1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

「終わりのない」観ました。

なかまくらです。

「終わりのない」観てきました。@世田谷パブリックシアター(11/11観劇)



28連勤のさなか、平日の午後、年休で少しだけ早く仕事を抜け出し、

東京まで行ってきました!

イキウメの作・演出の前川知大が新作を上演するというので、これは行くしかない、と。

感想を書くのがこんなにも遅くなったのは、仕事が忙しかったこともありますが、

それだけではないのです。

観ている時の感想・・・「あちゃー、これはやっちまった! 面白くないぞ・・・。」

今の感想・・・「なんだこれ、・・・なんなんだ、これ。」

さて、あらすじです。

すごい父親とすごい母親の間に生まれた悠理は、引きこもりになった。

将来の夢もなく、学校にもいかない。

心配してくれる幼馴染もいつの間にか、自分の進路のことを考えている。

悠理を心配した両親は、幼馴染も誘ってキャンプに出掛ける。

そこで、悠理は湖に潜り、おぼれてしまう。

おぼれて、気が付くと、宇宙船の中だった。地球は滅び、新しい星を探しているという。

ユーリは、調査隊のクルーの一人だという。

しかし、ユーリには、地球での記憶がはっきりとあるのだ。

アンドロイドのダンや、仲間だという男たちから話を聞くうちに、

オリジナルのユーリは惑星調査の最中に死亡し、今のユーリの肉体はクローンだということが

わかる。そのクローンに、おぼれて意識を失った悠理が入り込んだのだと推測に過ぎないが。

何体目かのクローンのユーリは、混乱をきたし、宇宙空間に排出処分される。

ユーリはどこかの惑星で目を覚ます。

そこには、無意識の集合体のような人型の生命たちが暮らしていた。

そして、かつてそこにたどり着いた、地球人が一人、暮らしていた。

地球人は、かつて、生命の暮らせる星を探して、ここまで来たのだが、帰れなくなってしまった。

意識だけで行き来ができるユーリに、自分のたどり着いたことを誰かに伝えてほしい、

と願う。ユーリは、原住民の戦いに巻き込まれてしまう・・・。

その世界を行き来するうちに、悠理は、人類が迎えるだろう様々な未来を感じる。

そして、自分の両親が自分勝手に決めてやろうとしてきたこと、やろうとしていることの

意味が分かる。

キャンプ場に戻った悠理は、一緒にキャンプに来てくれた皆を励ます。


・・・というお話でした。

つまり、よくわからない。話としてはそういうことなんでしょうが、

つまり、どういうことだったか、と言われると、よくわからない。

自分の生き方に悩む悠理が成長する物語でいいのか、と言われると、

そうではないと思う・・・というか、

前川さんだからこそ、そうではないのではないか、という期待がある。

では、何なのか。

この物語は、ホメロスの抒情詩「オデュッセイア」を下地にしたそうです。

オデュッセイアは、ギリシャの4大悲劇よりも前の時代の戯曲で、

英雄オデュッセイアが、戦に行き、帰ってくる話です。

この物語も悠理がキャンプ場からスタートし、未来の宇宙をめぐり、帰ってくる話。

ん?

けれども、それよりも興味深いのは、

ホメロスが書いた2作「イリアス」と「オデュッセイア」で、

まったく作風が異なるそうなのです。

アメリカの心理学者がとんでもない学説を提唱していて、

その2作の期間のころに、人間にしっかりとした意識が生まれたのではないか、

だから、作品が変わってしまった、というのです。

それまでの人類は神と近しい存在であり、無意識の部分で神とつながる生き物だった、と。

本当かどうかはわかりませんが、そう聞いてから改めて振り返ると、

ユーリの意識が旅をした無意識の集合体のような生物は、

人類にとっての過去ともいえるのではないか、と思えてくるのです。

そして、無意識でつながってしまった時代や場所の異なる何人ものユーリたちを

行き来する悠理は、また、発達していない人を暗喩しているのでは?

