1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】キラータイトル

2012年、超短編小説会 超短編祭参加作品。です。

お題は、「 『 ウィンター 』、『 ウォーズ 』、『 魔法 』、『 微熱 』、『 チョコ 』

 『 いつか 』、『 来た道 』、『 帰り道 』、『 風 』、『 センス 』、『 私 』

 『 幸福 』、『 質問 』、『 百者 』、『 騙り 』、『 入道雲 』

 『 騙された 』、『 誰だ 』、『 煙突 』、『 手紙 』、『 魔導 』、『 士 』

 『 今更 』、『 ながら 』、『 自己紹介 』」

から、なるべくたくさん言葉を入れて、書く。です。探してみてください。

23個入っているはずです(ひとつはひらがな)

ミステリー風・・・? です。

よかったら拍手でもください。

では、どうぞ。



***

キラータイトル
 
 
 
生きるってなんですか。夕焼けに牛乳配達の若者が鼻歌交じりに自転車をこいでいる。
長い坂道の途中で、その顔は紛れもない真剣そのもの。
真っ赤に染まった顔はまるで血みどろの戦場の衣装。
集合住宅の前でいったん降りて、牛乳を木箱に並べて入れると、少年は再び鼻歌交じりに歌いだす。
 
 

 
個性的な焦げ茶色に染まった入道雲が幸福な質問を携えていた。
 
白塗りされた建物の窓から、外の様子が見える。男はカーテンをぴしゃりと閉めて、その外とのつながりを断つと、机へと向かう。男は作家だった。羽ペンが舞い踊り、部屋の中を飛び回る。
 
決して覗いてはなりませんぞ。
 
壁には騙された魔道士たちがべたべたと張り付いて、覗き見をしている。
物語という牢獄からの解放の時を待っているのだ。
没キャラクターになったもの、モブキャラ扱いにされたもの。
怨嗟の声が自己紹介となって、男に流れ込んでいく。あふれかえった物語。
ふいに開いてもいない窓から一陣の風が通り抜ける。
はっと振り向いた、男は。
部屋に魔が差しこんで、真っ赤に染まっていった。
魔道士たちは笑いながら飛び去っていく。
まるで初めから、その瞬間を見るために集まった観客であったように、振る舞い、
我関せずと、笑っていた。
 

 
 
探偵の朝は早い。
ウィンナーバーゲンで大量に買い占めた腸詰めをフライパンにいくつかつかんで載せると、かりっと焼き上げる。外からは毎朝パン屋が、焼きたてのパンと事件を届けに来る。
 
「おい、探偵。知ってるか?」
 
パン屋はうわさ好き。街一番の情報通。
来た道を帰ろうとするとな、後ろに見たこともない煙突街が見えるんだ。
ちょこっと手紙を渡しただけで、魔法みたいにあの子たちはカップルになっちゃったんだ。
センスで仰ぐと、いい風が吹いたんだって。
 
この世界は物語にあふれている。ありふれた事件に一喜一憂し、微熱を帯びたように浮ついた気分に浮かれる沈む。燃えることもなく、消えることもなく、不完全燃焼の真実が、有毒ガスを吐き続ける。空は晴れず、石畳のストリートはよくない霧に包まれる。
 
「そうそう、聞いたか? ウォーズストリートの事件」
パン屋は、うっかり持ってきた焼きたてのパンを食べながらいう。
「ああ・・・作家の・・・殺されたっていう」
探偵はうっかりコンソメスープを出す。
 
「そうそう。依頼人を連れてきた」パン屋は、持参した舟型の精巧なクルトンをコンソメスープに浮かべながら、そう言った。
「あのぅ~」
「誰だっ!?」
「依頼人です!」
探偵の背後には礼をした依頼人が立っていた。探偵は、コンソメスープで一息つくと、
 
「私の背後に立つべからず、という紙を背中に貼った」。
 
「あのぅ~、この人は何を言っちゃってるんでしょうか?」依頼人は動揺し、
「仕方がないな」探偵は、事情を飲み込めない依頼人に、コンソメスープで一息つかせた。
 
パン屋が『この帰り道はいつか来た』という題の絵の裏にあるスイッチを押す。
 
ウィン
 
ターンテーブルが開いて、この街の地図が出てくる。
 
ついでに事件についてチョコっと尋ねたところ、こうだ。123。
五日前、ウォーズストリート4番街の一角にある集合住宅「百者之家(モモ・モノノケ)」の3Fで、作家のオオタナさんが殺されていた。
 
