリカリっって、音がするの。・・・壁の向こうから。
      加治佐  向こうから?
      山田   そう。
      加治佐  ねぇ、それってさ。
      山田   うん?
      加治佐  隣に誰か勝手に住んでるんじゃないの?
      山田   私もね、そう思ったの。だけど、
 
 
電話がかかってくる。
 
 
      山田   あ、ごめんね。
 
山田、はける。
 
      加治佐  彼女は、何故私、加治佐加奈子のうちに転がり込んできたのか。何故、突然しりとりを始めたかと思ったら
 
山田、転がって帰ってくる。
 
      山田   ただいま~。
      加治佐  お帰り。
      山田   ・・・・・・。
      加治佐  ・・・・・・。
      山田   にやにや。
      加治佐  ねえ、
      山田   なに?やにや。
      加治佐  一つ聞いていい?
      山田   聞いていいよ?
      加治佐  何でそんなにやにやしてんの?
      山田   いやー、それがさ、隣に引っ越してきたウォーリーが面白くてさ~。
      加治佐  隣に引っ越してきた、ねぇ。
      山田   そうそう。
      加治佐  で、何の電話だったの?
      山田   うん。家財道具をね、一式全部あげてきたの。
      加治佐  はぁっ?!
      山田   ね?
      加治佐  いや、ねっ。て言われても。
      山田   ほらっ、見ず知らずの人には優しくしてあげようって、教わったでしょ?
      加治佐  それだ。
      山田   え?
      加治佐  ねぇ、覚えてる、山田さ、そう言って修学旅行の時に髪の毛寄付してたよね。
      山田   ん?
      加治佐  ほら、お寺でさ、「なんで今時?」「体験学習じゃない?」って、笑いながらみんなで通り過ぎようとしたときにさ、
      山田   「私、寄付する」
      加治佐  って、言ってさ。
      山田   えーそうだっけ?
      加治佐  今、どの口が言ったわけ?
      山田   ん? なんか言った?
      加治佐  一回言った。
      山田   ねぇねぇ、髪の毛ってさ、売れるらしいよ。
      加治佐  その時は、髪で縄をなうって、言ってたけど。
      山田   縄をなうの?
      加治佐  混ぜると丈夫になるんだって。
      山田   髪を混ぜると?
      加治佐  らしいよ。
      山田   ちょっと宗教っぽいね。縄に生命の強さが乗り移るみたいな?
      加治佐  さあ。でも、どうして髪の毛寄付したの?
      山田   それさ、覚えてないんだ。私、ホントに、寄付した?
      加治佐  だって、先生がびっくりしてたよ! そんなに行きたい美容院があったのか! それとも、失恋でもした? って。
      山田   失恋?
      加治佐  え、失恋?
      山田   誰が?
      加治佐  え?
      山田   え?
      加治佐  ええええっ、失恋しちゃったのぉ~~~?!
      山田   そうなのぉ~~~~!?
      加治佐  まっさかぁ~~~
      山田   そんなぁ~~~
      加治佐  まっかあさ~~~
      山田   ギブミーチョコレート。
      加治佐  はい、どうぞ。
      山田   あま~い。
      加治佐  ・・・・・・。
      山田   甘い夢だったんだよ。
      加治佐  出会いは出会いは?
      山田   食器売場。
 
 
 
      長谷部、食器売り場にいる。
 
      長谷部  む。むむむ。
      山田   ん~(曲がったスプーンをもっている)
      長谷部  ははっ!
      山田   ん?
      長谷部  長谷部です!
      山田   はあ。
      長谷部  突然ですが、ここであったのも何かの縁。同じスプーンを買いませんか?
      山田   ペアルックで?
      長谷部  ええ、ペアルックで。
 
      加治佐  まって、この人、誰なの?
      山田   この人は、長谷部さん。
      加治佐  で、人目ぼれられたわけ?
      山田   そう、ぼれられた。ぼれられた。
 
