1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】現代プルプル

なかまくらです。

タイトルは同タイトルというお題を決めて、みんなで書き合おう!

というところからの出自なので、なんかファンシーですが、

中身は、可愛くはないです(笑

最近、ずいぶんと哲学的である私です。どうぞ。


「現代プルプル」


                   さく・なかまくら
ゴミ捨て場でな、やり合ったんじゃに。
ひどくしわがれた声だった。鉄筋コンクリートの、優しさのないビルとビルの擦れそうな、隙間の奥のほう。室外機の上に彼は座っていた。
お前の祖父(じい)さんはな、そりゃあもう、ずる賢かった。
フッフッフ・・・、と笑うとそのすっかり老いた唇から、恐ろしく艶のある歯茎と年季の入った鋭い歯がのぞいた。
老猫は未だに爛々とした目をして、こちらを見ていた。
ゴミ捨て場でな、やり合ったんじゃに。祖父さんは、空も飛ぶじゃにゃか? あと額(ひたい)1つ分くらいで、ひゅっと、空に舞い上がるのが、得意じゃったに。でもにゃあ、あいつは、死んじまった。
ある日のことだ。いつものようにゴミ捨て場に行くと、あいつは、様子がおかしかったに。俺の姿を見ると、あいつは少し安心した顔をしたに。その意味が、当時の俺にはわからなかったに。あいつは、ゴミ袋にその体を横たえたまま、こう言ったに。
「これで、ようやく向こう側へ渡っていける・・・」
お前の祖父さんは、もともと渡鴉だったんだに。それは知っていた。だから、あいつに俺は洒落たつもりでこう言ったんだに。
「おう、後のゴミ捨て場はまかせろに!」
あいつは、笑って逝った。身体には焼け焦げた跡があって、雷に打たれたようだったに。
俺は、あいつを食った。
その味が、美味かったかと言われると、分からない。経験があるだろう、味のしない食事だった。味覚という感覚は、感情と結びついているのだと初めて知ったに。生き残るために、あいつの分も生き延びるために、食ったんだに。
老猫の顔は見えなかったが、その話し振りは、なぜか終わりが近づいていることを予感させた。
「今ならわかるに」
老猫は立ち上がっていた。その四つ足は震え、もはや野生としての終わりを迎えていた。
「先に死んだものが、後に生きるものの助けになることは、何も可笑しいことではないんだに」
命はそうやって巡るものだとようやく分かった。
もうすぐ、俺も渡るんだに。お前の祖父さんと同じように・・・。
しかし、若鴉には、意味が分からなかった。
ただ、このプルプルと震えている生き物が死んだら、食べてしまおうとは自然と考えていた。





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【小説】駆除

なかまくらです。

久しぶりに新しく書きました。

戯曲は、いつになったら完成するんでしょうね(笑)。

まあ、気長に。

本日は、ちょっと暗めのSF風ファンタジーをお送りします。どうぞ~。



「駆除」


さく・なかまくら


 


あの頃の記憶がよみがえる。ざらざらとした白っぽい金属の床、壁。その壁に灰色をした蜘蛛がジッと止まっていた。


「うわわぁあっ!!」 少年の声が響いた。


「きもっ!」「誰か、殺して!」 何人かが固まる。手には、どこから拾ってきたのか、鉄のパイプを持っている。一人が息を浅く吸って、それをゆっくりと振り上げる。


やめたらどうかな? と、その様子をなぜか上から俯瞰的に眺めている自分が言おうと、口を動かそうとする。動かないから、これが現実でないことになんとなく気づき始める。


何度目かわからない嘆息をして、身体の力を抜いた。


もはや、どうしようもないのだ。


 


この後、この蜘蛛は信じられないほど素早い動きを見せて、逃亡を図る。「うわああっ」と少年少女たちは叫び、鉄パイプを振り回す。そのうちの一つが直撃し、ぐしゃりと潰れる。金属と金属がぶつかって響きあっている。そして、その少ない体液が目に留まることもなく、蜘蛛は再び動かなくなるのだ。そうして、この夢は終わる。


 


梅坂(うめさか)は自分の呻いた声で目が覚めた。ゆっくりと時計を見て、急いで支度を始める。極軽量の合金を編んだ防刃の下着を着込み、その上から、シャツを着る。買いだめしてあった携行食料をポケットに突っ込み、脛まであるブーツを履いてアパートの玄関を出る。「行ってきます・・・あ、」 扉を閉めようとして、奥の部屋から覗く、緑の影に気づく。「悪かったよ・・・ミルバス」 鳶蜥蜴のミルバスが、舌をチロチロとさせて抗議の目を向けていた。携行食料をもう一つ、袋から取り出して放って投げる。「これで勘弁してくれ、遅刻なんだ」 不満顔のミルバスを扉の向こうに残し、会社への道を急ぐ。


