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なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

                      
なかまくらです。

久し振りに書き上げました。

直しもちまちまちまちまやって、やっと公開にこぎ着けました。

直しだけで4000字くらい書いてしまい、

結局、1万7千字くらいになってしまいました^^;

1時間で収まるかな?笑

まあ、直したその甲斐はあったかなぁ、と思います。

是非読んでみてください。感想とかも良かったらくださいね。

長すぎるので、本文はリンクからどうぞ。


  比飛人 (60分; 男4 女2)
  「なんとなくわかる。同じDNAを継いでいて、あいつは飛べて、
   俺は飛べない。その理由が。」

  「あいつは、俺に遠慮して、それで居場所を失っていったんだ。」
   空を飛べる弟と、空を飛べない兄。これは、ある兄弟の物語。

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なかまくらです。

明後日から、大会の引率です。宮城県に行ってきます。

さて。今年ようやく2作品目を書き上げることが出来ました!

いたって真面目な心持ちですよ、ええ。

それではどうぞ。






「クワガタのトッピングあります」


2017.7.29


作・なかまくら


 


最後のゾウが苦痛に呻(うめ)きを上げた頃、最初のクワガタが成虫になった。


サクリス研究所では、歓声が上がり、そして、一瞬にして悲鳴に変わった。戦車の砲弾も通さない強化プラスティックでできた壁をあめ玉のようにねじ曲げ、突き上げるアゴ。


空いた隙間からゾロゾロと這い出るクワガタたち。それは見事なニジイロで、人の欲望そのものだった。


 



 


「なに・・・まだ夜中」 布団ごとひっくり返されて、門部(かとべ)は重い瞼を上げた。


「コール、気付いてよ」 イリノイリは、ふっくらとした胸を強化態スーツに手早く押し込み、腕部の装置のチェックをし、脚を下ろした。布団を足蹴にされたようだ。


「せっかく今日は訓練休みなのに・・・あの鬼軍曹が、さぁ・・・」と言いながら、次第に意識が覚醒し、イリノイリの強化態スーツをマジマジと見る。


「それを着ているってことは・・・」


「これは、訓練ではない・・・ということね」 一度言ってみたかった、そんな顔だった。


 


扉を開けるとそこはすでに、銃撃音と悲鳴に塗(まみ)れていた。


連続的にリズミカルに撃鉄が弾丸を撃ち出し、次々と打ち込まれていく。ニジイロの壁が衝撃に身体を小刻みに振動させならがらも通路を侵攻してくる。マシンガンの撃ち手が踏み潰されて残り、通路の折れ曲がるところで、ニジイロは壁にぶつかって動かなくなった。


 


スケールはおかしいが、明らかに・・・


「なによあれ、明らかにクワ・・・」 イリノイリの口がその名前の形に動いて、


ガタッと音がして、次の個体が通路に姿を現した。


「おいおい、マジかよ、何匹居るんだよ! 湧いてんじゃねえよ!」 門部は悪態をつきながら、スーツの腕部から、ブレードを引き出す。そのままの流れで跳躍、一歩の内に、二つのアゴの後ろに跳躍、頭部にブレードを突き立てた。


「まだよ!」 イリノイリが叫ぶが、そのときには、門部のブレードを持っていた右腕は切断されていた。瞬間、痛みはなかった。左腕を振り、遠心力でもう一降りのブレードを引き出す。それをニジイロの身体の中心にそって、後ろまで走らせて、そのまま転げて、落ちた。


「ああっ、くっそ! くっそ! アゴ割れ野郎がよぉ!」 スーツの切断面が、ぎゅっと絞(しぼ)まり、止血を開始していた。


 


ガタッ、通路の向こうから音がしていた。


 


感覚が追いついてきて、脳にちりちりと迫ってきていた。切断面が異常に熱く、局所麻酔が分泌されているはずが、効果をなさなかった。自分の呼吸音だけが、妙に大きく聞こえた。


 


「・・・ぇ、ねぇ!」 耳元へと声が飛んできて、ああ、朝かよ、いつもみたいに大きな声で叫びやがって、と一瞬、惑い、それから、現実が急速に戻ってくる。ようやくスーツから意識を覚醒させる薬剤が適切に投与されたようだ。


「あ、ああ」


「逃げるよ」


ふらふらと立ち上がり、イリノイリの後を追った。イリノイリは最速最適の動きで前方のニジイロを切り開き、進んでいく。門部は、黙ってついて行く。疲れ切った子どものように、母の後ろをついていくように――――。


 


