1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【戯曲】レット・イット・ビー・トイレット

なかまくらです。

新作です。もうちょっとポップなファンタジーになる予定でしたが、

面白いことに、思いもよらぬ、怪作となりました笑

どうぞ。


  2024.6.25 レット・イット・ビー・トイレット (25分; 男3 女1)
      *** ここは女子禁制の楽園・・・男子トイレなのだ!
           あのとき、トイレで出会ったときから、ずっとぼくを見守ってくれていた。
           早く大人になりたかったんです。けれども、いつも下痢だったんです。





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【小説】ライオンを磨く男

なかまくらです。

1月に書いた作品ですが、お披露目です。どうぞ。

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「ライオンを磨く男」
                            作・なかまくら
新作のアイデアがどうしても思いつかないときは、散歩をするに限る。
ぼくにとってそれは染み付いた習慣であり、それには最早あまり効き目がないことも分かっていた。とある出版社の短編小説の公募で佳作に選ばれたぼくは、社会的に小説家として名乗りを挙げた。いつかは一躍有名人に・・・。憧れがあった。
夏の暑い日のことだった。
「今日はもう少し遠回りしよう」
いつもだったら引き返す分岐点で異なるルートを探索することを選ぶ。
けれども、それはそれでいつもの道なのだが、考えることはやめにする。
汗がわきの下でシャツを濡らし、水分を失った喉が渇きを訴えてくる。「やめましょう、もうこんなことは。」訴えに耳を貸さず、まもなく見えてくるだろう、公園を目指す。
公園には、水飲み場があり、ぬるい水が出てくる。それをたらふく飲んで、きっとそうしたら、帰り道を考えることにするのだ。さびれた公園で、孤独を紛らわしてくれることもないのが、心地よかったのを覚えている。そういえば、動物が置いてあった。カバの像とキリンの像と、それから、あといくつかの動物たちだ。その背中に乗って、ひと休みするのが良いかもしれない。今日はいつにもまして、疲れてきていた。
公園につくと、男がいた。ぼくは、急いで水飲み場に行き、喉を潤すと、それからゆっくりと男へと近づいて行った。男は襤褸布を手にライオンの像を磨いており、その身なりは汚れてはいるものの、浮浪者といった風ではなかった。
「こんにちは」
驚いたように、男が振り向いた。どこかで見たような顔だった。
「あの、すみません、驚かせてしまって。こういうとき、なんて声をかけていいのかわからなくて。掃除をしているんですか?」
男はズレた眼鏡を直すと、ぼくを上から下まで観察して、それから、なぜだか少し、ほっとしたように言葉を返してくる。
「こんにちは。暑い日ですね。」
「清掃業者の方ですか? 大変ですね。」
ぼくがそう言うと、
「いえ、そういうわけではないのです。これは、私なりの戦い方なのです」
男はそう言って、ライオンの肋骨のあたりの苔をこすり取った。
「あなたはどうしてここへ?」
男が尋ねるので、
「いえ、その・・・散歩をしていたらここに。あなたがいまして。」
「なるほど。」
ぼくの答えに、男はただ、そう返す。
「あなたはどうしてここに?」
「私も同じようなものです。」
ぼくの問いに、男はただ、そう返した。
ほかに、問うこともなく、男はライオンの像を磨き、ぼくはそれを見ていた。
ライオンの像は、随分と長いこと手入れをされておらず、コンクリートで作られたその像の造形は苔に覆われ、随分と曖昧になっていた。男はその苔を丹念に取り除いていく。
ぼくは、意味もなく喉が渇いたような気がして、もう一度水飲み場へと足を運ぶ。
「あの。」
「なにか。」
「散歩をしていたのは、その通りなのですが。」
「ええ。」
男が手を止めてこちらを向く。
「ぼくはいつもと違う何かが起こらないかと思って、散歩をしていました。小説家なんです。売れていないですけど。」
ぼくがそう言うと、男は、少し考え込んだ後、話をしてくれた。
男は、陸上選手だという。男が高校生の時分には、記録がメキメキと伸びたのだという。自分には才能がある。ほかの人にはない、選ばれたもののみに与えられる才能が。大学も推薦で進学して、社会人になってからもスポンサーがついたという。
ぼくは、男のことを知らなくて、知らないことを詫びた。男は知らなかったことにほっとしたのだと笑った。
「私にかけられた魔法はけれども、消えてしまったんです。いくら練習しても、あの頃のように伸びはしないのです。魔法の中にいたときは楽しかった。夢中だった。気づいたら周りの仲間たちは普通の人生を生きていて、スーツを着て街を駆け巡っていたり、結婚をして子供たちと駆けまわったりしている。けれども、私の魔法は少し効き目が強すぎて、そして長すぎたんです。私は今も陸上競技場のトラックを回り続けている。」
「若い選手はメキメキと力をつけてきています。引退の2文字が頭をよぎることも一度や二度ではありませんでした。なんなら、今もときどき。」
男の言葉に呼応するように、ざわざわと木々が揺れ、その揺れはぼくの心の中を見透かしているようだった。けれども、夏の日差しは強く、いまはその木々の揺れる合間から、木漏れ日が突き刺すように漏れてきていることにも気づいていた。
「だから、私は私の中のライオンを磨くことにした。燃える心だけが、魔法の切れていない若者たちと戦い続ける唯一の手段だと思うのです。」
ぼくは男を手伝い、ライオンを磨いた。汗がとめどなく流れても、一心に磨き続けた。
やがて、ライオンは本来のその複雑な造形を取り戻し、誰もいない公園に君臨する。
水飲み場でぬるい水をたらふく飲んだぼくらは、その姿を満足気に眺めた後、それぞれの戦いに戻っていった。