上層へと向かって積み上げられた建物。その外壁に据え付けられた階段を登っていく。


「梅坂!」 19階層で同僚の戸栗(とぐり)が合流してくる。


「今日は起きたか。今日の暦屋の予測情報、見たか?」 横に並んだまま、上層への階段を駆け上がっていく。


「まだ」 手を差し出す。


「忙しくなるぞ」 受け取ったチップを右腕のデバイスに差し込むと、情報がダウンロードされる。あと20秒。


上空には、人工太陽が青白い発光を伴って浮かんでいる。暦屋からの情報は、その運航予定に関するものだ。


「今月、日照量、少なすぎないか・・・?」 梅坂は今月何回目かのボヤキを漏らす。


「去年、博波地区の現職議員が負けたからなぁ・・・」 戸栗が同じ問答を繰り返す。


「汚職議員だった」 上層部分の増築資金を横領していたのだ。


「確かにしょうもない男だった。ただ、見えない役割を果たしていた、ということなんだろうな」 自分たちで選んだ道なのだから、仕方がない。そう言って、戸栗は話を区切った。会社のある上層階へのゲートが見えてきていた。


 


会社で、仕事道具を受け取ると、高速昇降装置で地面に降り立った。金属とは違う、土の踏み心地。人工太陽の光が遥か遠くに見える、薄暗い世界だった。


「相変わらず、くっせーな」 戸栗が毒づいて、


「マスク、してるだろ」 梅坂は冷静なコメントを返す。


「気分だよ、気分!」 カビとコケに覆われた世界。大昔に作られた建物の大半が背の低い植物に覆われているが、一部は、未だに住民がいる。窓に火の明かりが揺れているのが映っていた。IDを持たない、旧市民と呼ばれる住民たちだが、実際には犯罪者や流れ者が多かった。


「さて、と。早速お出ましだ」 奇妙な生物だった。黒い胴体は殻のように固い。ところが蜥蜴のように滑らかな動きをする。その胴体を被るようにして、仄かに発光する本体が中に見えていた。


 


「リドカリ」 その生物の名前を梅坂は気が付けば呼んでいた。


 


「ヤドカリみたいだろう?」 初めて連れられてここに来た時に、戸栗にそう言われた。臆病にも見える、発光する本体。あの頃の記憶が何故かよみがえっていた。白い壁にジッと止まっているあの蜘蛛の姿だった。


「こいつらが集まってくると、災害が起こる。こいつらな、身を守るときに酸を出すんだよ。それで、上層都市を支える柱が腐食しちまう。災害を呼ぶ生き物なんだ。駆除しなくちゃな」 戸栗は慣れた手つきで、道具を構えた。


 


やめたらどうかな? とはそのときは言わなかった。それを仕事に選んだのだから。実務的に処理をしていく、仕事に心やその優しさは求められていないことは分かっていた。


 


ところが、何故だろう、今日は目の前の「リドカリ」から目が離せなかった。今頃、朝ご飯の携行食料を食べ終え、物足りない顔をしている鳶蜥蜴のミルバスの顔が浮かんだ。今まで積もった雪をただ崩すようにその命を壊していたというのに、初めてリドカリに個性を感じてしまったのだ。


「危ないぞ!」 戸栗がリドカリの甲殻を強くたたいた。ぎぃぃん、と金属同士がぶつかったような音が響いて、近くの建物の窓ガラスが割れた。梅坂はハッとする。蜘蛛は潰れたが、リドカリは潰れることなく、そこに未だドウといるのだ。


「ボーっとするな。人が襲われた例もあるんだ」 戸栗が痺れる手を振っている。


リドカリは、手足を縮め、甲殻の内側に閉じこもっていた。人を襲う? 人が襲っているの間違いではないか。襲うから、身を守るために酸を出す。酸を出しているのは、自分と違うものを排斥しようとするからではないか。その、人間の臆病さからではないのか。


梅坂は、手を伸ばして、甲殻に触れていた。奇妙な感触だった。たくさんの銀を縫い付けた中世の鎧のような、滑らかなのに、手を切りそうな鋭利さを隠し持っている。生き物という感触だった。


「おい、梅坂? お前一体どうしたんだ・・・」


「連れて帰らないか?」 梅坂はそう言った。


「はぁ!?」 戸栗が呆気にとられた顔をしている。


「連れて帰りたい」 梅坂の心はゆっくりとだが、確実に決まっていた。あの頃言えなかった言葉を、言うのであれば今だと思えた。


 



 


暦屋は、40階層にある。1階層は10階前後の高さの建物からなり、居住区として提供されているのは、40階層までだった。その上は、オフィス街と、地区の統治機構が占めている。統治機構は、政府、裁判所、占星の三権からなっていた。暦屋はそのうちの占星、すなわち天候や天災、天や地から放出される氣の流れを読む人たちの集団であった。


