1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】小さな人

なかまくらです。

やっと書きました、小説です。

ずっと書いてるやつは、完成しなくて、ちょっと書いてるやつから完成していくという。

それではどうぞ。



小さな人


2017.6.7


 


空はどこまでも青かった。


マヨシは、手に持っていた布袋を振り回し、走っていた。真っ直ぐに空を見ていた。青い空、何層もの雲、その雲の向こうにうっすらと光る銀色の影、聞こえるはずもない機関音を聞いていた。


政府は必死に隠すが、その存在は多くの星の、多くの人間達が知っていた。エグリオ。巨悪を徹底的に削り取り、世界を真球のごとく、平らかな世界にする義賊の名だ。その船は、銀色の卵形だと聞いたことがあった。


その船が、いま、この星に来ているのだ。


マヨシは、やがて立ち尽くし、速い呼吸を繰り返しながら、見えない水平線、遠く建物の影に消えていく船を見送った。


星に降りるときには、補給と人員の募集だという。だが、どこに降りるかは、誰にも分からない。光学迷彩の装甲板がその姿を包み隠してしまうからだ。


マヨシは、今のこの星の政府のやり方に最早我慢がならなかった。人民は働く場所を失い、飢え、そして生きるために盗みを働き、そして殺されていく。豊かなるものはそれを豊かなるもののために使う。マヨシはこれまで仲間を集め、レジスタンスを幾度となく結成したが、学生が終わり、大人になると、皆、離れていく。その繰り返しだった。


最早、これまで・・・と思ったところに、船がやってきたのだった。いまが決行の時だと思った。


マヨシは、ある早朝、何かを探すように周回を繰り返す船がやってくるのを待った。船が低い軌道を飛んでいた。タイミングを見計らって、政府施設に火をつけた。爆発が起こり、大きな狼煙が上がる。自分たちはここに居るんだ、貴方がたの同士となるべき男が、此処に。大声で笑いながら、大きく手を振って、銀色の卵形の船を見上げる。その表面に、マヨシの顔がいびつにうつっていた。止まることなく通り過ぎた船から、落下傘で何かが落ちてくる。その箱を開けると、その星の地図の上で、小さく爆発が起きて、消えた。







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【小説】竜刻草

なかまくらです。

少し前に書いたものですが。

超短編小説会の祭り参加作品です。

「天の尖り」もよろしくね(HPに掲載中)。

それではどうぞ。

「竜刻草」

                     2017.1.7
                     さく・なかまくら


 #1.招待

「姫さまぁああああっ!」

どたどたと縁側を走ってくる足音に溜め息が漏れた。

昨日は、「戸棚のあんぱんが無くなった」

一昨日は、「ビスケットが食べたい」

でも、今日はちょっと違ったのだ。

 

ある真夏の雪の夜。浴衣姿で隣にはちょっと冴えないけどまあいいかなっていうボーイフレンドがいて、二人の絡ませた指の間に金魚の水袋がくったりと提げられていた。

花火が真っ暗な夜空に開花し、竜を形作る。その竜があろうことか、こちらに近づいてきた。ああ、ずいぶんと凝った趣向ね、と一瞬暢気に考え、その間に飲み込まれた。あの夜。

気が付いたら、姫様として眠っていて、ボーイフレンドはいなかった。

 

「姫さま、妙な格好をした若者がっ!」そのボーイフレンドが3か月経ってようやく見つかった。

 

#2.時渡り

「時渡りの病だな」 医者が観念したように言う。

「時渡りって?」 表情なく目を開けたままのボーイフレンドを私は見ていた。

「ご冗談を。父君を亡くしておいて・・・」

「馬鹿もの、そういう病なのだ」 壮年の家臣が若い部下を驚いたようにたしなめた。

時渡りとは、次第に存在が忘れられていく現象だという。それは、未来と過去――時間軸の方向に存在がぶれていき、やがて無限に広がる時間の中に一様に分布するようになるのだという。死体も残らず、記憶にも残らず、すっかりと消えてしまう・・・。