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【小説】少しだけ

なかまくらです。

最近、「カメラを止めるな!」の上田監督のショートムービーを見ました。

それで、ああ、こういうの、あるなあ、と思って、

私も試しに書いてみることにしました。

まあ、こういうのは、なんかこういう感じですよね、という何かだなぁと。

そんなわけですが、どうぞ。

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「少しだけ」

                           作・なかまくら
「半分、出せるか?」 父は言った。
補助輪のついていない自転車を、離さないでね、と懸命な私に、父は言った。
「半分は、自分で頑張らないと、できるようにはならないさ。初めから100%じゃなくていい。でも、50%の頑張りは、するんだよ」
私は、そんなに頑張れる子には育たなかった。受験も大変で、私立大学の高い学費を無理して工面してもらうことになった。けれども、私は頑張れなくて、留年もしてしまう。悪い友人に誘われて、遊びが忙しく、単位を落としてしまったのだ。
父と母、それから私。家族会議が開かれた。
「半分、出せるか?」 父は、じっと考えてから、そう言った。
「うん」 私は、答えた。
翌年、私は晴れて大学を卒業し、会社員になった。仕事は大変で、思うようには進まなかった。もっと頑張れ、と叱咤激励される古い風土のある会社だな、と耐えるための呟きをSNSに散らかして、なんとかやり過ごしていた。
そんなある日、父が倒れた。病院に駆けつけると、母がいた。一命はとりとめたが、今までのようには働けないだろう、ということだった。
「・・・半分、出せるよ?」 私は言った。
言って、思った。なんて情けない言葉だったのだろう。どうして、「全部」って言えないのだろう。父もそうだったのだろうか。知らないところで、たくさんの無理をして、この家を支えてくれた父は、どんな気持ちだったのだろうか。
私の長い沈黙を待って、母は言った。
「あなたの人生だもの。全部、あなたのために使っていいのよ。」
「でも・・・」 そう言う私に、
「でも、そうね・・・。じゃあ、少しだけ、お手伝いをお願いしようかしら」
「うん・・・。じゃあ、少しだけ」
私の少しだけの仕送りはそうして始まった。
2日間の休みをもらった後、私は会社に出勤する。同僚の一人一人が違って見えた。頑張ってみようと思った。
今よりも少しだけ、もう少しだけ。