そして、私たちの無意識の部分では、私たちはさまざまな時代の私たちと

つながっていて、その経験を私たちは無意識のうちにしているのではないかと、

そんな風に思うのです。

けれども、無意識だから、うまく意識することはできない。

このお芝居をどこか、納得しようとしている自分と、けれども、

なんだかこじつけのようで納得できない自分が、せめぎあうようで、

うまく、面白い、とは言い難い、よくわからない、というのが正解のような、

そんな不思議なお芝居でした。

おわり。







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「ギフト」観ました。

なかまくらです。

第26回菜の花舞台「ギフト」を観てきました。

俳優の橋爪功さんが毎年、伊豆市土肥に公演に来てくださるというイベントだそうです。

今年は「ギフト」という作で、2年くらい前に、雨で中止になったときの演目の再演

ということのようです。

どんなお話だったか。

社会が疲弊し、お芝居の興行を隠れ蓑に、拾ってきた子どもたちに盗みをさせて、

その収入で暮らす男ファースがいた。

子どもたちは、いつもおなかをすかせてはいたが、逞しく生きていた。

そのリーダー格のジンクスは、お金をただ盗むだけではなく、弱者には施しをするような、

義賊のようなポリシーを持っていた。

あるとき、街に作家を名乗るカルロという男が現れる。男は、自由や希望を説いたり、

本を書いたりして、街に変革をもたらそうとしていた。

それを恐れた警察は、カルロに指名手配をかける。

カルロは、ジンクスの亡き母が遺したお金を渡し、ジンクスに言う。

物語の結末は、自分でつくるものだ。

そう言って、ジンクスの読みたかった本の最後のページを破り捨てる。

ファースは誘拐の容疑で捕まり、母を亡くしたジンクスはカルロの言葉を受け、

まっとうに生きると決めて、街を出た。

とある仲間はジンクスと一緒にどこか遠くへ行った。

とある仲間は、本当の母親に出会えて、引き取られていった。

とある仲間は、芝居の実力を見込まれて、今では話題になっているらしい。

残されたファーマは、寂しく過ごすのだった。


みたいな、お話でした。

良く構成された見応えのあるお芝居でした。

あっという間に時間が経ってしまいました。

子どもたちに働かせていたファーマもいい男ではないのでしょうが、

引っ込み思案で役に立たない子も面倒を見るし、

母親が捨てたジンクスも立派に育てたりと、

子ども思いのいいやつ、という側面がちゃんと描かれていて、

憎めない人物、という感じでした。

子どもたちそれぞれの成長もあり、とても素敵なお芝居でした。

おわり。





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2018年観劇の記録

なかまくらです。

2018年も演劇を観ました。


第42回静岡県高等学校演劇研究大会(2日目)観てきました。

  ・ 『遠い声』


  ・ 『暮れないマーチ』


  ・ 『age17@h30.com』


  ・ 『天国(うえ)を向いて歩こう』


  ・ 『硬貨が落ちた隙間の向こう』


「ゲゲゲの先生へ」観てきました。


「しんしゃく源氏物語」観ました。



ちょっと数は少なかったですが、やっぱり演劇はいいですね。

楽しいものもいいですけれど、

真に心を揺らしてくれるのは、演劇だなぁ、と思うのです。

目の前で感情が動き、引きずられるように、自分の心も動く。

そんな共感的な体験ができる稀有な場だな、と思うのです。

やっぱり、イキウメの前川さんの舞台「ゲゲゲの先生へ」は抜群に面白かったです。

現実と虚構の世界が融けてまじりあっていくような錯覚に感嘆したものです。

また、「age17@h30.com」は、静岡城北高校演劇部の作ですが、平成の終わりと

その時代に生きている自分たちを見つめる、その時、自分たちにしかない感覚を

見せてくれた良作でした。

そんな2018年でした。2019年もお芝居を観に行きたいですね。





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第42回静岡県高等学校演劇研究大会(2日目)観てきました。

なかまくらです。

第42回静岡県高等学校演劇研究大会(2日目)を観てきました。

伊豆からのお出かけで、寝坊したこともあり、韮山高校の舞台(5分遅刻)からの観劇でした。

ざっと、それぞれの感想を。

韮山高校『遠い声』
家出をして、田舎にやってきた女子高生が、久しぶりに父親の実家で過ごすお話。お盆なので、死んでいた人が帰ってきたり、キツネ(?)の2人組がいたずらに現れたりする。実は主人公の女子高生は、再婚のお母さんとうまくいかず、黙って出てきてしまっていたので、いよいよ見つかってしまう。初めは電話越しにお父さんと口論し、強い口調になってしまったけれども、親戚のさっちゃんにも怒られて、おばあちゃんの死んだ友人とも話して、それで家に帰ろう、と思うお話。

