なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)
「一本増えてる」
2015.2.28
さく・なかまくら
太郎「おいおいおいおい」
二郎「どうした」
三郎「どうした」
太郎「ちょっと見てみろよ。」
二郎「こ、これは」
三郎「つ、つまり、」
二郎「するってぇと・・・?」
太郎「・・・一本増えてる。」
二郎「いやいやいやいや」
三郎「いやいやいやいや」
2人「で?」
太郎「増えてるわけ! 分かる? 増えてる」
二郎「あーはいはいはいはい。一枚、二枚、おいおい、いま何時だっけ?」
三郎「三時でやんす」
二郎「ああ、そうかい。三時でやんすか。おっと、急いで勘定せにゃあ。えーっと、四枚、五枚・・・ほい、どうぞ」
三郎「ちょっとまてぇい! 一枚足りねぇぜ!」
二郎「うわぁああああっ!」
2人「てことだろうに!」
太郎「違うんだ違うんだ。俺のことが信じられないって、そう言いたいのかっ!」
2人「うん」
太郎「なんとういうことだ。ああああっ!」
二郎「どうした」
三郎「どうした」
太郎「箸が・・・一本増えて、二本になってる」
二郎「いやいやいやいや」
三郎「いやいやいやいや」
2人「で?」
太郎「いや、この箸、片っ方どっかいっちゃって、ずっと一本だったわけ! サトイモぶっさしてたわけ!」
二郎「わかったわかった。あれだ。割り箸一本バキッ! 割り箸二本」
三郎「うわぁああああっ!」
2人「てことだろうに!」
太郎「違うんだ違うんだ。俺のことが信じられないって、そう言いたいのかっ!」
2人「うん」
太郎「なんということだなんということだ! うわぁあああっ!」
二郎「どうした」
三郎「どうした」
太郎「ボールペンが・・・一本増えてる。ここには一本しかなかったはずなのに」
二郎「いやいやいやいや」
三郎「いやいやいやいや」
二郎「いやいやいやいや」
三郎「いやいやいやいや、いや待てよ?」
二郎「どうした」
三郎「確かに、ここには、ボールペンは一本だった気がしてきたぞ・・・はっ! まさか・・・!(ショルダーバッグをがさごそする)」
太郎「どうした!」
二郎「どうした」
三郎「俺のニンジンが一本増えてる」
太郎「どうした!」
二郎「どうした!」
三郎「俺のニンジンが一本増えてる」
太郎「それは大変だ」
二郎「おい・・・お前、自分の手、よく見てみろよ。」
三郎「俺の指・・・一本増えてる(6本指の軍手をしている。最初は5本指)」
二郎「いやいやいやいや」
三郎「いやいやいやいや」
太郎「いやいやいやいや」
三郎「うわああああっ! なんということだ」
二郎「おいっ!」
太郎「どうした!」
三郎「どうした!」
二郎「本棚の本が・・・一冊増えてる・・・」
太郎「それは昨日、本屋で買ってきたんだ」
三郎「まぎらわしいわっ!」
二郎「はうっ!(下半身に手を当て)」
太郎「どうした!」
三郎「どうした!」
二郎「俺の・・・一本増えてる」
太郎「あれか!」
三郎「あれがか!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
太郎「おい、窓の外を見てみろよ!」
二郎「空が・・・」
三郎「あれはなんだ?」
太郎「地面だ。空に、もう一つの地面が」
二郎「なあ、あれってもしかすると」
三郎「もしかしなくてもそうだ。あれは、」
太郎「日本だ。日本増えてる」
おわり。
誰かしらからの手紙
2015.2.11
作・なかまくら
「ポスト、手紙着てたよ。」 珠季がリビングに運んできた手紙は奇妙なものであった。
「なんだろう?」 差出人は、『去年の』西条三間。自分の名前だった。『去年の』、というところはよく分からないが。
