1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】うまくいかない

なかまくらです。

ふざけたやつがブームです。


どうぞ。



「うまくいかない」


                      作・なかまくら


ぼうぜんと立ち尽くした。
ドン、と右手に持っていたビジネスカバンがフローリングの床に落ちた音がして、信じられない光景の中に、家内の顔が見えた。その顔がみるみると歪んでいった。
「ごべんな゛ざぁぁ゛っぁあ゛あ゛あい゛」 彼女は白いワンピースをジタジタとした赤い血で染め、その口元も道化師のような赤色に塗れており、最早、恐怖しかなかった。
後ずさろうとする気持ちが尻餅だけをつかせて、お尻が床を打った。下の階の木下さんから、またクレームが入るかもしれないが、そのとき、私はこの世にいないかもしれなかった。
その間にも、私の好きなちょっとふっくらとした手足を巧みに使って4足でこちらに真っ直ぐと進んでくるのだ。爪が立っているのか、フローリングにかりかりという音が立ち、本人はなかなか進まない。こちらを見る目は、完全に、ごめんなさいとは別の生き物の目だった。そうだろう、そもそも、何故、家内はアパートの一室で馬を喰っていたのだろう。
「待て! 私だ。落ち着くんだ・・・」 膝に乗り上げて、今にもその指の切っ先が目玉を抉らんとしていたかのように伸びたところで、ついに私は声を出すことが出来て、彼女の進撃を止めることが出来た。
「あ、うん」 家内はどこから出たのか分からない冷静な声で返事をした。
彼女によるとこうだ。
「私ね、馬刺しが好きなの。それでね、いつも馬刺しばっかり食べてたら、いつの間にか、売られているものじゃ満足できなくなってきたの」確かに、言われてみれば、普通の温かい家庭の何十倍かの割合で、我が家は馬刺しが食卓に並んでいた気がする。
で、満足できなくなった彼女は、
「私ね、馬狩り出来るようになったのよ!」 そう言って、彼女は、壁に掛けてあった弓と矢を取り出して、番(つが)えて見せた。確かに言われてみれば、普通の5階建てのアパートの何十倍かの割合で、矢が刺さった後のようなものがあちこちにあるような気がする。
「それでね、えーーいっ!」 彼女が突っ込んでいったカーテン・・・その向こうは、5階の窓から見える都市の様子ではなく、一面に広がる草原だった。確かに言われてみれば、最近、普通のLDKの部屋の何十倍かの割合で草いきれの匂いが鼻につくような気がしていた。
「こっちにおいでよ! 楽しいよ!」 家内がそう言いながら、遠くの方に小さく見えるゼブラ馬に照準を絞ったのか、弓を構えて、十分に引いていく。明らかに届かないのが分かる。ところが、家内。そこは唇でなにやらを呟く。すると矢は炎を纏い、一直線にゼブラ馬へと飛んでいき、どう、と倒れるのが見えた。確かに言われてみれば、最近、家内の料理の火加減が何十倍か増しているような気がしていた。
ええいままよ、と私もカーテンへと飛び込んだ。強い日差し。家内はずっと遠くの方で手を振っている。気付けば、隣には乗ってくれよとばかりに鞍の載った馬が用意されており、よっしゃ、ちょっくら、と脚をかけようとしたところをどう、と馬は倒れ込む。見ればまだ幼き娘が馬のはらわたを貪り喰っていた。
「パパ、最近おなか出てきたんだからさ、少しは走りなさい!」 娘は二カッと笑ってそれはそれは可愛かった。確かに言われてみれば、最近・・・ちょっと太ってきたのかもしれない。
見せなければならない健康診断の結果も、知らなければ良かった家内の秘密も、うまくいかないことが、走り出したら全部消えてしまうなんて、そんな風にはいかないのだろうけど。私はヤレヤレとかぶりをふって、それから笑って、今は走って、馬好きの家内のところまで向かった。





拍手[0回]

残業時間によるストレスは支出を増大させるか?

なかまくらです。

毎年収入がちょっとずつ増えているなかまくらです。

ところが、全然貯金が増えるペースが上がらない。

なぜだろう。ええ、1つには、税金がぐんぐん上がっていること。

なんか、毎月8万円くらい引かれているんですよね・・・。

しかも、よく明細を見ると、家賃補助で、等級が一つ上がって、

税金が増えてるやん・・・!!

ちなみに、比例するように、残業時間も増えている。

今年の4月から12月の残業時間の合計は、記録上は1185時間でした。

休みは、盆と年末の休みを含めて31日。

なかなかのブラックさです。

そこで気になったのは、

残業時間が増えたときに、ストレスで支出が増えるか、という疑問。

そこで、グラフにしてみました。それがこちら。



生命保険とか自動車税とか、まあもろもろ全部含んでいるわけですが、

まあ、お金の使い過ぎ。

オレンジが残業時間、青が支出です。

相関はないかな・・・・?