部屋には、鳥の羽が散乱しており、ペットの“かたりーぬ(ゲコ)”は、卵を産卵していた。
部屋には他に異常はなかった。強いて言えば、羽毛布団がずたずたに切り裂かれていたくらいだった。
 
「なんだ。オオタナさんはニワトリ人間とでも争ったのか?」探偵が聞く。
「まあ、ケッコーコケッコーな、人でしたから・・・」と、依頼人は答えた。
「君と犯人には一見接点がなさそうに思えるのだが?」探偵が調査ファイルを開く。
「最近近くのバーで小説クラブを結成したんです。そのメンバーでした。彼も、私も」
「小説クラブ?」探偵は、ターンテーブルに乗っかると、華麗なステップを披露した。
「はい。テーマを決めて小説を書くんです」テーブルは回転を始める。
「どんなテーマで?」探偵はトリプルアクセルを決めながら尋ねる。
「そ~れ~は~・・・」依頼人は目が回って、気が付くとすべては白日の下に曝されていた。
「なるほどな・・・」探偵を中心に世界は、回っていた。
「なんだか・・・個性的、ですね」依頼人は上の空にぼそっと言った。
 
**
 
 
数日が経ち、再び事件は起こる。
パン屋が扉に吸い込まれるように飛び込んできたので、探偵はパン屋と連れ立って、扉に吸い込まれるように飛び出た。扉についた鐘が普通にカランと鳴った。それからその音はお隣さんちに吸い込まれていった。
 
探偵たちは外に止めてあった車にムーンウォークで乗り込むと、エンジンをかけた。
 
“ながらっ、ながらながらながら・・・がらがらがらがら・・・”と車は虹色の排気ガスと生きてるみたいな変な音を吐き出し続けるので、
 
「おいパン屋、がらがらうるさいぞ、このポンコツ。車検に出したらどうだ!?」と探偵がいうと、
「今更新してきたとこなんですけどね~」とパン屋は、無駄にかっこよく車を発進させた。
 
 
事件が起こったのは会議室。煙突が伸びる製紙工場の隣。出版社本社、雑誌の編集会議の真っ只中であった。
ライターが無差別に一人を除いて全員殺されていた。あたりには、羽と原稿が散らばっている。
 
「編集長、いったいライター達に何があったんですか?」パン屋が編集長に詰め寄っている間に、探偵は、
「犯人は羽の生えた人物だ。この羽をDNA鑑定すれば・・・」と、考えたが、
「しまった・・・、それは今読んでるSFの中の話だった」現実と空想が区別つかなくなっていた。
 
「いえ、私はただ・・・もっと個性的で、面白いものを書け、と叱咤激励をですね・・・」
編集長がハンカチーフで汗を拭いていると、死体リストをみていたパン屋は、あることに気付いた。
「おい、探偵。これを見ろ!」
 
そのリストの中には、先日の依頼人の姿があったのだった。
「依頼人・・・守れなかったのか」
 
夜の風が吹いた。
 
 
***
 
 
彼が最後に何か伝えようと握っていた紙きれを、探偵はランプの明かりに照らされながら読んでいた。
 
それから、羽ペンをとる。
 
「この事件、巨大な何かが動いているような気がする」
探偵は引き出しを開けると、ノートを取り出し、横に置くと、手紙を書いた。
のっぺりとした文章を書く。それは誰にでも替えが効くような文章で、部分的にパーツを交換してもよいような汎用的な暗号。この暗号でも十分人を引き付けてやまないだろう。微熱を帯びた文章は人々に感染し、やがて治っていくのだろう。いつだって、そうやって人は人を喰らって生きているのだろう。
書き終えると探偵は、ひとつ息をついた。それから、ノートの端にマッチで火をつける。
 
「ここから先は、一人でいい」手紙はパン屋のおっちゃんに送られた。
 
 
 
探偵は、もうひとりでいい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

**あとがき**

犯人は、誰でしょうね^^;
 





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【小説】ハイムさんのかっこいいロッカー

なかまくらです。実験的小説的な、何かです^^;
こういうオムニバスやったら面白いかもなぁ~なんて、思ったり思ったり。

以下。



***

ハイムさんのかっこいいロッカー
作・なかまくら



今月の新刊(ファンもたじたじの最新作がズラリ!)。
 
 
☆  ハイス・クール・ロッカー
⇒ Mr.ハイスはロッカーマニア。いいロッカーを見つけると、コインを入れて鍵をかける。そんな都市伝説みたいな話。彼の死後、大富豪でもあった彼の遺産を求めて、ハイス・クール・ロッカーを探す男たちが駆け抜ける!
 