「安芸(あき)様」 梅坂と戸栗は、暦屋の安芸の元を訪ねていた。


市井(しせい)との関係を大切にし、その意を汲む暦屋は、直接選挙で選ばれる政府の人間へと助言を行う組織であった。そのため、市民であれば、訪れれば話を聞いてもらえた。


「難しい顔をして、来られましたね。梅坂と戸栗」 安芸は、二人を抑揚の少し乏しい声で出迎えた。手元のタペストリーを編みながら、その糸目を観ているのだ。


「仕事・・・のことですね。二人は害獣駆除の仕事」


「その通りです」 梅坂が答える。


「そして、問題の本質を抱えているのは・・・」


「梅坂です」 戸栗が答えた。


「聞いてくださいよ、まったくこいつというやつは・・・」 そう毒づいて続けるので、梅坂は首をすくめて見せた。


 


「・・・なるほど、複雑な事情があるようですね」 安芸はそう言って、グラスの液体を飲み干した。


流石に、居住区にもって上がることは思いとどまった。そもそも、高速昇降装置を使う以上、一度会社へ戻らなければならないから、どうしたって発覚してしまう。そこで、少しだけ階層を登った旧3階層の一室に置いてきたのだった。一応、食べてくれた携行食料の残りを全部置いて。


「複雑も何もありませんよ、安芸様。単純にこの馬鹿野郎は、情が湧いたんですよ。災害の対象だってのに。バレたら間違いなくクビですよ、まったく・・・」


と言いつつも、戸栗も最後まで手伝ってくれた。リドカリは思ったよりもずっと軽く、大きな蒲公英(たんぽぽ)の綿毛のようだった。それでも両腕を占領する大きさがあり、角を曲がるたびに、他の駆除員がいないか戸栗が周囲の安全を確認してくれたのだった。


「戸栗」 安芸が話の途切れない戸栗に声をかける。


「はい」 戸栗が返事をする。


「その子を大切にすると吉報有り、と出ています」 安芸は微笑んでそう言った。


「あなたたちのやったことは何か救いになるのかもしれないわ。これから起こる大きな出来事に対して、何か・・・」 そう言って安芸はタペストリーを編み続けていた。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・あの、安芸様、何か起こるのですか?」


「おい失礼だぞ」 戸栗がたしなめる。暦屋は聞いてもらう場所であり、話をしてもらう場所ではない。それが暦屋を訪れる者のルールだった。それでも、


「あの・・・」 梅坂の不安はそれを振り切ろうとした。


「まだわからないのよ」 安芸はそう窘(たしな)めた。「このタペストリーは、大きすぎるの」


暦屋の占い師たちは、手の赴くままにタペストリーを編んでいく。そこには必然的に未来の出来事が編みあがっていくのだ。規模が大きければ大きなタペストリーになる、と聞いたことがある。実際、博波地区創立を予言したタペストリーは統治機構の建物のロビーにほかのものと並んで掲げられている。


「雨が降っていることだけは分かっているのだけど・・・。いいえ、もうお仕舞いにしましょうね」 安芸は手を止めて、そう言った。それが終わりの合図だった。


「また来て頂戴」


 


雨が降り始めていた。長い、長い雨が。


 



 


それからは、仕事はサッと片づけ、旧3階層のリドカリに会いに行くのが梅坂と戸栗の習慣となった。そもそも、止まない雨で地面はぐしゃぐしゃになっていて、作業がはかどらないことは、会社側も承知しているようで、リドカリの殻の回収の成果がやや少ない本当の理由には気づかれていないようだった。


「人工太陽をなぁ、こっちに迂回して寄っていってもらわないとこれはもうどうしようもないな」 戸栗がぼやく。


「隣の地区の増築で工事が集中するから、そっちに回っているらしいけど」 梅坂も聞きかじった話を挙げる。


「そういう順番なんだろうな・・・ああっ、それにしても、見つからないな、リドカリっ!」


「あんなにいたのに、どこに潜んでいるんだろう」


この日の成果も少なかった。もちろん、昼過ぎには旧3階層に移動を始めたためであったが、ただ、このとき、その本当の理由に気づいていなかったのは梅坂たちも同じだった。


 



 


そして、あの事件が起こる。


初めに、奇妙な風邪が流行っている、という噂のようなものが流れた。体温が保てなくなる低体温状態になってしまう風邪だった。それは低温火傷をするように恐ろしいもので、少し寒いな、と思っているうちに症状が進行し、身体が動かなくなってしまっているというものだった。次に、同じ症状の電脳風邪が流行った。電脳風邪は、脳に有機演算素子を埋め込んだ富裕層を狙ったコンピュータウイルスによるものであった。