と思うわけですが、職場のPC環境を整えるために使った費用を覗いてみたのが、

グレーの線。・・・実に微妙ですね。とくに、10月を見ると逆相関すらありそう。

そこで、別のグラフを。



やっぱり10月が規則からずれている。

そこで、家計簿を詳しく調べてみると、結婚式で岡山に行ったのでした。

その費用を修正してみると、んーーー、なんとなく相関がある気がしますね。

こうやってデータを元に考える力って大事だな、と思いますね。

学生に求められている力の一つだとも思いますね。

そして、このデータの操作の妥当性もどうでしょうね。





拍手[0回]

【ドラマ】「マリオ~AIのゆくえ」観ました。

なかまくらです。

NHKのスペシャルドラマ「マリオ~AIのゆくえ」を観ました。



まあ、普段、あんまりテレビを見ない私。

初めてオンデマンドで購入してしまいました。

なにせ、脚本が前川知大さんなんですね。

私が大好きな劇作家さんです。

さて。さすがはNHK、俳優もすごい。

マリオ……西島秀俊
時枝悟……田中哲司
持田喜美……倉科カナ
神崎至……福崎那由他
神崎恵……西田尚美
馬場哲也……北村有起哉
橋本和夫……渡辺いっけい
糸魚川医師……菅原大吉
ホームレス……生瀬勝久

さて、あらすじ。

時枝は、人工知能をより人間らしくする研究に没頭していた。

警察官の手助けをするAI「マリオ」は成果を上げていたが、時枝は満足していなかった。

そこで、

事故で植物人間となってしまった警察官に、時枝は開発したAI「マリオ」を埋め込む。

これにより、人工知能に肉体を持たせることに成功したのであった。

肉体を得たマリオは、しかし、善悪の判断も分からない子供のようであった。

しかし、警察に発覚し、逃亡を余儀なくされたマリオは、

時枝の息子の至と出会い、交流を深めるうちに、次第に人間らしさを学んでいく。

欲があること、欲があってもやってはいけないこと。

欲望のままに動くのは人間ではなくて、動物だ。

そんなマリオを警察は処分しようと動く。

至を人質に取られ、マリオは警察と戦うことを選択する。

至の命を厭わない、AI導入に反対する馬場との対決にマリオは深手を負い、

別の機動隊員に撃ち殺されてしまう。


そんなお話でした。

最期、撃ち殺されて、あー、でも、そうだよなぁ、と思いながら見ていましたので、

ラストはちょっと救われた気持ちになりました。

AIが人間というものを学んでいくという過程を通して、

私たち自身が、人間とは何だろうか、ということを改めて考えさせられる物語でした。

普段、私たちが生きている町のいろいろな風景や情景、風の音や自転車が通る音、

雨が降り、誰かの話声がする。そんな風景に翻弄され、あたりを見回すマリオの姿に、

なぜだか、生きるっていうことをすごく意識させられました。

また、欲にまみれた人間がドラマの中で、ある種ステレオタイプのように演じられますが、

ドラマを画面の向こうに見る私たちは、それを「ああ、醜いなぁ」と思います。

そして、マリオに生き延びてほしいとも。

けれども、実際にAIが現実世界で誕生し、私たちをみたらどうでしょう。

不合理で、矛盾している私たちをAIは美しいと思ってくれるのでしょうか。

人間はどうあるべきなのか。私たちがAIを怖いと思うのは、

無意識のうちに、自分たちの醜さを感じているからかもしれないですね。


そんなことを思うのでした。

面白かったです。

NHKオンデマンド配信されています。DVD化しないかな。
「スーパープレミアム 「マリオ~AIのゆくえ~」」
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018092001SA000/






拍手[0回]