☆  ハイ・スクール・ロッカー
⇒ 誕生日に彼女からプレゼントされたのは、学校とかにありそうなスクールロッカーだった!? ろっかーに置かれていく人形たちが織り成す、ちょっと不思議なハートフルファンタジー、始まります。
 
☆  ハイスクール・ロッカー
⇒ 前川由奇奈の入学した高校には生徒の間にだけ伝わる、不思議な廃ロッカーがあった。使わなく無くなったものを入れておくと、誰かが別の使わなくなったものと交換してくれるのだ。ある日、その誰かが分からなくなって・・・。この夏一番の学園ミステリー! 開幕。
 
☆  ハイスクール・ロッカー
⇒ 伝説のロックバンドの伝説のヴォーカルが、この高校にやってくる!? Twitterでのつぶやきにファンが殺到!? なぜか対応に追われ、真偽を確かめようとする軽音部のメンバーに、彼からの着信。「え、これなくなったって」彼の伝えようとしたこととは、一体・・・?
 
☆  ハイスクール・ロッカー
⇒ スポンサーからの「ハイ」と「スクール」と「ロッカー」を入れたタイトルのドラマを作れとのお達し。青春に縁のなかった脚本家たちは、あれこれと壮絶な苦肉の策を絞り出す。「もう俺、ハイスクロールカーの方が書けそうな気がしてきた・・・」「いやいや、ハイスクリームカーの方が・・・」はたして、ドラマの台本は無事完成するのか!? ハイスクールロッカーを巡るドタバタコメディー!!
 
 
 
□■ 1月32日、発売予定 ■□
□■ 定価、言っていいか? ■□





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【小説】ヒーロー.bat

なかまくらです。いつまでもうまくいかないので、とりあえず、小説で書いちゃいました。

結構自信作。そんなにながくないので、よかったら読んでみてくださいな。

そしてそして、拍手、感想なぞ戴けたら嬉しいです^^;

いつか戯曲にしてみたいシリーズ。キャラとかもいろいろ考えてんだけどな~~。





ヒーロー.bat(バッヂ)
作・なかまくら
2012.1.16
 
 
 
『ヒーロー.batとは、一種の最適化プログラムのことである。』
 
2次元の世界で僕らはヒーローだった。
ヒーローRPG。
ネット上のウイルスを退治して回る。ぐるぐる回る。
 
その日も、いつもと同じように狩りに出た。道中。タッグを組んでいたチームのリーダー・レッドが木陰で休憩しているときに不意にぼそっと、こう言った。
 
「ヒーローなんて呪いだよ」
 
どういうコンテクストでその言葉が紡ぎだされたのかなんてどこかに剥がれ落ちてしまって、その言葉だけがレッドの最後の言葉として後にひどく残った。
そのミッションは罠で、闘いの最中、レッドのアバタープログラムは復旧できないところまでバラバラにされてしまう。
 
僕たちは、アルファベットにまで分解されてしまったプログラムコードを一生懸命に拾い集めたけれど、彼のヒーローのシンボルマークだけが残されるばかりだった。
それから、命は取り戻せないんだと気付くのに随分と時間がかかった。
 
そして、まるで、レッドの身体と同じように、僕らも何となくバラバラになってしまった。
 
 

 
 
3次元の世界で僕はヒーローになろうとした。
ヒーローになるには、ヒーローバッヂが必要だった。
一番かっこいいピンバッヂにビビッとくる。
つければ僕はヒーローになれた。
 
学校を休んでいた子にノートを届けたヒーローの僕は、その帰り道で子猫を拾う。
うちでは猫は飼えないことは分かっていたから、近くの神社で飼うことにした。学校が終わったら、給食のパンを届けに行くのだ。ある日、
 
いつものように境内へ続く階段を上っていると、上の方から声がした。
 
2つも3つも上の学年の子供たちが、猫のダンボールを取り囲んでいた。
 
「おい、俺、バクチクもってんぜ!」「おっ! 〇〇〇、マジ天才!」
「・・・からの?」「おっ!」「おっ?」「はははっ」
 
僕はピンバッヂを握りしめていた。握りしめた手は震えていた。震える手は、耳を懸命に塞いでいた。
心の中で叫んでいた。どうしてヒーローは現れないのだろう。何の罪もない子猫が非道い目に遭おうとしているのに…どうして…どうして!
 