「せめて、人工太陽で日照量が増えれば、症状の進行を抑えられるって、医者の先生が」


「風邪の設計者がいるはずさ・・・早く捕まるといいんだが」 その頃にはリドカリはすっかり捕獲できなくなっており、休職状態だった梅坂は、高いアパートを引き払って、5階層まで降りてきていた。鳶蜥蜴のミルバスの体温はなるべく頻繁に計るようにしていた。新種の風邪が人間以外に感染することだってあるだろう。


いったい誰が、何の目的で破壊行為を始めたのだろうか。免疫を攻撃するウイルスと、電脳ウイルスが同じ症状だということは、デザインされたウイルスに違いなかった。不満はある。一向に航路が変わらない人工太陽。最近乾いた地面を見たことがない。それに加えて、上昇する物価、仕事の減少、作業員の滑落事故の増加。暦屋は人で溢れ、安芸様にも会えていなかった。話しておかなければならないことがあったのだが。


 


政府の発表によると、この電脳ウイルスのワクチンプログラムを構成するカギとなるプラットホームは、“リドカリ”という生物にある、と思われる描写がタペストリーに出たというのだ。リドカリから抽出される光。それをビンに詰め、発症者を照らすと症状が改善すると思われた。政府はただちに100体の“リドカリ”の回収を各回収業者に命じた。


 


もちろん梅坂のところにもその知らせは来ていたが、応じるつもりはなかった。最早、リドカリがこの地区に生息していないことは知っていたし、人間の都合に嫌気がさしていたとも言えた。ただ、梅坂は、旧3階層に残されてしまった・・・いや、残してしまった、一匹のリドカリをどうするべきか、悩んでいたのだ。


 


梅坂は思案を巡らしていた。リドカリの存在を知るのは、戸栗と安芸様と自分だけである。


安芸様は何も話されないだろう。暦屋は何かを聞くものであり、話すものではないから。では、戸栗は。居を移してしまってからは、一度、訪ねてきただけで、その後は一度も会っていない。戸栗も妙に忙しそうにしていて、それっきりになってしまっていた。戸栗のことだ。別の仕事を見つけてうまいことやっているのだろう。だが、どうだろう。リドカリに懸賞金が付いたとして。それが喉から手が出るほど欲しい金額だったとして。秘密は守られるだろうか・・・。


 



 


梅坂は、下層へと下っていた。日の光は遠く、コケに覆われた足場を慎重に進んでいった。その一部が踏みしめられていて、それは誰かが自分よりも先に通っていることを表していた。梅坂の歩調は自然と早くなっていた。


 


「待てっ!」 建物に入った瞬間、梅坂は叫んでいた。


「武器を捨てろ! それからゆっくりと離れるんだ」 人工太陽の光も届かない薄暗闇の中、両手を肩の高さまで上げた影が、弱く発光するリドカリの隣でのろのろと動いた。そして、雲の一瞬の切れ間から零れた光が顔を照らして、すぐに消えた。


「・・・やっぱりそうなるのか、戸栗」 梅坂はうめいた。


「悪いな・・・、政府は血相変えて探してやがる」 戸栗が静かに佇んでいた。


「お前、どうした・・・?」 梅坂は思わずそう聞いていた。


「知ってるか? リドカリはな、もうずっと前から、この博波地区にしか出てなかったらしいぜ」


「・・・そうじゃないだろう!」 梅坂は思わず怒鳴った。声が反響し、建物を出たところで、外の雨に溶けて消えた。


「お見通しかよ・・・」


「捕まえてお金にするつもりじゃないんだろう」


「ああ」


「なぜ、テロなんて始めたんだ・・・」 梅坂には理解できなかった。


「なぜ、気づいたんだ?」 戸栗はそうやって薄く笑った。


「質問しているのはこっちだ」


「質問しているのはこっちもだ」 戸栗はからかうようにそう言った。


「・・・安芸様を訪ねた時に、問題の本質は俺にある、とお前は言ったな」 梅坂は、リドカリの姿を探していた。見当たらないのだ。


「ああ・・・」


「それがな、あとから思い直せば、わざわざ安芸様の言葉をさえぎってまで、そう言って、思えば思うほど不自然に思えてきたんだよ」 梅坂は、階段を目線の先にとらえていた。


「・・・それは、そうだろうな。あれは、失敗だったよ。せっかく、うまくやれてたのにな」


そう言うが早いか、戸栗は缶を放って駆け出していた。


「戸栗!」


缶は猛烈な勢いで煙を噴出させて、視界を奪っていく。梅坂も、戸栗の消えた階段へと向かった。銃声。立ち止まる梅坂。


「人類は、かつて作った建物を次々と放棄し、壊すこともせず、上へ上へと作り続けた」


声がした。戸栗の声だった。


「人口が増えたんだ、仕方がなかった!」 梅坂は会話をつないだ。


「一度壊し、片づけ、見直し、改めて作る、というプロセスを怠った」 声は、らせん状になっている階段に反響し、ずっと上のほうから、あるいは下のほうから聞こえるようで、どこにいるのか見当はつかなかった。