「それって神様になるってことなんじゃないかな」って、私はそっと思った。

 

#3.竜の麓に

「姫、此のものを救う覚悟はおありですか・・・」 壮年の家臣は、私に尋ねる。

「ええ・・・そうね。できるなら」 家臣はまっすぐ私の目を見ていて、私は思わず目を伏せた。

「まだヒトが竜に触れることが出来ていた時代を生きていたものとして、姫さまを諫めなければなりますまい」

「竜・・・?」 神様がいて、竜がいる。ならば私はヒトでいいのだろうか、と疑問が浮かぶ。

「あれはヒトが時間を生きる以上、決して分かり合えないのですよ。触れても何も伝わってこない。生き物ではないのです」

時渡りを始めると、時の曝露によって皮膚が鱗状に変化していく。鱗が定着すれば、竜になり世界に還る。もし、鱗が定着しなければ、剥がれた鱗の内側には何も残らない。彼は消えてしまうだろう。

「姫さま、竜刻草をご存知ですか」

家臣たちが何故か心持ち、後退りした。

「姫さま・・・竜の呼気毒は強力であり、ヒトの身ではひとたまりもありません。ひと度、竜訪を受ければ村は壊滅を免れない。そんな毒なのです」

しかし、竜刻草は竜のうろこに反射した光でのみ育つという植物だという。竜に遭わずに得られる植物ではないだろう。

竜がヒトから生まれ、ヒトを害するのは、一体どうしてなのだろう。

 

#4.邂逅

「いいわ、私が行くわ」 一度言葉が出れば、結論は初めから決まっていた。

「これが今は昔の竹取物語なら、5人の王子様を遣わせたのね。実際そうだったのかも」

「でも、私はイマドキなの。ずっと未来の時代はねぇ、女の子が強いのよ」そう言って驚くおじさん達にウインクをして見せた。もともと私は姫ではないし、彼はヒトで竜ではないのだ。

城を出て、村を抜け、森を抜け、山道を登っていくと、草木の色が変わっていく。春色、夏色、秋色、冬色。これらが雑(ま)ぜこぜになって、やがて時間と空間が判別できなくなる。未知なる竜の世界に近づいていく実感があった。

どこか遠くの、とても近い彼方で、空気を震わせる咆哮が聞こえた。

思わず立ち止まり、瞬き。すると、目の前の空間に巨大な竜が悠然と佇んでいた。目は優しくこちらを見ている。体温がないのか、伝わってくる熱を感じなかった。

そして、何故だか不思議と分かった。

「竜になったんだね、おめでとう」 こちらに親しみを持っているような表情だった。

「でも、そんなにあなたのためにって思ったわけじゃないの。なんとなくなのよ、なんとなく・・・気が少し向いただけ」 私が聞かれてもいない言い訳を口にすると、彼は応じるように口を開いて息を吐き出した。お互いに息を潜めていたことに私は気づく。

少しクラクラとするその吐息に私は家臣の言葉を思い出す。

「ヒトはもはや、竜に近づくことさえできないのですぞ」

私は、竜に手を伸ばす。それでもそれは、ヒトが竜と別れ、異なる価値観を生きると決めた。それだけのことで、ただ互いを認め生きていくことだってできるはずなのに。

彼の冷たい鱗に触れて、私はふっと目を閉じた。

 

#5.帰還

気が付けば、花火は散り、残響が空間を震わせていた。

後日、水槽の中に移した金魚の中に鯉の稚魚が混じっていると気が付いたのは彼だった。

私達は、小さなアパートの一室で顔を見合わせて笑った。

互いの命の輝きを見つめていた。





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【小説】真夜中の湖

なかまくらです。

プレミアムフライデーじゃないけど、今日はほぼ定時に帰宅です。

久しぶりに小説を。いつもとちょっと違う作風で。どうぞ。


*******


真夜中の湖


作・なかまくら


2017.2.22


 


「勝手にすればいい。それぞれの人生だ」


 