悲鳴が塞いだ手をすり抜けて聞こえた気がして目を開けると、汗でびしょびしょになったピンバッヂが握られていた。そうか、僕が出て行かなかったら、あの子猫は救われないんだ。あの猫が救われるには、代わりに僕が非道く怖い目に遭わなければならないんだ。どうして?
 
ヒーローだから。
 
でも、
と、僕は、思う。
でも、ここで出て行ったら、僕はきっとヒーローを失ってしまう。
それは世界にいつか大怪人が現れた時に颯爽と登場するはずのヒーローをここで失ってしまうということだ。それだけは避けなくちゃいけない。だから、
 
ヒーローは、悲しんでいる暇はないんだ。ヒーローはどんなに傷ついたって、平気なふりをして、闘い続けなくちゃいけない。
 
僕が立ち上がって、階段を一歩降りた その時、
木々のざわめきの中に、
また悲鳴が聞こえた気がした。
 

 
しばらく時間が経って、ぐしゃぐしゃに畳まれてボロボロになった僕は、境内のダンボールに近づく。痛む手で涙をゴシゴシと拭くと、鞄からパンを取り出した。
 
ダンボールの中の猫は、一瞬おびえたように身構えた後、パンじゃなくて、ピンバッヂを奪って駆け出していった。
 
「お前はヒーロー失格だ。」そう言われた気がして、僕は誰もいない境内でボロボロと泣いた。
 
僕のヒーローは決して泣いたりしないのに。
 
 

 
奪われたピンバッヂはその時の僕にとって、とても大切なものだったけれど、
無くなってしまって僕は、救われたような気がしていた。
 
もし、
もし、もっと早くに駆けつけていれば、猫は僕を責めなかっただろうか?
 
今となっては誰にも分からないけれど、
 
 
おかげで僕は今、本物の勇気をもって、
 
誰かにとって本物のヒーローになろうと、
 
まだ頑張っている。
 
 
おわり。
 
 
 
 

 
 
(+)あとがき(+)
なんとなく、ヒーローについて。いつか、戯曲にしたいな。
と、思ってます。 

 





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【戯曲】じゃんけん軍隊

まあ、いわゆるショートショートです。

・・・というか、トップページの奪い合いが激しいな^^笑


じゃんけん軍隊
作・なかまくら

AB「じゃんけんぽん!」
A「グーリーコ」
AB「じゃんけんぽん!」
A「パイナツプル」
B「・・・」
A「どうした?」
B「刺激が足りないな」
A「たしかに」
B「我々軍人がたしなむものではないような内容だ」
A「もっともだ。次の遊びに変えるか?」
B「よし、軍隊式にしよう」
A「軍隊式?」
B「いくぞ」
AB「じゃんけん・・・ぽん!」

A、勝つ(チョキ)

A「え、で、俺は?」

B「チョキはな、チョップだ」
A「なるほどな」

A、チョップ。

B「ぐはぁっ!?」

B、吐血。Aの殺人チョップに驚愕する。

A「面白いな。よし、じゃんけん・・・」
B「ぽん!」
A「パーかぁ・・・。よし。パイルドライバー!」
B「のはぁっ!?」
A「いいねぇ 、ちょうし出てきたよ!」
B「ちょ、まっ・・・」


☆1 合体技

A「じゃんけんぽん!」

B、後出し気味に手をチョキからパーに変える。

A「え、おまえ、それはずるいんじゃ・・・」
B「チョークスリーパァァァアアアッ!!」
A「・・・それで、終わりか?」


DEAD END


☆2 すでに武器

A「じゃんけんぽん! あー、負けちった・・・。グーかぁ。何が・・・。おい、ちょ、まっ」

B、一旦裏にはけて、

B「グレネードランチャァァアアアア!!」
A「ぐはぁあああっ!(といいながら、ちゃっかり避ける)」


☆3 true end


A「またな!」
B「・・・」






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【小説】魔道士

なかまくらです。

一応、公開。

アニーモウトの気晴らし作品群なので、あれですが。



魔導士
 
なかまくら
 
 
 
