1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】分子運動による表層からの脱出

名嘉 枕です。

ほにゃにゃちは~。

某ゲームっぽいタイトルで、SFっぽい物語をお送りします。

どうぞ~~。


***


分子運動による表層からの脱出

                        作・なかまくら


「根元事象とは、それ以上細かく分解して分けられない事象のことであるからして・・・」社会人を対象とした数学塾の先生は、確率がお好きだ。世界の大体のことは数学で表せるのだそうだ。「宇宙は数学という言葉で書かれている」立方体の教室の前方の黒板、その上には、墨で書かれた文字が躍っている。かの有名なガリレオガリレイの言葉だという。
「そして、全事象は、文字通り、根元事象を集めた全ての事象。事象全体のことをいうわけである。」先生は、朗朗と事象を言い尽くした。
私は宇宙の孤独な旅人になる。根元事象が、地球だとするならば、全事象は宇宙全体の惑星・・・いや、宇宙そのものだろうか。
☀☀☀
地球の平均気温が10年で10℃上がったっていうニュース番組。1年に1度。2年で2度。3年目には怒り出して、3度の飯が喉を通らないという。
「いってらっしゃい」
玄関の扉を開けて、それから銀色のフードをかぶって顔を隠すと、内側はひんやりと涼しくなっている。
「いってきます」
ガールフレンドに手を振って、秒速2メートルで歩き出す。右足、左手、右手、左足。腕が付け根を支点に振り子のように触れる。時間が一定のリズムで流れ出す。行ったり来たりにかかる時間は、腕のふり幅によらない。大きく振るほど、振動の中心の速度は速くなるからだ。振り子の原理によれば、そうらしい。
風船クラブの活動は、週に一度、自由の螺旋像の足元に集まって風船を飛ばすことだ。風船にはそれぞれのメンバーの願いが込められている。螺旋の像は捩じれて歪んだ造形をして、5メートルのあたりでぱたりと切れて閉じていた。螺旋は押し上げられた円の軌跡。三次元の極座標方程式。原点からの距離と回転角で現在地がプロットされていく。
私は螺旋像を遥か飛び越えて、飛びゆく風船を見送った。風船は境界を越えていく。
☀☀☀
全事象の一つの要素が私だとして、私は、どのような事象であるのだろうか。
「お前の仕事に価値はない!」
工場長には怒られるばかり。給料は低いわ、労働環境は最悪だわで、どうして働き続けているのかもわからないが、やめる理由も分からないので、とりあえず働き続けていた。
「今日も、こっぴどく怒られてたな」
同僚の左院がポンと肩を叩いて、大満足バーを手渡してきた。パクリ。
「大満足ぅ~!!!」
それが聞きたかったんだ、と左院は笑った。それから、急に笑いを収めてこう言った。
「これは俺の独り言だ。この言葉は上の人間の耳には届かない。地の底を這う下水に交じって、海に流れて、2000年の海洋の大循環のなかで海洋深層水になるような、そんな独り言だと思ってくれていい」
左院はそれから、脱走計画を語り出す。一斉蜂起に続いてのデモ行進。正面の通用口から堂々と外へ出て、辞職届を紙吹雪のようにばら撒くのだ。
「どうだ、ひと口のらないか?」
☀☀☀
「渋い柿でも食べましたか」
群青の制帽を目深に被った男が、公園のベンチに腰掛ける。
「すまんな・・・、柿コーラ?」ぷしゅぅ、と、プルタブの上昇とともに気圧が下がる。
「限定品っす」ぷしゅぅ、と音が続いた。「・・・それで?」若い制帽の男は、ピンと糸を張って、声を沈めた。
「うん・・・これを拾ってな」無精ひげが程よく伸びていた。
「風船、ですか」「ああ、風船クラブというそうだ」「これがなにか?」
「中にこれが入っていた」その手に載せられていたのは、小型の爆発物であった。
「爆弾っすか!?」ベンチから飛び上がった男は、笑っている無精ひげを見て、座りなおした。
「反乱分子がな・・・そろそろ動き出すんだろうさ。嫌だなー」ぼりぼりと首筋を掻いた。
「嫌だって、言わない人間が、思っていないと思ってるんでしょうかね」
「さぁてね」
☀☀☀
水を見るとドキドキすることがある。いま、閉じ込められている。この水の分子のどれか一つが自分である。H2Oは小さな脱走計画に成功し続けている。沸騰することがなくても常温で置かれたH2Oは、少しずつ蒸発して、やがてなくなる。水面からの脱走を少しずつ、目には見えない大きさで、着々と進行させているのだ。目に見えないのは、目を盗んでいるともいえる。じゃあ、とばかりに、私は目を閉じて、コップの水をぐいと飲み干した。
体の中を水が通っていく。これが、私たちの現状だ。年齢でひとかたまりにされた私たちは、変わっていくようで何も変わらない、ひとかたまりの管の中を順番に流れているだけなのだ。その管が、外へ繋がっていくことはないのだ。そう思うと、鼻の奥がツーンと痺れて涙が出た。H2Oは逃げ道をたくさん知っている。
☀☀☀
風船クラブの定例会が、脱走計画の実行日だった。
踏み出す靴を作っている間にも、温度は上がり続けていた。