――――生まれた頃の記憶は最早なかった。最初の記憶は、身体強化のために埋め込まれたチップをボリボリと掻いている自分だ。そのときには、まだ同族も多かった。スクールと呼ばれる場所で、文字を習い、計算を習った。それから、ひたすらの訓練。成長期を迎え、身体の造りが男女ではっきりと分かれてきた頃、ポロポロと同族が欠けだした。「不可逆的破壊」なるものが起こり、細胞組織が置き換わっていかないとかなんとか、よく分からないことを自分たちにはよく分からないに決まっているとばかりに、研究者達は話していた。目の前で。訓練の果てが、これだったとして――――――。


 


――――――自分たちはなんのために生きてきたのだろうか。


 


「ねぇ!」 俯いていた自分に声がかかり、前を見ると、初めて見る本当の外の明かりが目に映る。それから、イリノイリの表情が。


「幸せになってやるんだから!」 近頃は至って無表情だったイリノイリの横顔がキラキラとしていた。過去最高に輝いていた。一瞬見取れて、それから門部は失った右腕のあたりを一瞥し、・・・これから得る新世界に目を向けて応えた。


「おう!」


 



 


その日、数百体のクワガタが空を飛んだ。航空機との衝突がいくつも起こった。個体によっては、数百キロという距離を一晩で飛んだという。


 



 


研究者は、後にこう証言している。マンモスが滅び、そして、ゾウが滅んだ。ならば、人間が持つ滅びの力に耐えうる生物でなければならない。そう考えた。それは、強さ、頑丈さ、そして、繁殖力である、と。そして我々は成功したのだ。なあに、人を襲って食べるわけじゃない、台風みたいなものだ。


 



 


テレビのニュースによれば、農村地帯で、食料が食い尽くされたそうだ。未確認ではあるが、初めて人を食べる個体が確認されたとも報じられている。


 



 


イかれたテロリストが、自分の10年間実行してきた計画を懺悔した。発表ではない、それは懺悔であった。その内容はこうだ。空気中に散布してきた特殊なウイルスは、人間のDNAを組み替え、そして、次第にある変化を引き起こすという。それを言い終わった後、イかれたテロリストは、メタルな音楽と涙を流しながら、旨そうにクワガタのステーキをほおばり、そして、クワガタのアゴで自分の胸を貫いて死んだ。


 



 


某所にて。


「遅いから心配した」 イリノイリは、カウンターの向こうからおかえり、と言った。


「思いのほか、しぶとくて」 門部が、まずドアを開け、それから切り出したクワガタのアゴを自慢げに見せた。


「状態がいいのね。高く売れるかしら」 イリノイリが家計を守る顔をし始める。


「ちょっと、待った! その前に、お客さんだ」 ドアを軽く2回ノックする。


「ほら・・・」


促されて一歩、二歩と踏み出した男。その脚の後ろに隠れる、小さな女の子。男のボロボロの服はクワガタとの戦いの後のようだった。


「あ、あのっ!」 男が、意を決したように言う。


「こちらの料理、クワガタのトッピングはありますか?」 後ろで女の子のおなかがキュウと鳴っていた。


 


 


人類は、クワガタにしか味を感じなくなっていた。


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なかまくらです。

やっと書きました、小説です。

ずっと書いてるやつは、完成しなくて、ちょっと書いてるやつから完成していくという。

それではどうぞ。



小さな人


2017.6.7


 


空はどこまでも青かった。


マヨシは、手に持っていた布袋を振り回し、走っていた。真っ直ぐに空を見ていた。青い空、何層もの雲、その雲の向こうにうっすらと光る銀色の影、聞こえるはずもない機関音を聞いていた。


政府は必死に隠すが、その存在は多くの星の、多くの人間達が知っていた。エグリオ。巨悪を徹底的に削り取り、世界を真球のごとく、平らかな世界にする義賊の名だ。その船は、銀色の卵形だと聞いたことがあった。


その船が、いま、この星に来ているのだ。


マヨシは、やがて立ち尽くし、速い呼吸を繰り返しながら、見えない水平線、遠く建物の影に消えていく船を見送った。


星に降りるときには、補給と人員の募集だという。だが、どこに降りるかは、誰にも分からない。光学迷彩の装甲板がその姿を包み隠してしまうからだ。


マヨシは、今のこの星の政府のやり方に最早我慢がならなかった。人民は働く場所を失い、飢え、そして生きるために盗みを働き、そして殺されていく。豊かなるものはそれを豊かなるもののために使う。マヨシはこれまで仲間を集め、レジスタンスを幾度となく結成したが、学生が終わり、大人になると、皆、離れていく。その繰り返しだった。


