1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】眉毛が腐った話【散文】

散文。

こんなのなら、15分もあれば書けるけど、そうじゃないんだ。突き詰めれば、もっと面白くできるでしょ? と、そうじゃないんだ。別に題材はこれでもいいんだけど、魂を削ってないんだ。

 

 

眉毛が腐った話

作・なかまくら

 

鳥饗くんが目を覚ますと、鏡が倒れてきていた。

鏡を腕で押し返そうとすると、なにやらぐじゅっと、押しつぶされた柿がちょうど押し返されたところみたいな音がした。

どうしてかというと、ちょうど昨日、そういう柿をそういうふうにしたから、鳥饗くんにはその感触がよくわかった。

しかしまあ、なんということか鏡には、黒っぽい何かがついていた。柿というよりは、海苔の佃煮だ。

その海苔の佃煮に似たそれは、眉毛にもついていて、むしろ、混じりっけのない眉毛そのもののようだった。

なんだこれ? 鳥饗くんが体を起こしてそう呟いた瞬間、ドバっと垂れてきて、視界は真っ暗になった。

隣の部屋で寝ているはずの姉に大声で助けを求めるも、返事はない。

枕元の携帯電話をデタラメに救急車をよんだ。

「悪いんだが、この電波は超法規的措置でジャックさせてもらったぜ、スパロウ!」

「スパロウじゃねぇよ!」鳥饗は目の前の暗黒物質に叫んでから気づく。・・・超(スーパー)法規(ロウ)的措置?

「さて、本題だ。君は今、前代未聞の地球外生物兵器の餌食になってしまっているんだ。」

電話越しに、銃声が聞こえた。

 

危ないところだったね。現れた男は、そう言って、空気感染しないようにする防護服みたいなのを装備して現れる。

そして鳥饗くんは洗われた。そして現れたピカピカの鳥饗くんの眉毛は排水口へと流れていった。

しかし、目はすでに腐ったようになっており、防護服は、腐り落ちていた。

「そ、そんなばかな・・・接触感染してしまったというのか・・・!」

男がそう言っているうちに、男の左腕は腐り落ち、剥きだした骨がみるみるうちに落ちていった。

それに気づいているのかどうかわからないまま、男は有無を言わず消え去った。

まるでその時を生きていないように、そのように。

更に、ぽたりと落ちた眉毛は彼の下に広がる絨毯を魔法に変えたとでもいうのか、鳥饗くんは、誰かに担ぎ上げられ、運び込まれた。

チクリと鋭い痛みが肌を刺したと思ったら、目が覚めて、自室のベッドに寝ていた。

ふと起き上がると目の前に鏡。

それは後からわかったことなのだが、

排水口へと流れていって、世界中に散らばった複雑な未来が、もうすぐそこまで来ていた。

 

 

おわり。

高校の時は、こんなのばっかり書いてた気がします。

こういうの、いまじゃあ、すっかり公開しなくなっちゃったけど、たまには。

 

 






拍手[1回]

【戯曲】負透明に

なかまくらです。

久しぶりに台本を書き上げました。

うーーん、驚くほどドロドロの渦巻いた出来になってしまいました(笑

まだ若けぇな。途中で、修正しようとして、さらにあさっての方向に突き進んだのは内緒です。

でもまあ、なんというか、なんだこれ(笑)。


2012.10.14 負透明に (45分; 男2 女2)
*** 「一日消えるにはどうしたらいい?」「消えたいと思ったことない?」
      ある日を境に、誰かを消すことで世界につなぎとめられることを許された少女は、
      友人を作り、そして…。居場所を求める”失踪系”友情譚です。

http://nakamakura.iinaa.net/scenario.html


 






拍手[2回]

【小説】ドリーム・ヒーロー【習作】

 

彼は、臆病なスーパーマンで、青いタイツに赤いマントを纏う。

つやつやとした青いタイツ、ふわりとして軽やかに丈夫な赤いマント。

彼はかつてスーパーマンとして学校に秩序と平和をもたらしていたが、

私が夢の登場人物になったとき、彼はもうすでにいなかった。

3階の教室から外に出るとそこは、下水の流れる土管。

ずんぐりとした4つ足や昆虫の節ばった6つ足のモンスターが待ち受ける。

ここは電撃属性のアサルトライフルがいいだろう、と、ふたつほど購入して、教室を飛び出す。

目の前に現れたモンスターにズダダダダ、と連射する。

「なんだこれ、威力ひっく!」 私は悪態をつき、打ち続けながら射線を顔へ向ける。

たまらず顔をそむけるモンスターの脇をすり抜ける。どうやら速射性は申し分ないようだ。

隣の教室にたどり着き、情報を収集する。彼はどこへ行ってしまったのか・・・?