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【小説】短編小説を書く前に

なかまくらです。

わくわくしたい。そうしよう。


***


短編小説を書く前に

             作・なかまくら

短編小説を書く前の僕は両極端な分身状態だ。

踊りだしそうな高揚感と、立ち止まってしまいたい心の動揺が一緒くたにやってくる。

それをなんとか、心の内でドッキングさせたまま、コンビニに寄る。さながら宇宙ステーションへのドッキングミッション。途切れればそれは、あっという間に、宇宙に還ってしまう。

コーラを2本。真っ黒い砂糖水が、僕のインクみたいなもの。

階段を一個飛ばしてそれから細かく登ってみたりしてみて、次は細かいステップ。アパートの自室を目指す。開けてあったカーテンをきつく締めて、ノートパソコンの電源ボタンをぐいと押す。無音、からのヴォーン。ファンが回り始める。カリカリと音がして、脳みそが針で引っかかれているよう。

右手の人差し指と左手の人差し指をジェイとエフに置いて構える。なんだって、構えが大事だ。構えで勝負が決まるといってもいい。思ったことをタイプする。それもワイルドに情熱的に、それでいて、冷静に訪れるラストシーンを思い浮かべるように。

少し、コーラを口に含む。しゅわしゅわと泡が弾けて消える。浮かび上がってくるアイディアを連想する。心が泡立っていく。

ワープロソフトが起動すると、社会という名前の首輪を外されたもう一人の僕が、転げまわって笑いながら、ものすごいスピードではねる。そして、画面の向こうに拡がる白紙の水平線へと遠ざかっていく。

その思い切った間取りの庭に小道具を置いていくために、僕はひとつ息をしてから、彼を追い駆ける。






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【小説】砂魚

なかまくらです。小説ばかりを更新してみたい。そんな願望がやみません(無謀

いつか戯曲化したいけれども、とりあえず小説で、

という作品。

どうぞ。


::::::::::::::::::


「砂魚」

                    作・なかまくら

外はひどい砂嵐だった。
窓には板を打ち付けている。雨戸がガタガタと音を立て、ここを開けろと主張していた。
「ひどい嵐だな」 マスターがポツリとつぶやいて、言葉は砂嵐の雑音の中に吸い込まれていった。
「ええ・・・」 僕は無意味な返答をした。



パクパク、パクパク。
「マスター」「なんだ?」「金魚が」「金魚がなんだ」「泡を吐いてるんです」「金魚だからな、泡ぐらい吐くだろう」「これって、ただの泡なんですかね」「泡だろう」「そうですかね」「泡じゃないって、そういいたげだな」「金魚がね、泡を吐き出しながら、こっちを見てるんですよ」「泡をね」「吐き出しながらですよ」「パク、パクとね」「いいえ、パクパク、そしてパクなんです」「ほう・・・」