楽天カードのダイヤモンド会員の話

なかまくらです。

電子マネーの時代が次第に近づいてきて、

私もすっかりクレジットカードを使うようになりました。

なんでもいいのかな、と思いつつ、すごいポイントが付くらしい・・・

ということで、楽天カードデビューしたわけです。

ああ、もう一つそうした理由がありました。

e-Naviという使ったお金がわかるネットのサービスがあって、その中に家計簿があるのが、

結構便利なんですね、これが。

すると、恐ろしき無駄遣いの多さと、なぜ貯金がなかなか増えないかが判明するわけです。

で、

スーパーでもカードでお支払い、ガソリンもカード、その他日用品もカード、

ガス代もカードですし、携帯電話の通信費もカード・・・

なんてやっていますと、あれよあれよ、とダイヤモンド会員なんてものになっていたわけです。

これが、なかなかの巧妙な罠。一度ダイヤモンド会員になると、キープしたくなるわけです(笑

・・・で、キープの条件は2つ。

1. 過去6ヶ月で4,000ポイント以上獲得(100円1ポイント)
2. 過去6ヶ月で30回以上ポイントを獲得

です。



生活費をほぼすべてカードで払っていると、この6か月で4000ポイントは実は超簡単です。

そもそも、ダイヤモンド会員になると、楽天市場で買い物をすると、ポイントが4倍になるので、

半年で10万円くらいの買い物で、ななななんと! 達成できてしまうわけです(←病気

ところが、2の30回以上のポイントゲットは、かなりの至難の業なのです。

だって、半年で30回ということは、月に5回も楽天市場で買い物をしないといけないわけです。

通販は送料だってかかります。1回5,000円だとしたって、月に25,000円のお買い物。

そんなに物欲ないですわ。・・・と思っていたのです。

ところが、最近これが簡単になってきました。

それは2つ。

1つめは、楽天Edyで買い物をするようになったこと。

すると、いちいちポイントを獲得したことになります。

2つめは、ニコニコ動画の有料動画(200円くらい)を楽天カードで支払うようにしたこと。

これも、いちいちポイントを獲得したことになります。

そうすると、この2つだけで大体月に6回くらい回数が稼げます。

困っている方、おススメです(これは何の記事だったのか・・・苦笑


というわけで、たまには宣伝。

全然話は変わるのですが、ここは小説サイト付属のブログです。

私の書いた小説・戯曲がHPに載っていますので、

電車の中などでちょーっとお時間ありましたら、寄って行ってください^^


おしまい。





拍手[0回]

【小説】バナナの皮殺人事件

なかまくらです。


書きっぱなしでデスクトップに置いてあった小説を発表します。

シリーズにしてもいいな。


どうぞ~~。



「バナナの皮殺人事件」

                   作・なかまくら



バナナの皮殺人事件


作・なかまくら


2018.11.12


 


凄惨な現場であった。


「無理心中ですな」「いや、殺人事件だろうさ」


二人の刑事は、ともに恰幅が良く、ともにパイプをくわえて、ひげを交互に撫でながら、事件現場を眺めていた。


「犯人はどっちだろうな」「いやさ、相討ちだろうね」


 


死体は二つ。凶器は花瓶。それぞれの凶器と頭部の外傷ががっちり合致。


「間違いないな」「間違いないね」


 


二人が頷く。


チェック柄のチョッキの青年は、指をさしている。丁度ダイニングのほうである。つまり、そのダイニングメッセージが残されていた。机の上には食べかけの夕食。こぼれたワインと、白身魚のギョギョ煮。そして、房についたバナナ。そのバナナの周りは水で妙に濡れていた。


 


地面にも食べ物がこぼれており、二人の刑事は、そっと目を逸らした。


「さぞかし美味しかったろうな」「ところが、今は匂いすら宜しくない」


「ところで二人の関係はどうだろうな」「見たところ、老人と青年というのは関わりの少ないものだ」


「存外、どうだろうか」「案外、その通りさ」


「よし、間違いないな」「間違いないね」


 


二人が頷いて、事件の調書に一筆ずつ、署名を始めたときに、


 


「おままちを!」


颯爽と現れるチェックコートの男が現れる。


「またチェックですな」「今日はチェック記念日ですかね」


「刑事さん、刑事さん、こんにちは。いつもお勤めご苦労様です」


チェックコートの男は、優雅に挨拶をする。


「いつも、どこからともなく現れますな」「探偵どのは、千里眼ですね」


「いえ、彼に事件が起きたので」


探偵は、さっそく現場を確認する。


「なるほど! 謎は解けました!」


「そうでしょうな」「そうでしょうね」


二人の刑事は、さも当然のように、ひげを交互に撫でた。


「チェックの彼・・・私の助手のアンサムくんは、バナナの皮に滑って後頭部を後ろの花瓶に強打! 後頭部陥没が死因ですね」


探偵は、ピクリとも動かないアンサムくんに近づいていく。


「ほう」「ほう」


二人の刑事はやれやれ、と言った表情でそれを見ている。


「見てください。彼の指さしているのは、壁です」


壁に近づくと、小さな蟻が何匹か確認できた。


「この壁、何か甘いものがぶつかったのでしょうね。蟻が集まっています。そして、」


探偵は、その壁から、アンサムくんのほうを向き直る。


「ちょうど、この壁のシミと、下に落ちているバナナの皮、アンサムくん、花瓶が落ちて割れている位置は、部屋の中で一直線上になっているのです!」


探偵がそう、高らかに叫ぶと、天井があるにもかかわらず、天から光が降り注いだ。


そして、アンサムくんを包み込むと、光の中から、アンサムくんが笑顔で現れるのであった。


「先生、ありがとうございました。また、うっかり、死んでしまいました!」


「君は本当に、いつも危なっかしいのだから、困ってしまうね」


「先生がいるから、安心してあの世へ行けるんです」


「いやいや、私を試すように突飛な方法で他界するのは遠慮してもらいたいものだな」


「どうも、すみません」


「・・・で、もちろん見たんだろう、犯人を」


「ええ」


 


**


 


そんなわけで、真犯人は、隣人のジェムリフさんであることがわかったそうです。


二人の刑事が逮捕に向かい、先生とアンサムさんの活躍で一件落着となったとさ。


「はい、記録おしまい」


女の子は、それをファイルに綴じると、事件簿の並ぶ本棚に戻した。







拍手[0回]

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
2
3 4 5 6 7 8 9
10 12 13 14 15
18 19 20 21
24 25 26 27 28 29 30

アーカイブ

フリーエリア

ブクログ



ブログ内検索