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【小説】刻を運ぶ

なかまくらです。

そういえば、正月に書いたままになっていました。

新作です。どうぞ。

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「刻を運ぶ」
                             作・なかまくら
ラミジアは怒りに任せて、王の間へと立ち入った。無礼は百も承知だが、たった一人の妹のことなのだ。何かをしなければ、ならぬと思ったのだ。一介の漁師に過ぎないラミジアのその妹が、王子に見初められ婚約を結んだとき、ラミジアはそれを大いに祝福した。しかし、ほどなくして妹は、原因不明の病に臥せった。王子は、星占いに長けており、ラミジアの妹のために古い文献を読み耽り、ついにその治療法を探し当てる。それによれば「辰の刻に咲く『進化の花』」を摘み取り、煎じて飲めばよい、とあった。しかし、王はその希望を撥ね退けた。『進化の花』は、夜にしか咲かず、辰の刻となる朝食の頃合いにはすっかり、蕾に戻ってしまうからだ。
 王は、謁見の間に乗り込んできたラミジアに同じ回答を繰り返した。可哀想ではあるが王としては、後継ぎに病弱なものは認められない。星占いの結果は摩耶訶示(まやかし)であり、存在しないことを示していると王はラミジアに伝えた。ラミジアの無礼な物言いを咎めないところに、王なりの事態への最大限の配慮が汲み取れた。そこに、王子が扉を押し開いて飛び込んでくる。息を整える間も惜しんで言葉を絞り出す王子はひどく憔悴し、肌は浅黒く変色していた。
「王よ! 海の向こうでは、朝が来るのが遅いと聞きます。それも道理。日は我国に先に昇り、それから彼国に昇るのですから。すなわち、辰の刻にまだ日が昇らない場所があるのです。これが、私の占いの示すところだったのです!」
王子の言葉はラミジアの胸に清らかな水のように染み込んでいった。ラミジアの筋骨隆々とした体躯の内側では、まさに静かに心が涸れ果てようとしていたに違いなかった。
「私に行かせてください!」
ラミジアの目は、先刻までの怒りに満ちたものではなかった。
「・・・わかった。だが、この旅の結末が、願ったものにならなかった場合には、お前の妹との婚約は、なかったものとするが良いか」
ラミジアは、ためらうことなく頷くのだった。
航海に必要なものを船に積み終えたラミジアに、王子はもう一度確認をする。
「未来の兄よ。逞しき勇士よ。貴君の妹君であり、私の婚約者である彼女の命を救うという使命を無事に果たされてほしい」
「託された」
「花は確実に、辰の刻に摘んでもらわなければ薬効がない。だが、彼国に刻をいかに運ぶのか。この度、科学顧問と話した結果、これを使うほか、思いつかなかった」
そう言って差し出されたのは、振り子だった。
「我国は、近年になって、時間を計る方法を見出した。振り子はその振れ幅に依らず、ひもの長さによって、一定の時間を刻むことが分かったのだ。しかし、彼国が我国から幾らの刻の差があるかは、明らかになっていない。正午となる刻を待てば、彼国の刻を計ることも、我国の刻を計ることも可能だろう。だが、その2つの刻は、未だまったく別のものとして存在しているのだ。ゆえに、刻を計りながら航海をするしかない。あなたに、3人の私の部下を預ける。彼らとともに、使命を果たしてほしい。妹君の憧れであったあなたなら、必ずや成功させるものと信じている」
手を取り、振り子を渡す王子に向かって、ラミジアは力強く頷いて見せた。
 王子の預けてくれた船乗りたちは、才に秀でた者たちだった。星を読み、天候を読み、船を進めていった。しかし、神は彼らに試練を与える。
「ラミジア。困ったことになった」
「どうした」
振り子から目を離すことなく、ラミジアは応答した。2回の昼と夜を揺れる船の上で、寝ずの番をして過ごしていた。振り子が10回振れると、1刻を120に分けた内の1つとなる。それを、木の板にナイフで刻み付けていく。
「それが、今晩あたり海が荒れそうなんだ。大時化が来るぞ」
小さく開けられた船室の窓から夕方の空を見たラミジアは覚悟した。刻を正確に読み取っていくことは、困難を極めるに違いなかった。船乗りたちは必死に船の揺れを抑える。燈りに揺らめくラミジアの影は身体で揺れを吸収し、振り子への影響を最小限に抑えようとしていた。刻は狂った獣のように秩序を掻き毟り、それは永遠に続くように思われた。すべてが刻に飲み込まれ、すべてが刻となり果てた。