人々は口を紡ぎ、私は1階まで降りてきていた。

後ろを追ってきていたと思っていたモンスターを確認しようと振り返ると、彼がいた。彼だった。

もう無理なんだ・・・、と彼は言い、

私は黙々と長い廊下を走った。彼の話を聞いた。

角を曲がり、渡り廊下のその先に、女の子の姿と、赤いマントが。

彼は、意を決してそのマントを羽織る。服はいつの間にか青い艶やかなタイツに変わっていた。

追いついてきたモンスターは人に似た形をとり、私たちを取り囲む。

「みんな逃げろ・・・!」 私は叫び、

モンスターの雑魚兵士から乱射される銃弾の嵐の中、赤いマントが翻る。

「お前も逃げろ・・・」 彼はそう言い、半分だけ顔をこちらに向けた。

 

その顔を見た私は、すべてを理解し、頬から伝う涙はとめどなく流れていった。

 

 

+あとがき+

昨日見た夢でした。この「彼」時々出てくるんです、私の夢に。

夢の常連ですね。

 





拍手[0回]

【小説】クワガタヘッドと文学少女

(追記) 半日で、トップページからいなくなってしまうのはあまりに忍びないので、公演観てきましたよ、はこのページの後ろに移ってもらいましたよ。

 

小説です~。

1時間でやってくれました~。

小品ですが、結構好きな出来です。


 

 

クワガタヘッドと文学少女
                                         作・なかまくら
 
 
 
 
もうずいぶんと昔のことで、その時のほとんどのことは忘れてしまったけれど、
昨日、駅に続く歩道橋を歩いていく若いカップルが、そのお揃いの帽子を被っていたから、不意に思い出したのだ。
 
そういうものだろう、と、妙に納得した。
そのことを話してみようと思う。
 
 
クワガタヘッドのあの子のことを、山羊ゆう という名前のぼくが気になりだしたのは、その頃のことだ。
あの子の名前はもうすっかり忘れてしまったけれど、ぼくはあの子のことが気になっていた。
 
あの子はいつもクワガタヘッドで、素敵な焦茶色のクワガタが這いまわるワンピースを着ていて、よく本を読んでいた。
 
あの子は笑うとツヤのある頬を高揚のばかりに少し赤く染めたり、泣いて涙を流して頬が少し赤く染まったりする女の子だった。
 
ぼくは、言おう言おう、と毎日もじもじとしていて、ある日の昼休みにそれをついに言おうとしていた。「君のそのキバ、素敵だね」って。
 
あの子は机の中からこっそり残していたコッペパンと少し難しそうな本をランドセルにしまうところだった。
 
「―――――」ぼくがその名前を呼ぶと、あの子は少し怪訝そうな顔で、にこりと顔を向ける。
「あのね・・・」うわ靴の先が少しだけ前に進んだとき、
「君のその本、○○○○だね」隣のクラスの男の子が窓枠に腕を乗せこちらを見ていた。
 
――彼はスマートな笑みを浮かべ、
――あの子はツヤのある頬をポッと染め、走って行ってしまった。
 
 
そのあと、あの子は奇麗なクワガタのワンピースを日替わりに幾つも着てきて、たくさんの難しい本を持って図書館に毎日通っていった。
 
それから、最後にあの、クワガタヘッドを脱いで―――
 
 
 
―――ある朝が来た頃、
知らない女の子が幸せそうに、ツヤのない頬でぼくに笑いかけていた。
 





拍手[0回]

【小説】おちてこなくなった

なかまくらです。

久しぶりに小説です。ちょこちょこっとした奴は書いていましたが、ちょっと頑張って書きましたよ。

ゆーて、3時間でいっき書きですが・・・。

ちょっと、久しぶり過ぎて読みづらい所も多々あるとは思いますが、よかったら

どうぞーー。


 

おちてこなくなった

作・なかまくら

              2012.8.23

 

 

地面にへばりつくように存在するそれを見つけたのは、“おちてこなくなって”から随分と経ってからのことだ。

 