カウンターから少し離れたほう、店の入り口の扉が軋んだ。ガタガタと、音を立てて、なんとガラリと開け放たれた。

倒れこむように入ってきた男は、つきかけた膝を手で押し戻す。山吹色のポンチョを身体に纏っていた。「やあ、まいったね」そう言って、入り口で大胆に砂を払った。
「いらっしゃい、こんな中、どちらから?」
マスターは、立てかけてあった箒と塵受けを手に取ると、砂を集めて、シューターに流した。
「・・・ええ、諸国を旅していてね。この辺りは随分と砂に塗れているんだな」
「すっかりですよ」
「ここがあって、助かった」
「それはどうも」 マスターは、にこりと笑って、男を店へ招き入れた。
「こんにちは」 僕はパクパクとしゃべった。泡が浮かび、水に押し出されて天井へと昇っていく。
彼がそれに気づく様子はなく、
「君は・・・お客さんかい」 不思議そうな顔で、男は僕をじろじろと眺めた。
「いえ、彼はうちの見習いなんですよ」 マスターの言葉はうわんうわんと水の中を振動して伝わってくる。
「随分とヒトデ不足のようで」
ヒトデの足を捥いで食べると、新しい足が生えてくるように、もがれた僕は傷ついた痛みを生やしていくことができたなら。

「ラジオをつけてもいいかな」 男は返事を聞く前に、スイッチを入れるとつまみを回した。
「すいませんね・・・ここらは、昔工場があって」
「昔? ああ、大戦前に」
「ええ・・・金属粒子が飛ぶんです。それが、天気の悪い日は帯電するみたいでね・・・。なんにも、入っては来ないんです」

「情報がなくてね。右に行ったらいいのか、左に行ったらいいのか」 男はコンパスを取り出して、ぐるぐると回る針を見せた。
「言葉の意味が目まぐるしく変わっていますからね、コンパスで旅なんて、尋常なアイディアじゃないですね」 豆から抽出された黒い成分が、香りを伴って、カップに落ちていく。ポツリ、ポツリ。

水の中に拡がっていくように感じる。染み出して、苦い言葉のままに。
「・・・ところで、ここにもあるんですよね」
男の言葉に、マスターの手がぴたりと止まった。
「なにがです」
「・・・なにって、書物ですよ」
「砂糖は?」「いえ、結構」
棚の奥から出しかけていたシュガーポットをマスターは棚に戻した。
「・・・ここは、コーヒーを楽しむところじゃあない。そんなことは分かっているんですよ」
男は靴でリズムをとって床を鳴らし始めた。カッカッ、カッカッ。
「私には必要なんだ、その言葉が。その言葉さえあれば、なんだってできる。言葉は世界に氾濫しているが、その中にはなかった。すべて砂に埋もれていった」
男のシャツの胸元が開いていた。掻き毟った跡が見えた。
「わかるだろう! もう、その言葉がなければ! ・・・ほんの一刻、生きていることさえままならない」
何かが切れたように、目は血走り、顔は青ざめていく。髪の毛は逆立ち始めると同時に、頬が垂れる。
「・・・ええ、わかりますよ」
マスターは、目を落として、カップの中の黒い水に映る自分を見ているようだった。男は人目をはばからずに、ぼりぼりと掻いた。
「・・・お客さん、お砂糖、いらないですかね?」
マスターは、もう一度尋ね、男は、「あぁ・・・」と不意に穏やかな顔になってそれを受け取った。
カチャリと、陶器の触れ合う音がして、続いて熱い息が漏れる。それが順番にラジオから流れる砂嵐に紛れて消えた。

水の中にいる僕に、砂嵐はまだ届いていなかった。







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【台本】ブツゾン

なかまくらです。

コント? です。こういうのが、もっと上手になりたいですね。






「ブツゾン」
                  作・なかまくら
                  2015.9.24



A「よいしょっと・・・、おい、しっかり持てって」
B「おお」
A「足ズッテルやないかい!」
B「まあな」
A「ほめてないわ」
B「(足を上下に動かす)」
A「喜びの表現をやめてくれ」


A「おし、そしたら、立てるぞ」
B「せーの!」

立った。

A「立つもんだな」
B「案外ね」
A「あー、これ、重かったわ」
B「仏像だからね」
A「重要だからな」
B「・・・」
A「漬物石にしなくていいから」
B「これどうするの」
A「なんも知らへんのな。これな、高く売れるんやで」
B「へぇ~、罰当たりだね」
A「・・・そういうこと言うなよ」