 気が付くと、静かな海に浮かんでいた。そして、霧の立ち込める海上の向こうに陸地が霞んで見えていた。
 海岸に近くに咲くその花は、すぐに見つかった。王子の言った通り、辰の刻に正確に摘み取り、すぐに船は踵を返した。刻を計る必要はもうなかった。浮き出る肋骨を慰めるように、ラミジアは、漁の技術を披露した。だが、先の時化で帆の一部を破損した船は、順調には進まなかった。そこに黒い船が近づいてくる。
「ラミジア。あれは、海の野党だ。何もかもを持って行ってしまう野蛮な奴らだ」
 ひときわ大きな羽根つきの帽子を被った男が、ずい、と前に出てくる。それから人を脅すときの顔をして、すべてのものを置いて今すぐここから去るならば、見逃してやろう、という。ラミジアは、叫んだ。
「俺には使命がある。奇病に臥せっている妹を必ずや救わねばならない。たった一人の家族だ。これまで幸せなど、何一つ与えてやることができなかった妹なのだ。その妹が幸せになろうとしていた。その矢先の奇病だ。天はどこまで妹を試し続けるのか。健気な娘に何を背負わせようというのか。俺は妹のためにならなんだってする。そのために、この道を選んだ。俺も船もそのあとならば、どうなっても構わない。だが、お前たちに、運命に立ち向かうものにかける情けがあるならば、ここを通してはくれないものか!」
水は涸れ、喉が裂けるような叫びだった。
 それを確(しか)と聞き届けた海賊の長は、ひとつ頷いた。
「見ればお前たちは、われらと同じく海を生業とするものに違いない。そして、船は与えられず、王族からの無理な要求に従わざるを得なかったのだろう。ならば、汝らを無事に送り届け、そののちに、その船をもらい受ける、ということで手を打とうではないか」
 その言葉に、一同は静かに頷きあい、ラミジアも最後にはそれを了承した。
 国にたどり着いたラミジアは、王宮へと駆けた。息も尽き果て、呼吸もままならないラミジアを門を守る衛兵が抱え上げる。ラミジアは手に持った花筒を転がり出てきた王子に託すと同時に意識を失った。
 ラミジアが次に目を覚ましたのは、豪奢な寝具の上であった。世話役の下女が、部屋をいそいそと出てゆき、王子がしばらくして姿を現す。王子はラミジアの手を強く強く握りしめた。
「兄よ、よくぞ使命を果たしてくれた。薬は無事に薬効を示し、そなたの妹君は落ち着いている」
そう言う王子に、ラミジアは、しばし沈黙した。
「どうかしたのか・・・」
ラミジアは、ゆっくりと口を開く。
「王子よ。俺はあなたに兄と呼ばれる男にはなれなかった。俺は、この旅の道中で、王国を良しとしない海賊に出会い、その力を借りるために、王族の関係者であることを黙ったままでいることを仕方なし、とした。例え、それが妹の命を救い、使命を果たすために最も幸いな方法であったとしても、それは正しい方法ではなかった」
ラミジアは、そう言い切って、ふらつく足で立ち上がろうとする。王子はそれを押しとどめようとする。
「どこへ行こうというのだ」
「俺は、ここを去る。妹を幸せにしてやってほしい」
王子は縋りつき、ラミジアに懇願する。
「待ってくれ、兄よ。尊敬に値する兄よ。気高きあなたは妹のために、己が義を曲げてでも使命を果たさんとしてくれた。それのどこが、兄と呼ぶにふさわしくないというのか。それに、妹の幸せには、あなたの存在も必要なのだから」
ラミジアは、王子の言葉を受け止め、それからも王国で幸せに暮らした。





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【戯曲】海底探検

なかまくらです。

戯曲を書きました。最近そういうのが多いな、と思うのですが、

これも随分と昔に書き始めたお話で、2012年に途中まで書いてそのままに

なっていたのでした。

昔と何も変わっていないように見えて、少しずつ、物語の書き方も変わっていて、

書けるようになったこともあれば、あの時みたいにはもう書けなかったりとか、

そういう変化を感じるのでした。では、長すぎるので、リンクからどうぞ。

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  2024.3.24 海底探検 (60分; 男4 女0)
      *** 小さいころ、潜水帽をかぶったぼくは、本当の君をいつも探していた。
           その頃のぼくにはきっと魂はなかった。でも、今はある。
           与えてもらった。だから、感じるんだ、自分の魂も、湊のも。





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