なかまくらです。
「白銀の墟 玄の月 第三巻」 十二国記 読みました。
ネタバレ注意。
なんと18年ぶりの続きの刊行となった十二国記。
今作は、戴国の物語。
戴国は、戴王・驍宗が阿選の謀反によって、行方不明になっており、
元将軍の李斎と泰麒による驍宗の捜索が続いていた。
しかし、ようやくたどり着いた驍宗と思われた武人は既に亡くなっていたのだった・・・。
***ここまでが2巻(先月)***
さて。
泰麒は、きっぱりと言い切る。「驍宗様が王です」
阿選の麾下だった恵棟は、泰麒の命を受けて瑞州候となった。
泰麒は、一向に動かない朝廷に焦りを募らせ、ついに阿選の寝室へと乗り込むことにした。
昔、幼いころに歩き回った抜け道を活かして、阿選へとたどり着く。
阿選は、政に出てこなかった。
王位を簒奪しておきながら、政をしないのは何故だったのか。
妖魔を操り、王宮を支配し、それでも政にすぐに飽いてしまったのは何故だったのか。
阿選は、比べられるのが苦しくなったのだ。
将軍として功を競い合った驍宗と阿選であったが、傾く国の王の苛烈な命令に対して、
驍宗は、不意にそこからいなくなってしまう。
王になるべく、麒麟にお目通りを願いに行くときにも、阿選は動かず、驍宗は動いた。
並び立っていたはずの二雄は、どちらかが影とならざるを得ず、それは決してしまったのだった。
その比べられ続けることに、阿選は耐えられなかったのだった。
だから、別段、政をしたかったわけではなかったのだ。
ただ、琅燦は、麒麟が王を選ぶのは王の気を感じるのだから、周囲からも似た人物と言われていた
阿選と驍宗が並び立っていたら、麒麟がどちらを選んだかはわからない、というのだった。
だからこそ、新王・阿選はあり得る。というのだ。
そして、阿選はとうとう、泰麒に王になるための儀式、誓約をさせるのだった。
泰麒は、幽閉されていると思われる人物を救うために再び居室を抜け出す。
その人物は、正頼であった。正頼は、国の財を管理する証書を持ち出し、隠していたため、
ひどい拷問を受けていた。彼の伝言を受け、項梁は、泰麒のそばを離れることになるのだった。
李斎らは、驍宗を探し続けていた。
それと同時に、もしかすると、自分達の主公は死んでしまったのではないかということ、
それゆえに阿選が本当に新王として選ばれ、
自分たちはその王を殺そうとする立場に入れ替わってしまったのではないか、と思い悩む。
けれども、李斎はこう答える。「それをしたい気持ちはあるが、驍宗様はそれを望まないだろう」
李斎は驍宗の麾下なのだ。麾下は、ただの兵士ではなく、
それが間違っていたとしても、進言をし、それでも思いが変わらないのであればそれを為すのだ。
そういう生き方なのだ。
李斎らは、一縷の望みをかけて、行方が分からなくなった函養山を抜け出す最も険しい道を調べた。
その先で、李斎らは、生き延びていたかつての仲間に出会えたが、驍宗の行方は完全にわからなくなってしまった。
兵は揃いつつあった。あとは驍宗様さえ、いてくれれば・・・。
そして、李斎らは、ひとつの可能性に行き当たる。驍宗様はそもそも函養山の中に閉じ込められている。
落盤によって出てこられないのだ・・・という結論に。
阿選という人物は、なんと凡人なんでしょうね。
同じことをしても、そこに優劣がついてしまう。あいつには敵わない。
誰しも、そういう挫折を経験して大人になるのだと思いますが、
阿選はそれよりは優れていたゆえに、そこまでの大きな挫折をせずに生きてきてしまったということなのでしょう。
あいつさえいなければ、ということはありますが、そのときに、普通は逃げるしかない。
そこで、一歩を踏み出してしまったのは、琅燦というイレギュラーな存在があったからのように思います。
真っ正直な男が、巧みに絡めとられてしまったような、そんな悲哀を阿選に感じました。
一方、泰麒は驚くほどの成長。李斎の成長も見られた三巻では、もしかして、やっぱり李斎様の新王もあるかなぁ、
と正直思いながら読んでいましたが、無理じゃないかなぁ・・・笑
李斎様ではもう泰麒を生かし切れないのではなかろうか?
最後、四巻の表紙が阿選なのが、妙に心配なのですが・・・
驍宗様、無事に救い出されることを願います。