 
―――あああああああああっ
 
乾いた空気に、唸り声に似た悲鳴が飛び散る。
感情は地平を走り抜けた後、飛沫となって空に還った。
 
「ふひっ・・・ふひひひっ」
口元が引くつくのが可笑しくなって、感情が逆向きにぐるぐると回転しだした少年―サミーが、中途半端にあがっていた手でソレを指差す。動きやすく軽量化された甲冑から、血に塗れた少女の横顔が覗いていた。ただ、それを笑っていた。
 
膝をついた少年の操っていた土人形・ゴーレムが、サミーの操る飛蜥蜴(ひとかげ)・ペドロフライに一瞬にして崩された。
 
「大丈夫だよ、ヨディス。直ぐに死にはしないさ。」サミーは、可笑しさでオカシクなりそうなのを必死にこらえて、それから、
 
そうだ!
 
と。笑っていう。
「ペドロフライの毒はねぇ・・・一時的に刺した生き物を仮死状態にするのさ。」
それからねぇ・・・
サミーは、ふひっ、と、何かを想像し恍惚の表情で、言った。
「一番毒が身体に回った瞬間に意識が戻って、一番の激痛を与えて死に至らしめるんだって!! 怖いよね~!!! 早く見てみたいなぁ~、彼女が苦しみの中に死んでいく様・・・」
 
 
少女の傍らで座り込む少年――ヨディスの中の真っ白な空白に何かが虚ろう。
それはぐらぐらと境界を揺らし、いくつも断層が生まれる。
下からは何色にもなれない矛盾が光の束となって漏れ出している。
 
・ ・ ・ ・ ・ ・ !?!?!?!?
 

 
―――あああああああああっ
 
その声は砂丘の上を往く一人の女に届いた。女は黒いローブを羽織り、
忌み嫌われる、魔導士の様相であった。
女はその歩みを止め、見下ろす。
 
子ども達がなにやら互いに魔物を召喚し、争っているようであった。近くには街があり、魔法学校の白いシンボルが見えた。
 
なんだ・・・ガキの喧嘩か
 
女は再び歩き始めようと、肩の袋を掛けなおした――その時、大地が割れる。
 
 
「おいっ、なんだよ、それ! そんなの聞いてないぞ!」
焦った金髪の少年の声。
白目を向きガクガクと痙攣する少年に、後ろから巨大な影が覆い被る、聳える顔。顔。
 
持ち上げられた砂がさらさらと落ち続けている。
頭部に続いて左腕がゆっくりと姿を現し、穴の淵を掴んだ。
あまりの巨大さに、金髪の少年は無様に後ずさる。恐怖に腰が抜けて獣のように這い回る。
 
 
女魔導士は、身体がざわつくのを感じていた。あの時と同じだ・・・!
 
恋人が殺されたあの時。
闇を追い詰めた先にいた魔導士・ヴィスコッチイ。召喚した魔物の名は、オベリスク。
対する騎士と魔法使い。成り行き上、ふたりは世界をかけて戦った。
魔導士・ヴィスコッチイは姿を消し、
魔法使いは大切な人を失った。
 
そのオベリスクが今まさにこの砂漠に顕現しようとしていた。
 
 
―――あの少年には才能がある。魔導士・ヴィスコッチイを完全に葬るだけの才能が!  恋人を蘇らせる、人知を超えた魔導の才能が!
 
 
女魔導士は走った。笑った。
砂埃を立ち上げて砂漠を駆け下りる。笑いながら。 やっと会えたね。
 
 
「おいっ、いい加減やめろよ!」
                                          サミーが泣き叫び、
 
                ペドロフライは一直線にヨディスの首元に飛びかかる。
 
 
                 “ハイファイア”
 
 
        ひどく汚く揺らぐ黒い炎がペドロフライを一瞬にして消し炭にする。
 
    サミーの驚愕に歪む顔の先で、
 
 
         女魔導士は不敵に笑っていた。
 
    肩で息をしながら、
 
     その、杖をゆるぎなく構えて。
 
  それから、こういった。
 
 
「なぜ止めるの? ・・・いいとこじゃない。」
 
 
 
 
***
 
 
気がつくと、そこは見知らぬテントの下だった。
身体中が軋みを立てていた。
 
起き上がるのをゆっくり諦めてヨディスは、三角形のテントの天井をただ眺めていた。何か大切なことを忘れている気がして、ただ眺めていた。
しばらくすると外からコトコトと、水が沸く音がして、金属が鍋をこつんと叩く音がする。
 