しばし、仏像と目が合う。

A「まった、今完全に目があっちまった!」
B「みつめあーったー、ときーからー♪」
A「うーわ、これ、うーわ!」
B「津波の様な、恋だとは~♪」
A「仏像とそんな恋してたまるか!」
B「ぼくはしにましぇん!」
A「仏像いきてないわ!」
B「本当にそうかな・・・?」
A「うっ・・・、」
B「どうする・・・」
A「ちゃうわ。アイフルじゃああるまいに」
B「チワワのように見えてきただろう~??」
A「チワワみたいな仏像にご利益ないわ」
B「じゃあ、戻してくる?」
A「だから、チワワじゃないやん、どうみても」
B「あ、いま、開眼した」
A「は?」
B「いま、ぶっちゃん、開眼してたわ」
A「仏像の事、ぶっちゃんって呼ぶのやめてくれるかな」
B「ぶっちゃけ、こいつちょっと怖いよね。ぶっちゃんって感じじゃないもんね」
A「そういうことじゃなくて」

・・・

A「あー、なんかお前が変なこと言うから、こわなってきたわ」
B「・・・」
A「ほめてないから。喜び表現しなくていいから! あー、電話やわ。ちょっと、見てて」

・・・

仏「・・・」
B「・・・こしょこしょこしょこしょ」
仏「うっひゃっひゃっひゃ・・・」
B「おい、ぶっちゃん」
仏「・・・・・・」
B「まあ、聞こえてるんだろ? 聞けよ」
仏「・・・」
B「お前は覚えてないだろうけどさ、ぶっちゃん、俺と同じ小学校だったろ。3年3組蒼梧先生が担任で。で、ぶっちゃんは、いじめっ子で、俺はいじめられっこだった」
仏「・・・ふぅー」
B「昔から、ぶっちゃんの顔は仏そっくりだった。仏顔でいじめてくるんだもんなぁ・・・参ったよ。いや、初詣は一度も行ってない。違うか」
仏「馬場辺(ばばべ)か、お前」
B「そうだよ、ぶっちゃん」
仏「まさか、お前が昨今の仏像の盗難に関わってるとはな・・・」
B「ぶっちゃんは、警察官かなにか?」
仏「・・・いや、ただのコスプレだ」
B「これ、ただのコスプレなの!? どうりで、クオリティ低いと思った!」
仏「・・・なんで、盗んだんだよ」
B「あいつ、よくわからないやつなんだ」
仏「俺は、通報するぞ」
B「・・・」

A「やー、参ったよ。先輩、今日取りに来れないって! こんばんは仏像と川の字で寝るしかないか」
B「荒木」
A「あん?」
B「これ、仏像」
A「そうだよ」
B「これ、仏像(こぶしを握って)」
A「ん?」
B「ぶつぞう!」
A「何言ってんだよお前、」

ぶっちゃんに、後ろから殴られる。

A「なん・・・マンダブ」

B「ぶっちゃん」
仏「じゃあな」
B「(2礼2拍)」
仏「ばか、それは、神社だ」


おしまい。







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【小説】世界が変わるとき

なかまくらです。

短いものですが、どうぞ。

ちょっと社会風刺的な感情が湧き上がっていて、珍しい私です。


***

「世界が変わるとき」
                   作・なかまくら


――羊を食べたオオカミは、井戸に落とされるという。
 じゃんけんでは駄目ということで、鬼ごっことなった。世界大統領を決める鬼ごっこ。世界を変える大役はガッツのある若者に任されたといっていい。マスメディアはこぞってこの様子を中継でお茶の間に届ける。鬼が世界を変えるのだ。タッチされると鬼になるのだ。
 なかなか決まらないので、モモタロウというルールが途中で追加される。モモタロウと鬼、どちらかが世界大統領に就任することが、データ放送による国民投票で決まったという。若者たちはその足を止めずに、鬼とモモタロウから逃げ続けた。新しい感覚で英雄の存在を探していた。





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