1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

「丕緒の鳥」読みました。

なかまくらです。
十二国記シリーズ、12年ぶりの新作。

「丕緒の鳥」を読みました。

4本の中編、短編から成る一冊。










「丕緒の鳥」

慶国ではかつて女王によって国が荒らされた。丕緒は、陶鵲(とうしゃく)を考える役職にあった。陶鵲(とうしゃく)というのは、華々しい見世物に近い祭事における儀式(?)。丕緒はその華々しさが相応しくないと感じていた。自分はその役目を通じて民のために為すべきことをしたいと懸命に訴える。しかし届かない思いに絶望し、丕緒は枯れてしまう。新しい陶鵲(とうしゃく)を作るように、と言われた時には、もはや何もなかった。かつての仲間すらも。そんな中で作った陶鵲(とうしゃく)に、新王は初めて応じてくれる。
思いは秘めてるくらいがちょうどいいし、そのほうが却って心に染み入る。そう思いますね。



「落照の獄」
傾きかけている国で凶悪な犯罪が起こる。死刑制度を停止している国ではあるが、彼の犯した罪は甚大であった。彼をケダモノとみなすことで、理解できないものに蓋をして、切り離そうとしているのではないか? そんな問いかけがされる。犯罪とはなんなのだろう。そんなことを考えさせられました。




「青条の蘭」
ブナの木が枯れる病気を治せる薬は弱い蘭からだけ採れた。標仲ら下級の官吏はその蘭を王のもとへ届け、国中に届けてもらうべく全力を尽くす。そして標仲は雪の中を懸命に届けようとする。ブナの異変に気付いているものは少なく、理解されない努力。そして、今にも最後の希望がついえそうな焦燥。そういったものと戦いながらただ、王に会えば何とかしてもらえるという希望に縋って、標仲は走る。
なんだか、走れメロスみたいだな、と。ラストに希望をつないだ人々に素直に感動できました。心を閉じてしまったから、周りが見えていなかったから。どうせわかってもらえないんだから。そう思った時から、助けはなくなってしまうんだろうなと。

「風信」
王様が国中の女性を国外追放にするというお触れが出てからしばらくして、彼女の家族はみんな殺された。国外へ逃げ出さず、村ぐるみで女を隠すことにしたからだ。今度はうまくやりますから、と彼女は心の中で叫ぶのだけれど、そんな声を聴いてくれる人はいない。彼女は天候を予想し、暦を作る研究所のようなところの下働きとして働き始める。研究所の男たちは俗世にはめっぽう疎い。それが彼女には腹立たしかった。そんな彼女も次第に悲惨な時間を忘れ始める。すると研究所のお膝元の街に戦火はやってくる。彼女は我を忘れたように叫ぶ。「現実を見て」と。研究所の男の一人は彼女に言う。燕が子供をたくさん作っている。新しい王様が立たれたんだ、と。
彼女にはなんだか少しイライラさせられました。目に見える範囲の事しか現実じゃないような女の子だったからでしょうか。でも、それは、普段の自分の事でもあるのでしょうね、きっと。





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「新世界より」 読みました。

なかまくらです。

「新世界より」 読みました。

現在、アニメが放映されており、それが面白そうで、ところが息切れしてきてるので(苦笑)、

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これは、原作を読もう、と。文庫化されていた(上)(中)(下)巻を一気読み。