「それは、そうだ・・・」 梅坂は、戸栗が何を言いたいのか、なぜこんなことをしているのか、図りあぐねていた。この仕事を始めた時には先輩で、今では良い相棒だと思っていた。そんな男が何故、こんな恐ろしいことをしているのか。


「先生は、それではいけないと、再開発の資金をやりくりしようとしたんだ!」


「先生・・・?」


「そうだ、先生は横領して、私腹を肥やそうなんて考えていなかった。それが何故わからない!」


「先生とは、・・・戸栗、あんたは議員さんの支援者だったのか。だったら、もう一度、次の選挙で・・・!」


「先生は・・・死んだよ。だから、我々は、一度壊すことにしたんだ。このリドカリを一匹殺せば、それで可能性は消える。先生を破滅に追いやった世の中が生き残る可能性が」


銃声。


「やめろ・・・」 梅坂は銃を撃っていた。


「次弾も引き金を引くだけで撃てる」 構える手は汗で濡れ、おぼつかなかった。


「やめとけよ、そんな無責任な」 戸栗は少し馬鹿にするように、どこからかそう言った。


「無責任・・・?」 梅坂はその意味を図りかねて聞き返す。


「お前には決められないだろう? 俺を殺したところで、このリドカリを助けて人類を滅ぼすのか、このリドカリを殺して人類を救うのか、お前にそれが選べるのか?」


なるほど、そういうことになるのだ。梅坂は混乱していた。


梅坂は混乱した頭で、思いついた言葉を口にしていた。


「俺はな、時々、思い出すんだ。蜘蛛のことだ。デカい蜘蛛だ。みんなで囲んでる。デカいといっても、俺たちよりはずっと小さい。やめたらどうかな? という言葉が喉の奥までこみあげてきているんだが、混乱でうまく出てこないんだ。もはやどうしようもないのだという言葉も」


「何を言っているんだ・・・」 梅坂には、3つ上の階の居住施設のベランダに戸栗の姿がうっすらと見えた気がした。隣には、リドカリの姿も。ひとつ息をのんだ。


「あの時の蜘蛛は自分とは違う異質な存在で、気味が悪くないといえば嘘だった。ただ、どうだろうか。もし仮に、蜘蛛が飛びかかってきたら。迷わず攻撃するだろうさ。そんな想像をするくらいには、飛びかかってくる恐怖を理性で押さえつけているんだよ。理性的であろうとすればするほど、おかしなことになってくる。それが人間というものだとも思う。けれども! ぐしゃりと潰れた蜘蛛から少ない体液がにじんでこなくて、ホッとしてはいなかったか! 自分の魂を汚さずに危険を払ったことに安堵する心はなかったか!」


「梅坂、お前はずっとそんなことを考えていたのか」 小さな声が聞こえた気がした。


叫んで、銃を構えた。居住施設のベランダだ。煙の切れ間に見えたら撃つのだ。自分の魂を汚して、欲しいものを手に入れるのだ。いいや、欲しいものを手放すために、手に入れるのだから、梅坂の手元には何も残らないのだが・・・。


梅坂にはもはや、分からなくなっていた。ただ、自分の身体がさっきから妙に冷たく、妙にぼうっとするのを感じ、反対に何とか生きなければならないという衝動を心臓が絶え間なく送りだしていた。


 


そして、迷わず撃った。


空薬莢(からやっきょう)が、金属の床に落ちて響いた。







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【小説】新しい元号


もうすぐ弟が生まれる。


随分と年の離れた弟だ。12歳も違う。


弟が生まれたころには、私は、セーラー服というのを着ている。私はズボンが好きだった。スカートはひらひらしていて苦手だった。男子の夢なんて詰まっていなかった。あるのは私の元気な脚と無駄にひらひらとした空気だけ。


 


学校。ぽたりと落ちる廊下の水道の雫の音。先生の声。もうすぐ元号が変わる。


「班で話し合ってくださーい」 机を騒々しく動かす。


「○○ちゃんのお父さんは一味違うらしい」「へぇ~え、生まれが古いからね~」


古いというのは、違うというのは、元号のことを言っているらしい。


元号を何だと思っているんだろう。元号が変わった瞬間に、空の色がこれまで青かったのが当たり前だったのが、黄色いのが当たり前になったりするとでも思っているのだろうか。ドッヂボールで女子はあててはいけないルールが撤廃されると思っているのだろうか。給食の牛乳瓶が、総理大臣が、悲しい顔を気づかれていないと思っているあの先生が、いまだに私の苦手なあのピーマンが、当たり前に変わるとでも思っているのだろうか。