      加治佐  で、失恋したと。
      長谷部  そうなんですよ~~。
      山田   ・・・・・・。
      長谷部  ちょっと聞いてくださいよ。
      加治佐  ちょっと待って! この人、ここに実在してんの?
      長谷部  ひどい人だなぁ、見てくださいよ、足も尻尾もちゃんとありますよ?
      加治佐  ホントだ・・・。って、そうじゃなくて! 尻尾あるのもおかしいし!
      長谷部  やんまださんたらひどいんですよ!
      山田   誤解だ。
      長谷部  僕のことをフッ、と嬉しそうに消すんですよ。まるで誕生日ケーキに刺さったろうそくの炎を消し去るように。でもね、僕にはわかっているんです。やんまださんのその微笑みは、どこか寂しげな憂いを含んでいるって。
      加治佐  うそつきね。
      長谷部  え?
      加治佐  あなたは嘘をついている。
      長谷部  そんな・・・。僕がいつ嘘をついたって? 証拠はあるのか!
      加治佐  目を見ればわかるわ。女が泣くのも女に泣くのも、もっと鼻水の出る話だわ。
      長谷部  ちっ、おとなしく山田姫を渡せばいいものを!
      加治佐  山田姫!?
      山田   きゃぁー、お助けー!
      加治佐  山田、どういうことか5秒で説明して!
      山田   私はストーカーに追われていたの。それで、この家に転がり込んできたの! そのストーカーは、この人よ!
      長谷部  ええっ、姫! ご戯れを。
      加治佐  ・・・と、申しておりますが、姫?
      山田   これでどう!?
 
音声
(長谷部の声:山田姫~、あなたがほしいのです。お慕い申しておりマッスルマッスル!)
 
      長谷部  なんだこの恥ずかしい録音は~~!?
      加治佐  どうやら、ネタは上がってるようね!
      長谷部  やむ負えぬ。ハッ!
 
      加治佐  ひゃっ!? (後ろに転がる)
 
      長谷部  ことを穏便に済ませようと思っていた。しかし、これは、この銀河の危機なのです。
      加治佐  ねぇ、なんか、この人おかしいよ。
      山田   だから、言ったでしょ!? この人、宇宙人に攫われてからすっかり人が変わってしまったの!
      加治佐  さらっと、意味の分からないことを。
      長谷部  やんまだ~、俺たち昔はもっと仲良くやってたじゃねぇか! 一週間くらいずっと手をつなぎ合ってたりとかさ。ギネス記録も作った仲じゃねぇか!
      加治佐  なにそののろけ話。
      山田   そんなの知らないわ!
      長谷部  覚えてないだけだ! お前が猫に攫われたあの日、「にゃられた~」って、言いながら猫に攫われていったあの日、
      加治佐  カーット!
 
ふたり、向く。
 
      加治佐  ここまで、整理するね。山田は、昔この男と付き合っていて、ラブラブで、ある日、猫に攫われたと。
      山田   そう。
      加治佐  で、この長谷部という男は、昔この女と付き合っていて、ラブラブで、ある日、宇宙人に攫われたと。
      長谷部  そう。
      加治佐  ヒント。
 
      山田   ヒントは・・・
      長谷部  まって、どれ言おうとしてる?
      山田   え? ごにょごにょ。
      長谷部  え、それ言っちゃほとんど答えじゃん。
      山田   そうかなぁー。
      長谷部  せめて、このヘンにしとこ?
      山田   んー、じゃあ、それで。
 
      長谷部  ・・・んそなたに、ヒントを授けよう(歌舞伎風に、裏声風に)。
 
      加治佐  何キャラ?
      山田   ナニ?
      加治佐  何キャラ?
      長谷部  ヒントは、
 
2人   ニンギョウ!
 