「変ないたずらじゃないでしょうね。白い粉とか出てこないわよね。」
「いや・・・手紙だ。」
「え?」
それは、妙に厚みのある手紙であった。数枚ではない。だが、何枚でもない。
3つ折りになっているそれを開くと、一番上の行に目が行った。
『やあ、三間。君がこの手紙を読むかどうかは、君の自由や尊厳と深く関係がある。私はそれを尊重しようと思う。YESというならば、3行目から読んでもらいたい。』
「なんだろう。」「なんなの?」珠季が覗き込んでくる。
「なによ、何も書いていないじゃない。」「え?」
そこには何も書いていないという。たしかに、こんなにはっきりと書いてあるのに、3行目とかに確かに、文字が悲痛な叫びと共に滲み出したようなインクで書かれているというのに。
『ならば、行動は、迅速に行うべきである。まずは、玄関を出るんだ。すると、4行目だ。』
「ちょっと、出かけてくる。」「どこへいくの・・・あなたちょっと変よ?」
分からない。ただ、逃れようのないものを感じて、手紙を手に席を立った。入れたての珈琲が湯気を立ち昇らせている。それにチラリと目をやり、そして、踵を返す。靴を履いて、扉を開けながら、続きを探す。4行目だ。そう、4行目に間違いない。
『玄関のドアを開けると、そこにある穴に落ちて君は死ぬだろう。』
「危ない!」
止めようもなく傾いた体に珠季がしがみついていた。サァーッと血の気が引いていた。
『・・・もしも、君にとって大切な人がいなかったら、という場合の話だ。さあ、この続きを読んでいるということは、6行目に進んでほしい。』
珠季が泣いているのが見えた。ちょうど明日で1年になる。珠季と付き合い、そして結婚してから、ちょうど1年。お互いの良いところや悪いところが見え、それでもお互いを必要として生きてきた。
「いかないで・・・」 そう言う珠季にうなずいて、その手紙を下水工事の穴に落とそうとした。しかし、捨てきれない何かを感じてしまう。何か大切なものを失ってしまう、そんな気がしてたまらないのだ。
「ここにいてほしい。必ず帰ってくるから」 そう言って、家を出た。
『自宅を出たら、まずは歩道を右に進んでいってほしい。途中で出会う犬の頭は撫でておいた方がいい。撫でるなら、8行目だ。』
その犬は、確かにいたが、恐ろしいほど大きかった。顔は胸の辺り。目はやや赤眼がかっており首輪はつけていない。オオカミだと言ってもおかしくなかった。ぬらりと濡れた歯を口から覗かせ、たいして暑くもない秋晴れの朝に舌をだらりと垂らしていた。ほかの誰にも見えないのだろうか? 見回してみたが、周りには誰もいない。恐る恐る右手を伸ばすと、伸ばした手はさも当然のように噛みつかれる。激しい痛みが走る。右手の甲を形作る骨が牙とぶつかり合う感覚があった。
『きっと噛まれるだろう。それでも無理に右手を救おうとしてはいけない。』
大型犬は首を大きく左右に振り、喰らいついた肉を獲物から引きちぎろうとしていた。
『君がするべきことは、その犬を強く抱きしめてやることだ。』
清潔な主人が飼っている、毛並みの整った犬ではなかった。べっとりとした毛はきっと虱(しらみ)だらけだろう。そういう何もかもに見ないふりをして抱きしめてみた。
『君はその犬を受容して、愛を与えてあげなければならない。それがいつか君を救うことになるはずだ。』
気が付けば、犬は跡形もなく消えていた。ただ、それが幻でなかったのを主張するように、右手にはジンジンとした痛みと噛み跡が残っていた。
『今すぐ医者に行かなければならない。その傷には治療が必要だ。まっすぐ行った先、尾久丹田の交差点を左に曲がると、安原医院がある。』
その場所には確かに、医院があった。小さな建物であった。蔦紅葉が建物に這うように纏わりつき、真っ赤に葉を色づかせていた。