最早、これまで・・・と思ったところに、船がやってきたのだった。いまが決行の時だと思った。


マヨシは、ある早朝、何かを探すように周回を繰り返す船がやってくるのを待った。船が低い軌道を飛んでいた。タイミングを見計らって、政府施設に火をつけた。爆発が起こり、大きな狼煙が上がる。自分たちはここに居るんだ、貴方がたの同士となるべき男が、此処に。大声で笑いながら、大きく手を振って、銀色の卵形の船を見上げる。その表面に、マヨシの顔がいびつにうつっていた。止まることなく通り過ぎた船から、落下傘で何かが落ちてくる。その箱を開けると、その星の地図の上で、小さく爆発が起きて、消えた。


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なかまくらです。

少し前に書いたものですが。

超短編小説会の祭り参加作品です。

「天の尖り」もよろしくね(HPに掲載中)。

それではどうぞ。

「竜刻草」

                     2017.1.7
                     さく・なかまくら


 #1.招待

「姫さまぁああああっ!」

どたどたと縁側を走ってくる足音に溜め息が漏れた。

昨日は、「戸棚のあんぱんが無くなった」

一昨日は、「ビスケットが食べたい」

でも、今日はちょっと違ったのだ。

 

ある真夏の雪の夜。浴衣姿で隣にはちょっと冴えないけどまあいいかなっていうボーイフレンドがいて、二人の絡ませた指の間に金魚の水袋がくったりと提げられていた。

花火が真っ暗な夜空に開花し、竜を形作る。その竜があろうことか、こちらに近づいてきた。ああ、ずいぶんと凝った趣向ね、と一瞬暢気に考え、その間に飲み込まれた。あの夜。

気が付いたら、姫様として眠っていて、ボーイフレンドはいなかった。

 

「姫さま、妙な格好をした若者がっ!」そのボーイフレンドが3か月経ってようやく見つかった。

 

#2.時渡り

「時渡りの病だな」 医者が観念したように言う。

「時渡りって?」 表情なく目を開けたままのボーイフレンドを私は見ていた。

「ご冗談を。父君を亡くしておいて・・・」

「馬鹿もの、そういう病なのだ」 壮年の家臣が若い部下を驚いたようにたしなめた。

時渡りとは、次第に存在が忘れられていく現象だという。それは、未来と過去――時間軸の方向に存在がぶれていき、やがて無限に広がる時間の中に一様に分布するようになるのだという。死体も残らず、記憶にも残らず、すっかりと消えてしまう・・・。

「それって神様になるってことなんじゃないかな」って、私はそっと思った。

 

#3.竜の麓に

「姫、此のものを救う覚悟はおありですか・・・」 壮年の家臣は、私に尋ねる。

「ええ・・・そうね。できるなら」 家臣はまっすぐ私の目を見ていて、私は思わず目を伏せた。

「まだヒトが竜に触れることが出来ていた時代を生きていたものとして、姫さまを諫めなければなりますまい」

「竜・・・?」 神様がいて、竜がいる。ならば私はヒトでいいのだろうか、と疑問が浮かぶ。

「あれはヒトが時間を生きる以上、決して分かり合えないのですよ。触れても何も伝わってこない。生き物ではないのです」

時渡りを始めると、時の曝露によって皮膚が鱗状に変化していく。鱗が定着すれば、竜になり世界に還る。もし、鱗が定着しなければ、剥がれた鱗の内側には何も残らない。彼は消えてしまうだろう。

「姫さま、竜刻草をご存知ですか」

家臣たちが何故か心持ち、後退りした。

「姫さま・・・竜の呼気毒は強力であり、ヒトの身ではひとたまりもありません。ひと度、竜訪を受ければ村は壊滅を免れない。そんな毒なのです」

しかし、竜刻草は竜のうろこに反射した光でのみ育つという植物だという。竜に遭わずに得られる植物ではないだろう。

竜がヒトから生まれ、ヒトを害するのは、一体どうしてなのだろう。

 

#4.邂逅

「いいわ、私が行くわ」 一度言葉が出れば、結論は初めから決まっていた。

「これが今は昔の竹取物語なら、5人の王子様を遣わせたのね。実際そうだったのかも」

「でも、私はイマドキなの。ずっと未来の時代はねぇ、女の子が強いのよ」そう言って驚くおじさん達にウインクをして見せた。もともと私は姫ではないし、彼はヒトで竜ではないのだ。