そう言おうとして、飲み込んで、逃げ帰ってしまったのだ。


それからというもの、どうやら心のどこかに見えない小さなヒビが入っているらしい。


 


しくしくと夜の帳が降りてくると、少し窪んだところがほんのりと湿りはじめる。


 


良くしたことにやましい感情はなかったと思う。それは、自分の二の舞になりそうな彼女を守ってあげたいという、自己満足だったのだ。


 


僕は無理に笑って、呼びかける。


「くれぐれもこちら側へ来てはいけないよ」


それは、川の彼方岸(あちらぎし)から此方岸(こちらぎし)への思いやりのつもりだった。見返りを求めるようなことじゃない。むしろ喜ぶべきことなのだ。彼女はこちら側に来なかったのだから。そうしてぼんやりと眺めていると冷たい水がざばぁざばぁと水が足元を濡らしていくから、たまらず少し後ずさりをする。それで遠くの方に目をやって、思わず静かになってしまう。


 


遠くから、ぼぉ、ぼぉ、と霧笛のような音が聞こえてくる。


いつの間にか、染み出した水は大きな湖になっていて、向こう岸は見えなくて、彼女はとうに消えている。代わりに首の長い何かの影が霧の中に浮かんでは消える。


 


首の長い何かの影は、近づいて来ようとしない。


 


彼女は今頃は・・・、いや、彼女が首の長い何かだったということだってあり得る。


今になって思えば、彼女のことを全く知らないような、そんな風に思えるのだ。


出会いはといえば、夕食に特製のシチューを作っていた僕のログハウスの扉を彼女が不意にノックしたのだ。思わず、はい、と返事をして、扉を開けてしまった。そのとき、どこかへ向けていた望遠カメラが、どこを向いていたのかはもう、忘れてしまった。だが、そのカメラをひっつかみ、思わず彼女の写真を撮った。ぱしゃり。


ブレブレだったそれ1枚だけが最初で最後。一瞬だけ、新聞社に送りつけるほど、舞い上がったのだ。


 


ログハウスはそのままになっている。


そして、窓の外の、夜になると現れる湖にカメラは向けられたままになっている。


たまにノックの音が聞こえる気がする。


けれども、僕はなぜだか湖から目を離すことが出来ない。


ノックの音が聞こえる気がする。


相手が違うと、耳を塞いで、金切り声で叫んでいる。自分の声が厭によく聞こえていた。


ノックの音が聞こえていた。


それが、小さくなるまで聞いていた。これから誰も来ないログハウスの一室で。







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【小説】秋色ビスケット

なかまくらです。

ご無沙汰です。

小説を書きました。

久しぶりに、思い立って一気に書き上げました。

こういう衝動は久しぶりだなぁ。

どうぞ。



「秋色ビスケット」

             作・なかまく

 


「昔はこの辺りは一面の小麦畑だったの
目の前にはコンクリートに覆われた広大な盆地があった。
「秋になると、キラキラと金色の衣を揺らして、おいで、おいで、と誘うのよ。だから私たちは飛び込んで金色に溶けるの」
コンクリートは熱を帯び、夕暮れの地平をゆらゆらと定まらぬ亡霊の棲み家に代えている。

「私はそれが好きだった」
彼女の瞳が黄金色に輝いた。映るはずのない風景を、彼女の目が見据えているかのように。
「・・・だから、私は守るわ」
彼女は振り返った。僕もつられて振り返り、一緒に焼けた小麦畑に目をやった。一段高い場所にあるその土地に、村はまだ残されていた。
「だから、このビスケットをあなたに分けるの。ここの小麦で作られたビスケットだから。この場所を忘れないために」
彼女はそう言って、それから、都会へ向かう電車に乗る僕に別れを告げた。



ぴぴぴ、ぴぴぴ、
目覚ましの音が遠くで鳴っていた。目線だけ移すと、壁を飾るそれが目に入る。
新聞記事の切り抜きが鋲で留めてある。そして、関係性を示す赤と青の糸が巡らせてある。気がついたら記者になっていた。