『席に着くと、隣にベージュのコートの男が座ってくるかもしれない。その場合は、29行目だ。』
一枚の便箋は20行からなっており、1枚目を後ろに重ね、2枚目の9行目を探す。
『男は間違いなく話しかけてくるだろう。』
「はぁ、すみませんが、君。」 その声は、なんとなく手紙の主の声として想像しているものに合致していた。
「はい・・・?」
「私の名前は、越前真実。君の名前は?」 越前は、待合室のソファーに随分と深く沈み込んでいた。その顔は疲労に満ちていたが、目は、真実を見通す静かな光を湛えていた。
『君は偽名を名乗るべきだ。そうだな、例えば“浦野真”などと名乗るといい。』
「・・・浦野真です。」
「そうか。浦野くんか。」 越前は、少しの間を取って、そう答えた。それから、また少しの間があり、
「私はね、ある人物を追っているんだ。」「ある人物ですか」「ああ、ある人物だ。ところが彼は姿を現さない。罪を犯し、その罪に苛まれているだろう彼を、私は救ってやりたいと思うんだ。それは、私の勝手な言い分に過ぎないのかもしれないが、彼もどこかそう思っているのではないかと、思うんだよ。あるとき、不意にその失敗を思い出して辛い気分になる。動悸が早くなる。息が切れる。汗に塗(まみ)れて、身体を丸めて。・・・じっと、それが通り過ぎるのを待っている。そういう事態から、彼を救ってやりたいんだ。彼が過ごす日々に罪を償うという意味を与えてやりたいんだ。・・・どうしたんだい、浦野くん?」
「いえ・・・」
そのとき、看護婦が、名前を呼ぶ。「西条さん。西条三間さん。」
「え?」 手紙に素早く目を走らせる。
『バレてしまった場合には、素早くそこを立ち去れ! 風の如く!』
「診察は次の機会でお願いします。」 言いながら、受付に用意されていたカルテから保険証を抜き取り走りだす。
自分でも信じられないほどの速さで走り、そして、これ以上ないほど呼吸が苦しくなって足を止めた。誰も、ついてきてはいなかった。あの男・・・越前も。
『振り切れたならば、この35行目を読んでいることだろう。茂芥子4丁目を過ぎたところに、もうひとつ、医院がある。そこに向かうなら、42行目に進むといい。』
42行目に進むために、2枚目をめくろうとしていた。すると、2枚目の最後の一文が一瞬脳裏に焼き付いた。『その医者の出す珈琲には睡眠薬が入って・・・』。そして、なぜだかその行はもう繰り返し読めなかった。初めからそうであった。何かが書いてあることは分かるのだが、それを文字として読もうという集中が上手くいかないのだ。その手紙を何故だか失うことを恐ろしく思ってここまで運んできたのであった。
『そして、診察を受けるとき、“犬に噛まれた右手”を差し出しなさい。それですべてのことを医者は理解してくれるだろう。』
そして、その通りにした。
『医者は、その右手を診て、大きくうなずき、奥の診察室へと招き入れるだろう。』
医者は、優しそうな顔をしていた。看護士も温かな笑顔で送ってくれた。どこか晴れやかな気持ちで入ったその部屋は中央に丸テーブルが置かれているだけの静かな部屋であった。
「どうぞ」医者が丸テーブルに置いたグラスには、黄色い液体が注がれていた。「緑茶です。」
手紙に目を走らせると、
『その医者の出す緑茶には睡眠薬が入っているはずだ。しかし、君はこれを飲む必要がある。信じる由縁もないこの手紙を読み、ここまでたどり着いた君は、なにか、進まない時計を見ているような、それでいて進んでいく時間を眺めることしかできないような、そんな時間を過ごしていたのだろう。その日々に別れを告げ、あの日に戻りたいと思っていた。だから、ここまで来た。だから、最後にひとつ、大きな賭け事をしてほしい。』
「私の役目はね・・・」 医者は静かに口を開いた。