私はもうすぐ中学生になって、少し離れた新しい学校へ行く。知らない校舎、知らない先生、知らない友達。変わらないことはない。お母さんは、弟の世話で大変だろう。お父さんは、いっそうお給料を増やすために働くだろう。私の足元は随分とグラグラとしている。


 


弟が生まれても、私と弟の間には大きな崖がある。


こっちにおいで! と叫んでも、元号の深い谷に断絶されてしまうかもしれない。私はそっちへ渡ることはできないの。古い人間なのよ、と悲しい顔をして、襲い来る滅びの炎に焼かれるしかないのかもしれない。いいや、その時、私はきっとこう言うだろう。「私はこの元号に生まれたの。あなたはあなたの元号を行きなさい」


 


そんなことを自由帳に書いて、交換日記で渡したけれど、


「この前授業で習ったモーゼの影響、はなはだしくない?」


と、笑って言われたので、私も笑って、


「未成年はセーフなの。次の元号も私たちの時代になるわ」


そういって、余白に海賊の絵を書いた。弟も、私の隣で、笑っていた。







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【小説】GURA-SUN

5年前くらいの書きかけを発掘です。

まとめあげるのがすごく難しい作品でした。

書き上げてから、1200字ほど増えたわけですが、またいずれ加筆するかもです。

今年もよろしくお願いします。



GURA-SUN

                 作・なかまくら


そこは、大人のいかない公園である。艶やかな黒いセミが、しうしうと鳴く。
彼の登場を待っているのだ。オレンジ色の車止めをジグザグに避けてその男は現れる。
砂場に、滑り台に、ブランコに、地球儀に、群がっていた子供たちが、一斉に振り向く。
「ようこそ」
「くそぅ、あいつにさえ出会わなければよ、俺の人生だってうまくいってたろうよ」
居酒屋のことである。あの頃は若かった男たちが集まっていた。
「おれだってそうさ」「おれも」「おれもだ」 口々にそう言って、笑った。
ビールの泡が、コップの側面をずりずりと降りていく。男は居酒屋の笑い声に紛れようとジョッキをぐいっと傾け、机にトンと置く。置いたまま、そのままに、男たちは静かになる。違うのだ。
「でもな、出会わなかったらって考えたら、ゾッとする。」
少年は美化委員だった。公園のブランコに座り、夕暮れの公園を眺めていた。
少年は眼鏡をかけており、そのメガネの向こうに映る、子供たちの遊んでいる景色は、すべて中央統制局のモニターに映し出されているのだった。
「右から行きます。A,D,B,F,F,F,E,C,・・・G」
少しためらって、Gと判定を出した。メガネの中のコンピュータがカリカリと小さな音を立て考える。そのGの子供をつぶさに観察し、「承認」と回答が得られた。
あとは、処分を実行するだけだ。
「今度はあの子?」
視界の右端でエリマキトカゲがしゃべった。
「エリー」 少年は、その名前を呼んだ。
「はいな」 陽気な声だった。その不自然な言葉を話すエリマキトカゲはすぐそこにいるように見えるが、もちろんいない。おもちゃのメガネに投影されている仮想の生き物に過ぎない。
「そんなに、辛そうな声を出すなよ。やりにくい」 少年は手に持った指輪をどうやってか、手の中で広げたり縮めたりしながら答えた。その輪の中は、眩しくてよく見えないが、広げようとすれば、子供ひとりなど、容易に飲み込んでしまいそうな穴だった。
「お前の代わりに、俺が言ってんだ」 エリーが言い終わらないうちに、少年の手から指輪が消える。そして、子供が一人、忽然と姿を消した。
「探しているんです」 縁の分厚い眼鏡の少年がおずおずと声を出した。
「ふーん」 サングラスに光が反射してギラリと光る。グラさんと呼ばれている、公園のボスだった。
「ひえっ!」 トレーナーの裾をぎゅっと掴んだ。
「探してるんだ・・・」 年齢はわからないけど、その背格好は、間違いなく子供。けれども、自分たちのように守られている弱いもの、とは全く感じなかった。そのふつうではないかっこよく決まった髪の間から、太陽の光が降り注いですべてが羨望の中に消えていった。
「もうすぐ始まるんだよね・・・」 友達がボソリと言った。
「え、何?」 少年は聞き返した。何ってなんだろ。なんと聞き返せば良かったのか。
「『ようこそ』って、声がするんだよ」 友達は天を仰いでいた。
なぜだか、空から光が降り注いでいるようで、迎えが来ているようだった。