慣れた足取りで吸盤付きブーツで壁を垂直に降りた。なんとなく好奇心のようなものがフワフワと浮かび上がってきて、近づくと、一兎(イット)はそれを拾った。そこは、街の中心からは離れたところで、でも不思議なことに彼と彼の友人の秘密の場所になっていた。

 

 

一兎は月村くんとこの街で育った。まだ”おちてこなくなる”前のこと。踏み出した足は地面に吸い付くようにぺたぺたと張り付いていく。それでも子供たちはまるで重さを感じさせない軽快な足取りと街角に立ち並ぶ高い石造りの建物に反響する笑い声をたてて、駆け抜けていく。階段3つ飛ばしはあたり前。くるくるとそれは踊りのように、街に風が吹き込んでくるように。

 

その日・・・、

 

イッシュザーグの靴屋から3つめの建物。その建物と隣の建物との隙間、そこから路地裏を抜けると、思いがけずそこにぽっかりと空いた場所があった。

背の低い草を生やした草地。背の高い建物に囲まれ、切り取られたみたいな空に恒星が浮かんでいた。ひとつ、ふたつ。そして、空き地の真ん中には、昔よく想像された宇宙人のそのままの格好のイラストの描かれた看板が立っていた。名前は確か、グレイだっけ? グレイの看板は不可思議な銀色の脚でその空き地の中心に立っていた。

 

どれだけか時間が立つと不意にどすん、背中に衝撃があり、前によろめく。

振り返れば、月村くんが鼻の辺りを押さえて尻もちをついていた。

 

「急に止まるなよぉ・・・」抗議の声。

「月村くん、これ、なんだと思う?」抗議はひらりと身体をひねって躱してみせる。ひねったその先に、グレイの看板が見えるだろう。

「・・・・・・あれ? なんだこれ」月村くんは、驚いた顔で目を丸くする。その瞳には、上にある恒星までも映っていそう。

「こんなのあったっけ?」

「・・・誰が作ったんだろ?」

「んー・・・。宇宙人?」

 

一兎と月村くんは、その日、その場所を見つけた。

 

 

その場所は、一兎と月村くんの秘密の場所として始まった。

ふたりはよくその場所で話をした。よくするのは宇宙の話だ。

 

「こんな説がある」月村くんは科学雑誌の最新号をおもむろに(でも意味もなく)開いて、そらんじてみせる。

「この世界は何度か滅びた。一度目は衛星ができた時、そして二度目は翅(ハネ)トカゲの絶滅。どちらも隕石の衝突が原因だったとされている。隕石は破壊の使者なのか。しかし、その破壊の痕跡はあまりにも小さい」

「ん、破壊の痕跡は小さいの? 絶滅、しちゃったんでしょ?」

「でも、すごく不思議なんだよ。化石になっている翅トカゲはすごく少ない。特に、翅のあったやつはすごく少ない。それってさ、飛んでっちゃったってことじゃないかな」

「どこに・・・?」一兎はなんだかすごくワクワクしながら、そう言って、

「宇宙だよ」ピッと立てられた人差し指のその先、指さされている宇宙空間を見上げ、ドキドキしていた。

「宇宙かぁ・・・ここのほうがあったかくて、僕は好きかなぁ・・・」一兎はなんとなくそう言ってみた。想像の中で、宇宙はすごく静かで、寒いけれど、真っ暗ではなくて、キラキラとした場所のよう。でも、ここにいるから一兎は、地面の温かさを知っていた。

 

「こんな話もある

月村くんは、革製の肩掛け鞄から別の雑誌を取り出す。

 

―― 隕石は宇宙の宅急便である。

―― 隕石は、水の中の生き物を陸上でも暮らせるようにしたり、翅トカゲが空を飛べるようにしたり、ヒトなんていう言葉を使う生命を生み出したりする。

 

・・・隕石は宇宙船なんだよ。生物を変化させる物質が中には入っていて、それを効率的に散布するんだ」

 

一兎と月村くんの青春は、宇宙にまみれていて、いつか隕石がやってきて、人類は滅亡して、あるいはきっとその時そうだったように、翅トカゲが宇宙空間へ飛び立っていったように、人類も地球というゆりかごを離れる時が来るのだと信じていた。いや、そう思えばワクワクとしていて、高揚感はそれだけで空を自由に飛び回るようだったから。だからきっとそう思っていた。