10年前の新エネルギーの発見は、世界中を驚かせた。熱エネルギーを電気として逃がす素子構造が編み出された。その企業の名前は一躍有名になる。タンタラを知らないものはいないとまで言われるが、


「そんな、都合のいいことがあるかよ」

僕は、誰もいない部屋に、そう投げかけた。神は試練を与えるものだ。
情報は驚くほど少ない。僕は中心に飾られた小麦畑を失った彼女の写真にそっと、手を触れる。そこからつながる赤い糸は、推測を示す青い糸と確証を得た赤い糸を手繰り返して、やがて、タンタラという大企業に繋がっていく。

今から20年前、とある製菓工場が秘密裏に封鎖されている。扉はコンクリートで固められ、上からはかき氷にシロップをかけるように、コンクリートがかけられた。放射能汚染が疑われたが、自然界の閾値を超えることはなかったという。実際に現地調査をしたが、以上は見られなかった。しかし、当時働いていた人の家族は、誰も当時の場所に生活をしておらず、その足跡を見つけることも出来なかった。15年前、ある村がひっそりと地図から消えている。閉じた村で、あまり外部とのやり取りはなかったという。死体は何物かによって回収されており、検死は行われていない。しかし、当代きっての敏腕刑事が独断で村の調査をし、井戸がコンクリートで埋められていること、村でひとつだけの井戸を住人全員が利用していたことから、集団食中毒の可能性があるのではないか、とのレポートをまとめているが、そのレポートはすでに存在せず、刑事も不審な死を遂げている。同様に、村の関係者家族はすっかり消息を絶っていた。11年前、 サイドテーブルに置かれた瓶を一瞥する。

何か、大きな秘密があるに違いなかった。幼い頃、ひと夏だけ過ごしたあの場所へ行ったことは、今では運命のように思えた。殺菌し、真空密封された瓶に収納されたビスケットは、少し赤みがかっていた。

11年前、とある広大な小麦畑が全身を黄色の防護服に身を包んだ人間達が、突然、コンクリートを小麦畑にぶちまけた。大きな音がして、重機が無数に進攻してきた。あっという間に、土地は均され、そして、何事もなかったかのように跡形もなく消えた ・ ・ ・ということはなかった。しかし、彼女は生き残っていた。彼女の暮らす村は残されていた。彼らは、何を見ていたのか。その後、6年前にも、ダム湖がひとつ、埋め立てられている。

線を辿っていくと、ところどころに病院が関わってくる。線上に現れるどの病院に取材を申し込んでも同じ反応がかえってくる。どこでそれを知ったのだ、それに関わってはいけない、の2つが表情に鮮やかに浮かんだ。

小麦畑を守ると瞳を黄金色に輝かせた彼女の顔がぼんやりと浮かんだ。あれ以来、会っていない。途切れそうな糸を、心を繋ぐために、会いに行ってもいいのかもしれない。

思いを巡らせながら、外出用に、シャツを着替える。研究所の知人に依頼してあった検査結果が出ているはずだった。

リノリウムの匂いのする廊下を抜けて、研究室に入ると旧友が珈琲を揺らして待っていた。

「来る頃だと思ったよ」
僕は、珈琲を観察する。
「どれくらい待ってた」
「3時間、てところか。他のことに手がつかなくてね。・・・性に合わないな、結論から言おう。栄養失調だ」
「はい?」


「言った通りだ、表面的にはそれしかわからなかった」
「栄養失調て、3日間、あの村で過ごしただけで? 毎日3食はしっかり食べていたのに?」
「結果を見ると、とにかく、そういうしかない ・ ・ ・なぁ、お前さ」
そう言って、少し前屈みになって顔を寄せた。
「何かとんでもなくヤバいことに関わってんだろ? ぶっちゃけさ。人体実験までしやがって ・ ・ ・」
「人体実験 ・ ・ ・? 」
「そうだよ、お前、これを人体実験といわずになんという ・ ・ ・て、おい聞いてるか? 」
「人体実験か!」