すごい起伏があるわけではなく、なにか、抜群のきっかけがあるわけでもないのですが、なんとなく最後の結末を受け入れられるような気になるお話でした。いい脚本でした。調べてみると、山梨の高校の演劇部の先生でしょうか・・・(?)。役者さんは、メインの人間の2人がちょっと声が小さかったのと、早口で聞き取りにくかったのがもったいなかったかな、と思いました。いい声してるし、小さい声でもいいお芝居は上手なんですが、大きな声のほうがいいところで、大きな声が出てなかったかなぁと。おばあちゃんの友人さんの独白は突然でしたが、あれは、なかなか良かったですね。キツネ二人は、物語の装置ですよねぇ・・・あの雰囲気のなかでどう生きるか、難しい役どころだなって思いました。もうちょっと観客を笑わせられたらよかったのでしょうね。全体。安定していたけれども、パンチに欠けるのかな? という感じでした。まあ、普通に良かったです。


静岡理工科大学星陵高等学校『暮れないマーチ』
最初のシーンのストップモーションの個性の豊かさが素晴らしいと思いました。これは島根の演劇部顧問の先生の作のようです。お盆に、死んでしまったサキオがユキオのもとにやってきて、ユキオの友達と一緒に遊ぶが、子ども特有の無邪気さでカブトムシやアリを殺してしまうことをきっかけに、サキオが、命の大切さについて問いかける。そんなお話でした。最初と最後のシーンと、間の劇がいまいちマッチしていない気がしました。どちらかというと、本編の子供たちのお話は、狂気じみているな、と感じられてしまいました。サキオがなんで?と迫るシーンは、迫真の演技だったと思います。ユキオもいいキャラでした。ただ、個人的な好みの問題なんでしょうね。別れのシーンも、最初と最後のシーンも、とってつけたような感じがして、あまり入り込めませんでした。あ、あとは舞台装置の木がすごかったですね。


静岡城北高等学校『age17@h30.com』
ええっと、すごかったです。ストーリーを説明するのは難しいのですが、平成を振り返る話だったかな、というお話。狭い場所から始まって、だんだんと芝居とともに、フロアが広がっていって、それぞれの人生とか、いま好きなこととか、紹介していく間に、平成が進んで、時代が進んで、自分たちの時間も進んで。それで、平成が終わるまでの話でした。それぞれが独白をしていって、それが見せ場になっていて、どの役も主人公だし、みんな上手だし、魅力的に見えるし、というなかなかに、やられたぁーー! という感じでした。関東大会に出場するようですし、こういうのが、まじめな顔した審査員に、「これだよ、これ」と評価されちゃうところもとても演劇の面白いところだと思います。途中、ちょっと独白がラッシュで来たあたりで若干ダレました・・・。なんだろう、高校生の生活がこれ以上振り切れたりはしないのはわかるのですが、エピソードの類似性が高くなるとしんどいんだな、と思うのでした。あと、時間、ちょっとオーバーしませんでした? 途中から気になってしまいました。なんだか、柴幸男さんのお芝居を見たみたいな気分になりました。とにかく、これは面白かったです。観れてよかったです。ただ、まっとうにストーリー物をやっている高校さんがいるからこそ、栄えるといういうことをお互いに忘れないでいたいな、と思うのです。



三島南高等学校『天国(うえ)を向いて歩こう』
はい、きましたよ、問題作。自殺をしようという呼びかけで集まった5人だったが、ひとり、またひとりとやっぱり今日は死にたくないかなぁ、と思った矢先に、一人は首つりをし、残りは拳銃で撃ち殺されて終わり、という話でした。なんというか、辛い・・・。これ、前にも見たんですが、演劇だからと言って、人を簡単に殺さないでほしいな、と思います。どの脚本にしようか悩んで、それでどうしてもこれだったというのが、これを選びたくなる心情というものを感じてしまい、とても苦しいな、と思います。演技は結構上手だと思いますし、セットもよくできていましたが、結末を知っているせいか、あまり集中できずに観てました。ごめんなさい。