「ねぇ、やめようよっ!」 思わず踏み出そうとした足元にバナナの皮が罠のように置いてあって、踏み出せない間に、友達は忽然と消えた。今思えばそれは白昼夢のようだった。その公園への道を考えるのは、もうやめたくなっているのだが、思考が止まらないのだ。気が付くといつも考えてしまう。
公園を覗く大人の気配が、公園に平常をもたらす。
「殺人事件が起きたんだって」「えっ?」
先生のような人だった。お父さんよりも年を取っていて、ネクタイを締めている。入ってこようとするのだ。子どもの顔をして、内側から平常をもたらそうとする。サングラスはかけていなかった。
「近くのアパートで」「怖いですね」「秘密なんだ」「秘密なんですか」「事情があるのさ」「事情」「不審者が出るって、言っても聞きはしないんだ」「子供たちですか?」「そう、子供と大人は理解しあえないんだ」「・・・そんなこと」「いや、君にもわかる日が来るさ」
子どもたちは、様子を伺いながら、平常な子供を演じていた。
「行こうか」「はい」
少年はその時、コンクリートの象の中にいた。
「たっちん、行ったか?」「・・・うん」 たっちんと呼ばれた少年はうなずいた。
「やつら、グラさんを探しているんだ」「グラさん?」 たっちんは思わず聞き返した。
「ああ。地球を救う影のヒーローさ」「影の・・・」 たっちんはまだ小さかったから、ヒーローといえば、輝きに満ちた姿しか思いつかなかった。常に闇は悪の隣にいた。
「そうさ」「なんで影なの・・・?」 たっちんがそう尋ねると、
「グラさんはヒーローとして戦えないんだ」「戦えないの?」
「戦えない。じじょーってやつがあるんだ。でも、大人と渡り合えるのはグラさんしかいない」「じゃあ、グラさんは大人と戦っているんだ」
「そうさ。ヒーローを生み出すのは大人ばかりじゃない。子どもだってヒーローを生み出すんだ。子どもに必要なヒーローを」「子供に必要なヒーロー・・・」
象の中から、公園を見渡した。随分とだだっ広い公園になってしまった。たっちんが初めて遊びに来た時、砂場があった。いつの間にか無くなっていた。池があった。いつの間にか無くなっていた。ジャングルジムがあった。いつの間にか無くなっていた。いつの間にか、何もかもがなくなっていた。このコンクリートの象も・・・。
「よし、行ったか」「うん」 たっちんがうなずくと、もっちんが金色に光っていた象のフィギュアをゆっくりと撫でる。すると、象が半透明となって、輪郭が金色に光りだす。やがてはそれも空気中に溶けて消えて、後には何も残らなかった。
「グラさんは、俺たちに力を与えてくれるんだ」「力を?」
「そうさ。大人たちはこの公園の外の世界をすべて知ったつもりでいる」「うん」
たっちんにも思い当たるところがあった。お母さんに怒られて、そのままこの公園まで走ってきたのだ。たっちんにはたっちんの言い分があったのに。
「でも、このちっぽけな公園の中をグラさんは広げている」「この公園の中を」
「そうさ。これだけの広さ。けれども、俺たちはこの場所で竜との決戦もあったし、雪男とだって戦った。この場所のことは、大人は知らない」
「そうなんだ」 たっちんは、もっちんの話に胸を膨らませた。
「待たせたね」
その時だった。サングラスをかけた男・グラさんが現れる。子どもたちが一斉にそちらを振り向いた。
「タイムマシンの調子が悪かったんだ」 そういって、フラフープを動かして見せた。
子どもたちは手に手に持っている遊具を動かして見せた。その一つ一つが秘めたる力をサングラス越しにグラさんは見る。
「いま、君たちに立ち向かう勇気はあるか」
子どもたちは応じるように立ち上がる。
「君たちは私の下に並ぶのか、それとも、私のように並ばせるのか。勇気を出したなら、面倒事は引き受けなければならない」
子どもたちは応じてうなずいた。
子どもたちの向いた先に、一人の大人がいた。
「今日は君たちの仲間となる男を一人紹介しよう。大人だよ。けれども彼は違う・・・と思っていたのだけれども」 グラさんの表情は、サングラスに隠されていてわからなかった。
「子供たちから離れなさい。・・・それから、君の身分を証明してもらおうか」 道化の格好をした大人は、白々しい仮面をつけたまま、低い声でそう言った。
「残念。・・・逆光仮面だ。常に逆光にして、その正体を知る者はいない。しかし、俺には見える。サングラスをしているからな」
グラさんが言い終わると、子どもたちが一斉に動き出す。
子どもたちのおもちゃがそれぞれ光りだし、大人が光の中に消えてなくなるのを、たっちんは目撃し、グラさんのほうへ振り返った。
さっきの言葉がリフレインされる。
「君たちは私の下に並ぶのか、それとも、私のように並ばせるのか。勇気を出したなら、面倒事は引き受けなければならない」
たっちんは、その公園から一目散に飛び出していった。