「分身の研究さ。顔を合わせてはならないもの。元は一つだったもの。顔を合わせずに、二人の背中を合わせることができれば、元通りになるはずさ。」
『医者は何かを言うだろう。その言葉を信じるならば52行目、信じないならば53行目を読むといい。』
そして、グラスを傾ける。
+
「ただいま。」 玄関の扉を開け、声をかける。
「おかえりなさい。」 珠季はその場所で待っていた。
あのときからずっと待っていたのか、珠季は痺れた足でよろけて転んだ。
鯨島
2014/12/26
作・なかまくら
「あの男がやってきた日のことを、今でもまだ鮮明に覚えている。」
手帳はそんな一文から始まっていた。ランプの明かりが揺れてでたらめに部屋を照らす。
背には小さなリュックを背負い、小さな丸テーブルに置かれていた本の表紙をそっとめくる。冒険家ニゲ・パッシーヌは、世界にたった一つ残された小さな島の小さな小屋でその本を見つけた。
*
『
あの男がやってきたのは、幼少時代の事である。
「ねえちゃん。」
「なに?」
「おれのイモ、いつになったら食えるかな?」
初めてイモ作りを父親から任されたとき、私は得意げな気持ちになって、毎日様子を見に行き、そして、姉はいつも私についてきてくれた。
私がちょうどその歳の頃、父達は穴を掘る画期的な道具を発明し、油掘りに忙しくなっていた。
「オイリ、そっちへ行っちゃいけないよ。」
「大丈夫だって。」
島の端は断崖絶壁になっていて、その下には、海が勢いよく流れていた。
「ねぇちゃん。どうして、海は一方向に流れるのかな?」 私はなんとなく尋ねた。
「それは、島が動いているからよ。」 姉は答えた。
「島は動くものなの? オレ達が乗ってて、こんなに重いのに?」 私がびっくりして尋ねると、
「そうよ。えっとね・・・学校で習ったの。プレートテクトニクスって、いう自然の現象なんだって。雨が降ったり、嵐が起こったりするのと同じくらい、普通に起こることなのよ。」 姉がそういうと、私はすっかり感心してしまった。
「すげぇな、ねぇちゃん物知りだ。」
「そうでもないのよ。もっといろんなことを知っている人が、この島にはたくさんいるのよ。」 姉はそこで息を潜めた。
「え、なになに?」 私は、姉の口元に耳を近づける。
「たとえば、時計屋のキブンジさん」
「ねぇちゃん、また時計屋のとこ行ってたのかよ。父さんに言われただろ、あそこへは行ってはいけないって。」
私がそういうと、姉はこういうのだった。
「オイリはまだお子ちゃまだから分からないのかなぁ・・・。いい? オイリ・・・」
姉の顔は、とても楽しそうであった。
「ダメと言われるほど、行きたくなるものなのよ」
*
「ねぇちゃん、あの時計屋、やっぱり変だよ」 帰り道で私は、姉にそう言った。
小さい頃の私は、時間を尋ねられることでお金がもらえる時計屋の仕事を胡散臭く思っていたから、時計屋を姉と一緒に訪ねたときにも、胡散臭いものを見る目で時計屋を見ていた。だから、時計屋が言うように、かつて世界には超大陸があって、それはほとんど動かない大地であって、その大地はどれくらい大きいのかというと、地の果てが見えないくらいであったとか、そんなことを言われても、胡散臭いだけで、ほとんど話は入ってこなくて、嘘をついている顔とはこういうものだと記憶しようと顔をじっと見ていた。
「あのね、オイリ。私思うの。あの人の言っていることが全部本当の事だったらって。」 幼い私には、その顔は時計屋とは違う感じの顔で、そう言っているのは嘘ではないことは分かった。
「でも、それは、夢物語だよ。やっぱり、世界にはこういう速く動く島しかないんだって。」
私がそう言ったとき、あさっての方角から声がした。
「その話、もう少し詳しく教えてくれるかな。」