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あらすじ

渡辺早季は神栖66町に生まれた。

人類はPK能力(サイコキネシス能力)を獲得しており、

十才を過ぎる頃から”祝霊”が訪れ、祝霊が訪れた子供は全人学級に移っていく。

早季の”祝霊”は遅く、クラスで最後から2番目になって、ようやく訪れたのだった。

全人学級では、PK能力の能力訓練とともに、前の学校と同じように道徳教育が徹底されていた。

神栖66町を囲うように張られた八丁標(はっちょうじめ)の外側には、

人を殺すことを厭わない悪鬼、そして恐ろしい能力を持つ業魔がいると。

早季らは学校の行事の一環として夏季キャンプに出掛ける。

それは、普段絶対に出られない八丁標の外に出られるイベントであった。

そこで、彼らは、ミノシロモドキという生物の姿を模した旧科学技術文明の残した

現在の人類の真実を知ってしまう。

PK能力者と非PK能力者の戦争。

そして、人が人を殺せないようにと遺伝子に組み込まれた

「攻撃抑制」と「愧死機構(きしきこう)」というシステム。

そして、神栖66町にPK能力者しかいないという事実が示唆する、「不適格者の処分」という可能性。

彼らは大人たちによって記憶のどこかに封じ込められてしまった級友の姿をなんとなく感じていた。

そして、それを知ってしまった早季らも、無事では済まないはずだった。

しかし、バケネズミと呼ばれる、人間が使役するために改良したネズミの抗争の最中、

早季らの運命は変わる。早季らが真実を知ったということを知る人物は道中で死に、

バケネズミとの協力を経て、早季らは無事にキャンプから生還する。

しかし、事態はそのままでは終わらなかった。

キャンプに一緒に行った一人は、業魔となり、

一人は、不適格者として「処分」されそうになり、郷を脱走する。

さらにそれについて、彼の恋人が郷から消えた。

夏季キャンプにいった仲間たちが次々といなくなっていったのだった。

それから時は流れ、

早季は全人学級を卒業し、保健所の異類管理課というところで働いていた。

そして、夏祭りの夜、人間に忠実だったバケネズミの巨大なグループのひとつが、

人類に対する反逆を開始したのだった。

しかも、あろうことかバケネズミは人を殺すことのできる

悪鬼(攻撃抑制・愧死機構を備えていない人間)を従えていたのだ。

バケネズミの巧みな戦術も功を奏し、

神栖66町の人々は悪鬼を攻撃できないまま、一方的に殺されていった。

早季と覚、二人だけ残った夏季キャンプの仲間は、

かつて、PK能力者と非PK能力者が戦争をしていた時代、

非PK能力者がPK能力者を殺すために作り出した細菌兵器を手に入れるため、

人間に忠実なグループのバケネズミの生き残りである奇狼丸に案内を頼み、

死の土地、東京へと踏み込むのだった。悪鬼は彼らを追ってくる。

死の鬼ごっこが続き、早季らは細菌兵器を手に入れる。

早季らは、東京を、悪鬼との決戦の場所として最後の対決に臨むことになるのだった・・・!


 

とまあ、1500頁くらいありますので、もう、重厚。非常に重厚。

2008年、第29回日本SF大賞受賞作品でもあるそうです。

で、もうね、面白い。抜群に面白い。

ドキドキわくわくの連続。主人公の悲しみ、焦り、疲労、そんなものが伝わってくるようでした。

ページをめくる手の汗で、どのページも少し縒(よ)れてしまったよ...!

郷の生活の微妙な違和感とそれに伴う緊張感が、私にページをめくらせ、

気が付いたら、「新世界より」の世界観にどっぷり浸かっていました。

その世界観に魅力を与えた中核となっていたのは、

PK能力者の設定と、バケネズミをはじめとする進化の進んだ野生動物の描写でした。

「攻撃抑制」と「愧死機構(きしきこう)」という、

PK能力者が同胞である人間を殺すことを阻むシステムのうち、「攻撃抑制」については

オオカミなど、高い攻撃力を有する動物に実際に備わっているものであるそうです。

人間も、いまや、高い攻撃力を持っているといっていい。

しかし、そうやって人が人を殺さないことは、全うなことなのだろうか、

この作品は私たちに、そんな疑問を投げかけてきます。

また、不適格者の処分や、バケネズミに対する人間の行動は人種差別や戦争などといった

重いテーマでもありました。

生命の生存、そしてその権利というものは考えてもそう簡単に結論が出るものではないのですが、

文庫版の表紙にプリントされた作物の耕作地や、野山の風景、

そして、タイトルにもなっているドヴォルザークの「新世界より」から、

繰り返し描写される「家路」。そのメロディーは、何か、原風景のようなものを私の中に湧き上がらせ、

それは、1000年後にも変わらず続く、日毎の生命の営みを感じさせ、

正体のわからない感動を私に与えるものでした。

とにかく、

面白い作品でした!!