それからゆっくりと、穏やかなシチューの香りが入り口の方から流れてきた。
 
 
「目を覚ましたの。」
女を見た瞬間、ヨディスは固まった。
 
聞いたことがある。魔導士はヒトの生き血を収集し、儀式の方陣を描く材料にしている、と。若い、活力に溢れた血が特に好まれると。
 
「ぼ、ぼく・・・喰っても腹壊すぞ!」ヨディスは、ツバを飛ばしながら猛烈な勢いで後ずさって叫んだ。
「いやね、まるで、人が怪物か何かみたいに・・・」女魔導士はそういって、
「ヒカリよ。よろしく」名を名乗って、シチューを器に装ってくれた。
 
でも、魔導士の瞳に一瞬、暗いものが映るのを見てしまったヨディスは、
 
太らされてから、戴かれるんだ・・・っ!
 
と、ココロが沈むばかりであった。
 
 
「あの・・・どうしてぼくは・・・」ここに?
 
ヨディスはおそるおそる尋ねる。少しずつ思い出す。
サミーと戦っていた。隣には幼馴染がいて、サミーが攻撃してきて、それで、彼女が・・・
「うっ・・・」嘔吐感が襲ってきて、何かがあふれ出ようとする。そう、彼女が・・・彼女は、
 
心の中の白紙になっている部分を、何かが食い破って出てこようとする。
ソレに対してヨディスは無条件に微笑みかける。壊してしまえばいい、そんな感情。
頷いて、ヨディスは・・・、
 
「はいはい、テントの中はやめてね。」ヒカリが、持っていたスプーンを振ると、ヨディスの心臓は氷の手で鷲掴みにされたように縮こまり、おとなしくなった。
何かは急にひっこんでしまう。怯えたように。
 
 
「あんたの彼女さんは、ここよ」ヒカリはそう言って、ポーチからクリスタルを取り出す。
クリスタルの中には、あの甲冑の少女が確かに浮かんでいた。
 
――毒の進行を食い止めるためには、クリスタルにしておくしかなかったの。解毒の方法がみつかるまでは、このままにしておくといいわ。
 
誰かを守るって言うのは大変なのよ。
そのためには、強くならなくっちゃね。
 
そういってヒカリは、少し笑ってみせた。
 
 
 
ある、よく晴れた夜の思い出。
 
***
 
 
ある旅の途中。
 
金髪の少年は出会う。
 
ローブを纏った少年を中心に不思議な光が漂い、胸元のクリスタルに集まる。その光がぽとり、一滴落ちると、地に広がり、複雑な文様を紡ぎだしていく。その光が一層輝きを増し、頭部がやがて地面からむくむくと生えてくる。
 
土人形・ゴーレム。
 
砂と礫で作られた寄せ集めの土人形は穏やかな顔をして、金髪の少年の召喚した飛蜥蜴(ひとかげ)・ペドロフライと対峙する。
 
ペドロフライの羽ばたきに応じて毒の尾が怪しく揺れる。
 
金髪の少年は、舌なめずりをする。瞳だけが落ち着きなくふらふらと左右に揺れていた。
 
ローブを纏った少年は笑う。「あんたじゃあ、もうオレには勝てないさ」と。引き摺り込んだのはあんただ。だがな、オレはあの人を止めなければならない。少年は寂しそうに言った。・・・・・・雑魚に構ってる場合じゃないんだ。
 
 
ふざけるな。金髪の少年は叫び、
 
 
ペドロフライをけしかける。
 
ふわりとゴーレムの頭上まで舞い上がり、振り返る動作の隙を突いて、急降下をかける。風切り音とともに毒の尾が唸りを上げる。その先端が、少年を捉えるかに思われたその時、
 
風を薙いだ、ゴーレムの腕が音もなく代わりにそこに静止していた。
 
遅れて、遠くの崖にペドロフライのぶつかる音。
崩れる音が地に響いた。
 
 
***
 
 
ローブの少年は、ひとりそこから去ったという。
 
胸元のクリスタルを揺らしながら。
 
 
 
 
 
 
 
ーーコメントーーー
 
ファンタジーこんなに難しかったっけ(汗
という感じでした ^へ^;
とりあえず、ファンタをじーっと見るのは効果あまり期待できないようです。参考までに^^;





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