知らないおじさんだった。おじさんは黄色と茶色のチェック柄のシャツを着て、ズボンはカーキ色。そして、全身濡れ鼠になっていた。
「おじさん、だれ?」
今思えば、おじさんは、私たち二人の反応を待っていたのだと分かる。
「私は、冒険家のイリー・ベアー。ちょっとお話を聞かせてほしいんだ。」
柔らかい物腰のおじさんに、私たちはいろんなことを話した。ご馳走してくれたクッキーも紅茶もその島では珍しくて、美味しかった。おじさんは私たちの話を終始にこやかに聞いていたが、父の油掘りの話になると、急に険しい顔をした。
「なんだって!? ・・・それは一体いつからやっているんだい。ああ・・・いや、すまない。それで、時計屋の場所なんだけれど・・・」
それからしばらくして、冒険家イリー・ベアーは、油掘りに反対する言動をしたとして捕まった。
「おじさん。」
姉は牢にいる冒険家イリー・ベアーにすぐに会いに行った。幼い私はそれにただくっついていた。
「ああ、君たちは何時ぞやの・・・時計屋の場所を教えてくれた子どもたちだね。」
冒険家イリー・ベアーは、痩せこけていた。明らかに精気の足りていない顔でこちらを見ていた。幼い私は思わず、言っていた。
「おじさん、死ぬの?」
冒険家イリー・ベアーは、力なく笑った。
「あるいは、そうかもしれない。大きなお世話だとは分かっていたんだが・・・、ここは君たちが思っているような場所ではない。大きな生き物の背中の上なんだよ。穴を掘って、生き物の背中の皮膚にドリルが到達してご覧。どうなると思う? たとえば、お姉ちゃん、君が頭を思いきり天井にぶつけたらどうなるね?」
「・・・びっくりして、縮こまる。」
先週、食器棚の角に頭をぶつけたのを思い出したのか、頭を押さえ、膝を抱えてしゃがみこんだ。
「そうさ。下は海だ。この鯨は海に潜るだろうね。」
「クジラ?」 私がその名を呼ぶと、
「そうさ。ここは島鯨の背中の上なのさ。私は、船という海を渡る乗り物でこの鯨までやってきたんだ。でも、冒険もここまでかもしれないね。」
「おじさんはどうして・・・」 幼い私は尋ねていた。
「どうして、嘘に命を懸けるの?」
「どうしてって・・・どうしてだろうね。嘘じゃないからじゃないかな。さあ、もう行ったほうがいい。」
そう言って、別れた。
*
夜。私は眠れなくて、起きだした。
食卓には明かりがともっていて、父達が、地図を開いて難しい話をしている。「いや、ここはもう掘りつくした。」「もっと、深く掘ったほうが・・・。」 幼い私は、そっと、家を抜け出した。犯罪なんて起きない町だったから、牢屋に番はいなかった。
「おじさん。」 私は声を潜めておじさんに声をかけた。
「どうしたんだい、こんな夜更けに。」
冒険家イリー・ベアーはびっくりした顔で、そう言った。
「おじさんは嘘つきだと思う。その大切さはオレには分からない。でも・・・」
私は、その言葉を続けた。
「命と天秤に掛けられるくらい大切なものだってことは、分かるんだ。」
*
私と姉は、書き置きを残して、家を離れた。幼い私はそれはちょっとした冒険で、すぐに戻ってこれるものと思っていたが、それは大きな間違いだった。冒険家イリー・ベアーはそれを何度も私に念押ししてくれていたが、私は聞いていなかった。
だが、今だから分かる。その冒険心が、私の命を救ってくれた。
今再び、私はこの本を残し、南へ向かおうと思う。
遠い南の果てに、まだ見ぬ大地が広がっているというのだ。
』
冒険家ニゲ・パッシーヌは、静かに本を閉じる。それから方位磁石を取り出すと、ゆっくりと背筋を伸ばし、その針の向かう先を見据えた。
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