 

 

 





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イチゴミルク ビターデイズ  読みました。

なかまくらです。

 

壁井ユカコさんの「イチゴミルク ビターデイズ」を読みました。

 

あらすじ

主人公の千種(ちぐさ)は東京に出てきた普通のOL。その家に、高校の同級生だった古池鞠子が3000万と一緒に飛び込んでくる。

「強盗殺人したの、匿って」 そう言って二人はなし崩しに一緒に暮らしだす。

千種とは付き合ったり別れたりの腐れ縁の都丸もときどき顔を出す。

千種は、けれども、高校3年のある季節のことを思い出していた。その時を境に、古池鞠子と千種は卒業まで口を利かなかった。なのに、なぜ今更なんだろう。

鞠子も都丸も子供のように奔放で、振り回されながら、千種は社会人として毎日働いていた。

 

みたいな感じです。

ふうむ。読みやすいです。テーマもわかりやすいし。

こないだ読んだ サマーサイダーより読みやすかったかな。

異色作? うん、異色作、かなぁ??

魅力的なキャラクターにぐいぐい読まされました。面白かったです。






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残穢 読みました。

なかまくらです。

 

小野不由美さんの「残穢」を読みました。

 

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あらすじ

ある時、仕事柄、怪談を蒐集している「私」のもとに、一通の手紙が来た。

久保さん、というその人は、

マンションの和室の間から、布が畳をするような音がして気になる、

という内容であった。

その音は、久保さんが和室に背中を向けているときにだけするそうだ。

ある日、久保さんは、音の後に鮮やかな帯が畳を滑っていくのを見てしまい・・・

そして、

というような、お話。

ホラー・・・です。なんというか、リングとか、呪怨とか、そういう、

伝染る系をバニック系にせずに、現代伝承奇譚風にしたような、そんな感じでした。

淡々とした語り口で進む中、

何度か、ぞくぞくぞくっ…、とさせられました。怖いよ~。

展開もそんなに盛り上がらないけれど、しらみつぶしに場合を潰して行く中で、徐々に怪異と呼ばれていたものが明かになっていきます。

怪異が繋がり始めると、まるで遠い世界とは思えない迫真のリアリティでもって、迫ってきます。

人物が多すぎて把握しきれなくなりましたが、あまり関係なかったです。


楽しめました。

 

そして、もひとつ、思ったこと。小野不由美さんの作だから、手に取った、という感じもある本書。

うっ・・・ホラー・・・9年ぶりの新刊・・・でもホラー・・・死屍は・・・なんとか読みきったし、大丈夫、かな??

というくらいにはホラーが苦手な私。

だって、わざわざ怖いと分かっていながら、読むんですよ。どんんだけ、どMなんすか?

・・・というわけで、ホラーが好きな人は、どMか、

登場人物が怖がるのを楽しむどSに分類されるんではないかと思いました。






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サマーサイダー 読みました。

なかまくらです。

「サマーサイダー」 壁井ユカコ 著  を読みました。

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あらすじ

去年まで通っていた中学校は廃校になった。

体育館の物品を寄付するだとか何とかで、去年まで通っていた中学生は夏休みにその手伝いに召集されることに。

とはいえ、ボランティアでそんなことに集まるわけもなく、

集まったのは、幼なじみの3人の少年少女。

少女は、ちょうど一年前、去年の夏、廃校になる高校にきた新任の教師のことを思い出していた。

 

みたいな、そんなお話。

セミの鳴く季節によく似合ったお話でした。この作家さんが好きで、追いかけてるんですが、最近はちょっとなかなか手を出せなくて、買ったはいいものの、積まれていました。

3人はそれぞれすごく魅力的な個性があって、揺れ動く気持ちが丁寧に描かれていて、素敵でした。

先生もまた、セミに執着するヘンな人間という、ちょっと不気味な個性。

その執着が、だんだんファンタジックにも、ホラーじみてきて、

不気味な印象でした。

 

まあ、なんというか、ひと夏の思いで、という感じのライトな青春ファンタジーでした。

ちょっとクセのある、中学生の課題図書くらいな感じ?

この作家さんの個人的に好きなところである登場人物のぶっきらぼうで思いを伝えないすれ違いのもどかしさだとか、なんか、じめじめしたところとか、そういうのは堪能できたのですが、リアリティのある世界でやってしまうと、ちょっと日本風の湿度の高さがちょっと辛くなっちゃった感も。という感じでした。

まあまあでした。

 






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