      加治佐  ああ、人魚? つまり、真実を伝えちゃうと泡になって消えちゃうから、相手から愛してるって言ってもらわないといけないっていう。
      山田   それは人魚だよ。
      長谷部  もー、しっかりしてよね!
      山田   ね~。
      加治佐  ね~って。
      山田   あくまで、ヒントだからね。
      長谷部  やんまだ、でもそろそろ時間だ。
      山田   そっか~。じゃあ、残念。
      長谷部  ぼっしゅーと~
      山田   はい、残念賞の、ストラップ。
 
      加治佐  仲いいじゃん。何、それを自慢しに来たわけ?
      山田   いや、それがさ。
 
 
コンコン、と、音。
 
 
      峠原   すみませーん。
 
      加治佐  あ、ごめんね。(加治佐、はける)
 
      山田   お別れを言おうと思ってさ。
 
暗転。
明転すると、山田、長谷部はいない。
 
      加治佐  はい?
      峠原   私、ガス会社のものなんですけれど、
      加治佐  ガス会社。こんな時間に?
      峠原   はい。先ほど、この辺りに特殊なガスが発生したって聞いたんですけど、何か変わったことはありませんでしたか?
      加治佐  変わったことですか。うーん・・・。
      峠原   その写真は?
      加治佐  これですか? これは、高校の時に、癌で亡くした友人の写真です。
      峠原   あ、すみません。
      加治佐  修学旅行、癌で髪の毛がすっかり抜けちゃって・・・。でもね、行くって言って一緒に行ったんです。楽しかったなぁ。
      峠原   ねぇ、ひとつ小さな世界に住む私たちの話をしてもいいですか?
      加治佐  ガス会社の方・・・ですよね?
      峠原   ええ。ガスを追いかけて、ここまで。
      加治佐  どうぞ。何の話でしょう。
      峠原   UFOキャッチャーってやったことあります?
      加治佐  ええ。人形を上からクレーンを操って掴んで、GETするっていう、あれですよね。
      峠原   そうそう。それです。私はそれが随分と好きなもので。それでね、UFOキャッチャーなんですけれど、UFOキャッチャーって、人形から見たら、UFOに攫われるって、ことですよね。
      加治佐  はぁ、なるほどそれでUFOキャッチャー。それで?
      峠原   ・・・それだけです。
      加治佐  そうですか。
      峠原   今夜はガスが出ているみたいですから、気を付けてくださいね。
      加治佐  はあ、どうも。
      峠原   では、代わりに私が言っておきますね。
      加治佐  え?
      峠原   (さようなら)
 

 
      加治佐  ・・・・・・おなか減ったな。夜食なんにしよう? UFOがあったかな? あとは・・・
 
暗転。
 
      加治佐  ホットミルクがいいかな?
 
これにて終幕。





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【小説】天気雨

たまには書くよ。

どうぞ。





天気雨
2012.4.3
なかまくら
 
 
その手帳を拾ったのは偶然だった。
「なあに、それ?」
それに夢中だった僕は彼女の接近に気が付かなかった。
「ああ・・・これか」
「手帳?」
「そう。ある男の手帳だ」僕はその手帳を彼女に手渡した。
「ほら、手帳って、日々の予定を詳しく書けるページが後ろについてるだろう?」
「そうね。たいていはそのページは使われないけれど」
「それは僕たちみたいな学生の身分だからだよ。もう少し大きくなったらひとつひとつの予定が無駄に長くなって、空白の時間なんて減っていくのさ」
「それで、この手帳は、その日々のページに日記が書かれている手帳なのね?」彼女が手帳をめくりながら細い目で興味深そうにそれを見ていた。
「そうだよ」僕はその様子を眺めていた。それから、
「ねぇ、その手帳、どこで拾ったと思う?」僕はそう問う。
 
彼女はあるページまで開くと、バタンと勢いよく手帳を閉じた。
「なんなの、これ・・・」そのページはちょうど真っ赤に塗りつぶされたページだった。
 
「さあてね、真相は分からないよ」僕は、そう言った。
「これ、どこで拾ってきたの?」彼女は手帳を机に置くと後ろに一歩二歩と距離を取った。
手帳の黒い革が暗い紫色を纏い、その周りに紫、ダークブルー、暗緑色、ダージリン、玉葱色。色は空間を伝わって、その手帳の魅力が彼女を包み込んでいるのが見て取れた。
 