 

 

一兎は一足先に20才になって、仕事を習い始めていた。街の小さな清掃会社に就職して朝から晩まで働く毎日。”おちてこなくなって”からというもの、みんながみんな壁を歩くようになっていたから、街は足跡だらけになっていて、掃除会社がたくさんできた。デッキブラシで石造りの建物の壁をごしごしと擦(こす)るのだ。夏の日差しの中、一兎の頬に汗の粒が文字通り浮かび、そのまま丸い形になって空気中に漂っていく。そういえば、”おちてこなくなった”日も、朝から雨だったという。

その雨は、ちょうど正午の時間に合わせて、一斉にひたりと止まった。雨音は一瞬にして消え、傘をさして街を歩いていた人は、空気中に止まった雨粒と正面衝突して、すぐにびしょ濡れになった。それから、妙に身体は軽く、どこかで転がるリンゴを追いかけた猫が浮かび上がったのをきっかけにしたみたいに、世界中がふわりと浮いた。慌てて近くのものに掴まらなかったたくさんの人が空に浮かんでいってそのまま、行方不明になった。

 

その建物を掃除し終わると、えいや、と壁を蹴って隣の建物に移る。

 

最初は上下左右前後が意味不明に回転してゲロまみれになったり、壁に激突するのが前提のくっそ暑いもこもこショック吸収作業服を着せられたりしていたけれど、勢いをつけずにこわごわから始まり、段々慣れた。

 

子供の方が順応は早く、壁を駆け上って笑い声を残していく。その音が妙にぐわん、と反響して、呼ばれるようにその場所に目が行った。

 

 

地面にへばりつくように存在するそれを見つけたのは、“おちてこなくなって”から随分と経ってからのことだ。慣れた足取りで吸盤付きブーツで壁を垂直に降りた。なんとなく好奇心のようなものがフワフワと浮かび上がってきて、近づくと、一兎はそれを拾った。そこは、街の中心からは離れたところで、でも・・・・・・・・・不思議なことに空をフワフワと飛びまわる現代になっても、そこは秘密の場所のままだったらしい。グレイの看板は相変わらず不可思議な銀色の脚でもって立っていた。よく見れば、脚の途中がぐにゃりと曲がって、何かがめり込んだような跡があった。

 

「隕石がね、落ちてきたんだよ」

 

イッシュザーグの靴屋から3つめの建物。その建物と隣の建物との隙間、その路地裏を抜けて、月村くんがやってきていた。

 

「”おちてこなくなった” あの日、最後に落ちてきたんだ、その隕石が」

 

隕石が落ちてきたからいけなかったのか、

グレイの看板の脚が曲がってしまったのがいけなかったのか、

 

どうやら問題はそんなことではなく、

「竹取物語というお話をどこかで読んだね。姫様は月の衣を着ると現世のことなどきれいに忘れて月に還って行った・・・僕たちもきっと還る時が来たんだよ」

 

やっぱり翅トカゲたちはどこかへ飛んで行ったのかもしれない。それからどこかに楽園を見つけて、早くおいでよ、と招待状代わりに隕石を送ってきたのかもしれない。

 

一兎が手に持っていた隕石は思っていたよりもずっと軽く、でも、持っているときだけは久しぶりに重さを感じた気がした。

 

 

その愛おしい石は、月村くんが持って行ってしまう。

 

 

月村くんはふわりと浮きあがると、ぐんぐんと空へと昇って行った。

 

その石が地上を離れると、次第に重力は僕らを引っ張り出して、やがてその足がぴったりと地面についてしまう頃には、すっかり月村くんは見えなくなってしまっていた。

 

まるで、ばからしくなって、一兎は吸盤のついたブーツを脱いで裸足になった。足の裏に草がくすぐったく、少し、温かかった。

 

 

雨は地面をめがけて気持ちよさそうに降り始め、やがて止んだ。

 

 

 

それから幾年かの歳月が流れて、再び”おちてこなくなる”わけだが、

 

それはまた、別の誰かの物語。


 






拍手[1回]

カレンダー

03 2025/04 05
S M T W T F S
2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30

アーカイブ

フリーエリア

ブクログ



ブログ内検索

コメント

[11/24 なかまくら]
[11/18 きょうとのせんぱい]
[04/07 なかまくら]