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【小説】仇の肩のたたきかた

なかまくらです。

去年書いたままになっていたのを公開しておきます^^

もうちょっと地続きの話になるはずが、ならなかったお話でした ̄v ̄;

どうぞ~。


「仇の肩のたたきかた」

                       作・なかまくら


あるとき瀧一郎は、施術士であった。
その指には自然と生命のエネルギーが集まるそうで、「まるで魔法のようね」と頼ってくるお客さんも多かった。瀧一郎は、自分の夢を追いかけ、そして少し老いたその手を見た。テーブルの上には小さな指輪が置かれている。かつて、自分に無限の勇気と力を与えてくれた指輪だった。「あなたの行く先にたくさんの幸福がありますように」と祈りを籠めて贈ってくれた指輪だった。
ある昼下がり、珍しく予約は入っていなかった。
ふうわりと、風が暖簾を押すようにして、ひとりの男が入ってきた。その男は、なんの風格もなく、それ故に、ただ者ではないように見えた。「回復施術の名士がいると、聞いたのだが」男が口を開くと、瀧一郎はなぜだか非道く血が騒いだ。ベッドの脇でいつも鈴の音を響かせてくれているスズツキ虫のスズキちゃんが、ひとつ、リーンと鳴いた。虫の知らせも届いた。
「私がそうです。どうぞ、そちらのベッドへうつぶせになってください」
瀧一郎は、動揺を隠そうと、心の中で童謡を歌う。あれまつむしが、ないている・・・。
うつぶせになった男に瀧一郎は昔の仕事道具のひとつである布をかける。男のつむじは、見たことのない回転力で渦巻いていた。そこで、瀧一郎の中で何かが、フラッシュバックして、「うががががっ!」そのダメージで、後ずさりをする。「やるな、・・・よ!」なんだったか、それは、忘れてはならない、ことのはずだった。
「全身くまなく、あざなく・・・むしろあざとく! のコースは今日はあるかな?」男の声に、ハッと我に返る瀧一郎。「あります」「では、よろしく頼む」男の背中は布越しにも傷だらけであるのがよく分かった。そして、内側、臓器や筋肉もボロボロであることが瀧一郎にはよく分かった。「お客さん、随分と疲れていますね」「ああ・・・そうだな。眠ってしまえたら、楽になれるのかもな・・・」「お仕事、ですか?」「まあ、そんなところだ」「・・・大変ですね」そう言いながら瀧一郎は、自分が無意識のうちに永眠の呪文をかけようとしていたことに気付いて、驚く。あの頃の自分のことはもう、思い出すことも少なくなってきていたというのに。だがしかし、もはや間違いないのだ。この男がそうなのだ。
あるとき瀧一郎の隣には女がいた。自分を疎外する世界で隣にいた女、小さな指輪、女、魔属への転生を決意させた女。その女にふさわしい男になったとき、女は反逆罪で、処刑台への階段を上っていた。
広場の前に集まった群衆を屋根の上から瀧一郎はしばし、見ていた。女の表情は、何故だか良く覚えていない。ただ、気が付いたら手にしたばかりの魔力を、ありったけ広場にぶち込んでいた。桶に水が溜まるように広場は浸水し、人間には到底受け止められないエネルギーに溺れて皆死んだ・・・はずだった! 一条の光が広場の中央から真っ直ぐこちらを貫く。「うががががっ!」そのダメージで後ずさりをする。「やるな、“勇者”よ」思わずニヤつく。うなじの特徴的な青年は、怒りに任せて広場から一足飛びに屋根へと飛び移り、ギラリとこちらを睨み付ける。「おまえぇぇ! なんてことをするんだ!」その表情は、だが、いま癒やしを求めやってきたこの男には、どうしても重ならなかった。ただ、男から伝わってくるのは、人々が暮らす世界、美しく悲しみもある、命のある世界、守るべきものを守ってきたその心であった。それから救えなかった命に対する、男のみっつの涙のわけも。いまは、瀧一郎も、その背中に乗っている・・・なぜだかそんな風に感じられた。
「・・・背中、温かいですね」瀧一郎は、そう声をかけていた。どうしたらいいのか、分からなかった。いいや分かってもいるのだ。
「温かい?」「ええ」行き場を探すエネルギーはいつしか溢れ、それは瀧一郎をも包んでいた。やることは分かっている。そう、臓器へ巡る血の循環、生命エネルギーの淀みを整えてやればいい。それだけで、快癒するだろう。
「よく言われるが、自分のことはいまいち自分でもよく分からないんだ」
男がそう言うのを聞いて、
「じゃあ、つぎ、肩のほうやりますね」
「いてててっ!」「強めの施術が売りですから・・・! ちょっと我慢しててくださいよ~」
せめて、最後に全力で叩いておいた。





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