「ねぇ、その手帳、どこで拾ったと思う?」僕は同じ質問をもう一度することにした。
「どこかしら・・・そうね。証拠物品として押収されたもの、とかかしら?」彼女は既に手帳を再び手に取り、熱心にページを捲(めく)っていた。「この日記、ふたりの人物が出てくるわ。30代の男と、小学生の女の子」
 
僕はふっと笑うと、こう言う。
「ねぇ、少し考えてみようか」
「え?」
「・・・この事件の真相をさ」
 

 
8月10日。晴れ。
夏休みに入ってからすでに10日が過ぎた。
 
 
「ねえ、おじさん?」
女の子はとてもいい子だ。
「朝ごはん、食べたいな。お手伝いするから、お願い」
お願いされれば僕はもう作ってやる他はない。
「何がいい?」と僕が聞くと、
「おじさん、目玉焼きしか作れないし。びっくりしちゃったよ、私。私のママはね、ハンバーグが上手なんだよ!」女の子がそう答える。
僕は、ママという言葉に少しドキリとする。
「・・・ママに会いたい?」僕はそう尋ねる。
「うーーん、まだいいや。ママは旅行に行ってるんでしょ? たまにはママに自由に遊んでほしいし」女の子は健気にそう言っているが、最近よくさびしそうな顔をしている。
 
 
8月11日。晴れ。
 
新聞の片隅に女の子の捜索欄がある。女の子の特徴は、赤いリボン。おかっぱで、黄色い腕時計を付けている。探している。誰かがこの子を探している。
自分ではなくこの子を探しているのだ。必要なのは、このろくでもなく年を取ってしまった男ではなく、まだ何もない空っぽの器を持つこの女の子なのだ。殺すしかない。その場所には一人しか入れないのだ。
「ねぇ、おじさん?」女の子が台所にやって来る。
別荘の暗い廊下をトイレまで連れて行った。
 
8月12日。雨。
雷が鳴り、嵐が来ているのを伝える。古びたブラウン管のテレビに美人のキャスターがにっこりと笑っている様子が映り、その後ろの日本列島を大型の低気圧が迫っていると伝える。画面上を蠢く低気圧の等圧線が生物のような不気味な揺らめきをもって前進していく。カエルの鳴き声は夜明け頃から聞こえなくなった。
 
雷に打たれたか、それとも、
打たれないように、身を潜めているのか。
 
捜索の輪が広がっていることがニュースで流れていた。画面上を広がっていく捜索範囲を示す白いラインがもうまもなくこの別荘にも達する。だがしかし、今日はここは陸の孤島となるだろう。誰にも邪魔されないのは、今日までだ。・・・片づけをしなくちゃ。
お客様が来る前に。女の子はカエルのように静かだ。
 
 
8月13日。晴れ。
今日という日が来た。今日という日が来た。
迎えが来るだろう。上から? 下から? 右から? 左から? 昨日から? 明日から?
なんにせよ、迎えが来るだろう。僕に、そして、女の子に。
僕はもう、疲れたよ。ねえ、女の子は眠っている。トイレは狭いだろう、可哀相に。
 
 

 
「ねぇ、これって、文字通り・・・でさ」彼女がそう言う。
要するに、そういうことだ。
男は何らかの理由で女の子を山奥の別荘に監禁していた。必死の捜索が行われたが、女の子は殺され、男も自害してしまった。簡単に言えばそういうことだ。そんなものだ。
 
 
僕は「でもさ、」と笑う。 それじゃあ、つまらない。
 
彼女は「何言ってんの?」と、あきれて笑う。
 
僕は笑ったまま、「例えばさ、」と言う。「これは、この部屋で拾ったんだよ?」
彼女は分からないという顔で笑ったままだ。
僕は、その言葉を贈り出す。
 
「これは、君の中で起こったことなんだよ」

窓の外では風が勢いよく雲を押し流していた。


おわり。





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