僕は走り出していた。あの村への行き方は暇さえあればいつも頭の中でシミュレーションを繰り返していた。一旦家へ、荷物を取りに帰る。家を出ようとして、サイドテーブルの上の瓶詰めのビスケットを手に取った。ビスケットは秋の紅葉のように、真っ赤に燃えていた。近くの都市まで電車で移動し、そこでレンタカーを借りた。道が封鎖されている可能性を考えて自転車を借りた。後部に積載する。途中で峠を越える必要があるが、村へ行く以外には用のない道だから、今でも通れるかは分からないが、とにかく行くしかなかった。一刻も早く報せるしかないのだ

峠道を、タヌキかイタチかが、サッと通り抜けた。生き物がまだいることが少しだけ僕を安心させた。村まであと100キロを切ったところで、岩が崩れて道がなくなっていた。僕は、ハッチバックを開けて、自転車を取り出し、担ぎ上げる。

不安が自転車を走らせた。 ビスケットがチリチリと音を立てている気がした。

森が途切れて、コンクリートで均された平面が見えてくると、涙が止まらなかった。一段上がったところに、村は最早なかった。初めからなかったかのように、均された平面になっていた。ビスケットは跡形もなく真空に還り、


 


僕の思い出の中にだけ遺った。







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【小説】死体

なかまくらです。

たまにはらしくないものを書いてみました。

挑戦的姿勢って、大事だと思うんですよね。

なお、実体験ではありません。フィクションです(笑

それではどうぞ。

**


死体
                                                             2016.7.2
                                                             作・なかまくら

玄関のドアを開けると、誰もいないはずの暗闇に鈍い光がふたつ灯っていた。

一瞬の空白ののち、さっと照明のスイッチに手を触れると灰色の後ろ姿が奥の部屋へと走っていった。

鼠だ。我が家に鼠が入り込んでいたのだ。一体どこから、何のために。

何を齧られたのだろうか。お気に入りの洋服ダンスと踊っていたとは考えにくいが、苦労して手にいれた木彫りのキリンが齧られていては矢も楯もたまらない。さっそく確認したいところであったが、奥の部屋に入っていったあの毛のないむき出しの尻尾の生々しさにただならぬ嫌悪感を覚えて足が進まなかった。

ヒトがいる間は出てこないと、高を括って鼠トリを仕掛けて眠りにつくこともできないほどだ。それほどの嫌悪感が、この身を支配していた。

しかし、かつて幼かった頃、鼠トリにかかった哀れな鼠を眺めたことが思い出される。トリモチに四肢の自由を奪われ、ヒトが安らかな眠りを享受している一晩中を生き延びるために必死にもがいたのであろう鼠は衰弱し、小さな腹をヒクヒクとさせ、浅い呼吸を繰り返していた。

この鼠が何をしたのだろうか。はるか昔、米倉に鼠返しを取り付けた時代ならいざ知らず、ましてや、農家の人間でもないのだ。齧られたかもしれないニンジンはスーパーの見切り品であり、その一本をくれてやっても命を脅かされるわけではないのだ。

そう思うと、なんともしがたい不思議な気分が沸き起こり、玄関のすぐ近くにあるキッチンへと足が向いていた。

冷蔵庫から、賞味期限が数日だけ切れたソーセージを取り出すと、薄く輪切りに切り分ける。それから、フライパンに一枚一枚並べて置いて、少し火を入れる。香ばしい肉の匂いが仕事終わりの疲労した胃袋を痺れさせる。そのソーセージを奥の部屋から玄関のドアの外側の世界へと一定間隔で奇麗に並べた。

照明を消し、静かに外へと出る。

ドアから少し離れ、その時を待つ。すると、突然、ドタドタと争うような音が聞こえ、甲高い断末魔のような悲鳴が聞こえた。

急いで玄関まで戻るが、音はなく、こちらを窺(うかが)う鈍い光もなかった。

恐る恐る照明を点けると、玄関先に2体の鼠が転がっていて、

僕は思わず瞼を覆った。





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