城を出て、村を抜け、森を抜け、山道を登っていくと、草木の色が変わっていく。春色、夏色、秋色、冬色。これらが雑(ま)ぜこぜになって、やがて時間と空間が判別できなくなる。未知なる竜の世界に近づいていく実感があった。

どこか遠くの、とても近い彼方で、空気を震わせる咆哮が聞こえた。

思わず立ち止まり、瞬き。すると、目の前の空間に巨大な竜が悠然と佇んでいた。目は優しくこちらを見ている。体温がないのか、伝わってくる熱を感じなかった。

そして、何故だか不思議と分かった。

「竜になったんだね、おめでとう」 こちらに親しみを持っているような表情だった。

「でも、そんなにあなたのためにって思ったわけじゃないの。なんとなくなのよ、なんとなく・・・気が少し向いただけ」 私が聞かれてもいない言い訳を口にすると、彼は応じるように口を開いて息を吐き出した。お互いに息を潜めていたことに私は気づく。

少しクラクラとするその吐息に私は家臣の言葉を思い出す。

「ヒトはもはや、竜に近づくことさえできないのですぞ」

私は、竜に手を伸ばす。それでもそれは、ヒトが竜と別れ、異なる価値観を生きると決めた。それだけのことで、ただ互いを認め生きていくことだってできるはずなのに。

彼の冷たい鱗に触れて、私はふっと目を閉じた。

 

#5.帰還

気が付けば、花火は散り、残響が空間を震わせていた。

後日、水槽の中に移した金魚の中に鯉の稚魚が混じっていると気が付いたのは彼だった。

私達は、小さなアパートの一室で顔を見合わせて笑った。

互いの命の輝きを見つめていた。

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なかまくらです。

プレミアムフライデーじゃないけど、今日はほぼ定時に帰宅です。

久しぶりに小説を。いつもとちょっと違う作風で。どうぞ。


*******


真夜中の湖


作・なかまくら


2017.2.22


 


「勝手にすればいい。それぞれの人生だ」


 


そう言おうとして、飲み込んで、逃げ帰ってしまったのだ。


それからというもの、どうやら心のどこかに見えない小さなヒビが入っているらしい。


 


しくしくと夜の帳が降りてくると、少し窪んだところがほんのりと湿りはじめる。


 


良くしたことにやましい感情はなかったと思う。それは、自分の二の舞になりそうな彼女を守ってあげたいという、自己満足だったのだ。


 


僕は無理に笑って、呼びかける。


「くれぐれもこちら側へ来てはいけないよ」


それは、川の彼方岸(あちらぎし)から此方岸(こちらぎし)への思いやりのつもりだった。見返りを求めるようなことじゃない。むしろ喜ぶべきことなのだ。彼女はこちら側に来なかったのだから。そうしてぼんやりと眺めていると冷たい水がざばぁざばぁと水が足元を濡らしていくから、たまらず少し後ずさりをする。それで遠くの方に目をやって、思わず静かになってしまう。


 


遠くから、ぼぉ、ぼぉ、と霧笛のような音が聞こえてくる。


いつの間にか、染み出した水は大きな湖になっていて、向こう岸は見えなくて、彼女はとうに消えている。代わりに首の長い何かの影が霧の中に浮かんでは消える。


 


首の長い何かの影は、近づいて来ようとしない。


 


彼女は今頃は・・・、いや、彼女が首の長い何かだったということだってあり得る。


今になって思えば、彼女のことを全く知らないような、そんな風に思えるのだ。


出会いはといえば、夕食に特製のシチューを作っていた僕のログハウスの扉を彼女が不意にノックしたのだ。思わず、はい、と返事をして、扉を開けてしまった。そのとき、どこかへ向けていた望遠カメラが、どこを向いていたのかはもう、忘れてしまった。だが、そのカメラをひっつかみ、思わず彼女の写真を撮った。ぱしゃり。


ブレブレだったそれ1枚だけが最初で最後。一瞬だけ、新聞社に送りつけるほど、舞い上がったのだ。


 


ログハウスはそのままになっている。


そして、窓の外の、夜になると現れる湖にカメラは向けられたままになっている。


たまにノックの音が聞こえる気がする。


けれども、僕はなぜだか湖から目を離すことが出来ない。


ノックの音が聞こえる気がする。


相手が違うと、耳を塞いで、金切り声で叫んでいる。自分の声が厭によく聞こえていた。


ノックの音が聞こえていた。


それが、小さくなるまで聞いていた。これから誰も来ないログハウスの一室で。


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1988/08/12
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