磐田東高等学校『硬貨が落ちた隙間の向こう』
すごく素直に心に入ってくるお話でした。自販機の下の隙間に落とした500円玉を拾おうとしているうちに、廃部の決まった演劇部部長といじめられてサッカー部をやめてそれでもいじめられ続けている男の子が、ちょっと学校生活で支えとなる友人を見つける話でした。まず、こんなに後姿をお芝居で見る日が来るとは・・・!! という感じでした。1/4くらいは、後姿を見ていたんじゃなかろうか・・・(笑)。生徒創作の戯曲ということでしたが、伝えたいことをうまく台詞にできているんだろうな、と思う出来でした。前半ちょっと物語が進まな過ぎて辛かったのが、もうちょっとかな、というのと、もう少し動きがあると良かったのかな、というくらいで、個人的にはすごく好きな作品でした。


はい。

来年も観に行きたいですが、来年は転勤かなぁ・・・?

とりあえず、今度はうちの部活動の県大会です! 頑張ります~。おわり。





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「ゲゲゲの先生へ」観てきました。

なかまくらです。

「ゲゲゲの先生へ」を観てきました。



東京芸術劇場での公演でした。

どうしよーかなー、仕事あるし、観に行けるかなぁ~~としばらくの逡巡の間に、

土日のチケットは売り切れ! 平日に早退して観に行きました!!

主演は佐々木蔵之介。周りも豪華な俳優陣と、イキウメのおなじみのメンバー。

さて、どうかな~~、とわくわくしながら観に行きました。

あらすじ

根津という男は、ある時を境に、スリや詐欺をして、

生計を立てるようになっていた。あるとき、へまをやらかして、

田舎にやってくる。そこでおばあさんを騙そうとしたところ、

魂下しを食わされ、魂を食われそうになってしまう。

幸運が重なり、生き永らえたが、

ひとならざるものが見えるようになってしまい、

本人も半分ひとではなくなってしまった。

それから随分と時間がたって、

都会では、子供が生まれなくなっていた。

少ないながら生まれないことはないのだが、

生まれたときから、ふがふがというばかりで、

まるで魂が入っていないかのようであった。

そんな都会から逃げてきた若い夫婦は根津に出会う。

根津は、自分の半生を語るのだった。

妖怪たちがいた日々、田舎から人が減り、

妖怪たちが姿を消していったこと。たった一人、残されたこと。

やがて追手がやってくる。

都会では、コケカキイキイという怪物が暴れているらしい。

銃で撃っても死なないばかりか、地面を揺らし、とんでもない力を持っている。

どうしてこんなことになってしまっているのか。

市長と医者と警察は、自分たちの地位と利益を守るために、

結託していたが、コケカキイキイと根津に懲らしめられてしまう。

若い夫婦は、その、田舎のボロ屋に住むことにする。

根津たち妖怪は、いつの間にか消えていた。


そんなお話でした。

佐々木蔵之介、すごい役者さんでした!

空気感が素晴らしい。肩ひじを張らず、風格がありどっしりと構えている。

あとは、白石加代子さんが素晴らしい!

他の役者さんもうまいのですが、最初の登場シーン、

今にも死にそうなおばばとして登場する白石さん。

ところが、底知れない何かを滲み出し始めたあたりから、もう、そのシーンは、

全部持っていきましたよね。

芝居を長く続けるってたぶんこうなるってことなんだと思いました。


タイトルにある通り、この物語は、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげるの

ことを題材にしたお芝居でした。

そのため、ストーリーの中で、水木しげるの作品がいくつか登場しました。

「コケカキイキイ」「錬金術」「丸い輪の世界」の3編だったようです。

すると、今まで前川さんの作品ではなかったような展開が起こって、

驚いたり、それが真新しくて面白かったりするのでした。

それと同時に、どこかほの暗いといいますか、

どこからでも妖怪が出てきそうな、そんな雰囲気が舞台にありました。

さらに、この空気感というやつがすごく作られていて、

根津の語り口を中心に、役者全員で作っていたな、と思います。

妖怪が出るパート、若い夫婦を中心とした人間のパート。

始めはこの2つのパートで始まるのですが、

ところが、だんだんこの二つが、近づいてきて、

後半は混然一体となって、妖怪の世界に引き込まれてしまいそうな、

あるいは、妖怪というのは実在するんじゃないかって、

そんな錯覚に陥るような、

そんな素敵な体験ができました。

演劇っていいなぁ、と改めて面白さを実感するお芝居でした。

おわり。





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