1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】キラータイトル

2012年、超短編小説会 超短編祭参加作品。です。

お題は、「 『 ウィンター 』、『 ウォーズ 』、『 魔法 』、『 微熱 』、『 チョコ 』

 『 いつか 』、『 来た道 』、『 帰り道 』、『 風 』、『 センス 』、『 私 』

 『 幸福 』、『 質問 』、『 百者 』、『 騙り 』、『 入道雲 』

 『 騙された 』、『 誰だ 』、『 煙突 』、『 手紙 』、『 魔導 』、『 士 』

 『 今更 』、『 ながら 』、『 自己紹介 』」

から、なるべくたくさん言葉を入れて、書く。です。探してみてください。

23個入っているはずです(ひとつはひらがな)

ミステリー風・・・? です。

よかったら拍手でもください。

では、どうぞ。



***

キラータイトル
 
 
 
生きるってなんですか。夕焼けに牛乳配達の若者が鼻歌交じりに自転車をこいでいる。
長い坂道の途中で、その顔は紛れもない真剣そのもの。
真っ赤に染まった顔はまるで血みどろの戦場の衣装。
集合住宅の前でいったん降りて、牛乳を木箱に並べて入れると、少年は再び鼻歌交じりに歌いだす。
 
 

 
個性的な焦げ茶色に染まった入道雲が幸福な質問を携えていた。
 
白塗りされた建物の窓から、外の様子が見える。男はカーテンをぴしゃりと閉めて、その外とのつながりを断つと、机へと向かう。男は作家だった。羽ペンが舞い踊り、部屋の中を飛び回る。
 
決して覗いてはなりませんぞ。
 
壁には騙された魔道士たちがべたべたと張り付いて、覗き見をしている。
物語という牢獄からの解放の時を待っているのだ。
没キャラクターになったもの、モブキャラ扱いにされたもの。
怨嗟の声が自己紹介となって、男に流れ込んでいく。あふれかえった物語。
ふいに開いてもいない窓から一陣の風が通り抜ける。
はっと振り向いた、男は。
部屋に魔が差しこんで、真っ赤に染まっていった。
魔道士たちは笑いながら飛び去っていく。
まるで初めから、その瞬間を見るために集まった観客であったように、振る舞い、
我関せずと、笑っていた。
 

 
 
探偵の朝は早い。
ウィンナーバーゲンで大量に買い占めた腸詰めをフライパンにいくつかつかんで載せると、かりっと焼き上げる。外からは毎朝パン屋が、焼きたてのパンと事件を届けに来る。
 
「おい、探偵。知ってるか?」
 
パン屋はうわさ好き。街一番の情報通。
来た道を帰ろうとするとな、後ろに見たこともない煙突街が見えるんだ。
ちょこっと手紙を渡しただけで、魔法みたいにあの子たちはカップルになっちゃったんだ。
センスで仰ぐと、いい風が吹いたんだって。
 
この世界は物語にあふれている。ありふれた事件に一喜一憂し、微熱を帯びたように浮ついた気分に浮かれる沈む。燃えることもなく、消えることもなく、不完全燃焼の真実が、有毒ガスを吐き続ける。空は晴れず、石畳のストリートはよくない霧に包まれる。
 
「そうそう、聞いたか? ウォーズストリートの事件」
パン屋は、うっかり持ってきた焼きたてのパンを食べながらいう。
「ああ・・・作家の・・・殺されたっていう」
探偵はうっかりコンソメスープを出す。
 
「そうそう。依頼人を連れてきた」パン屋は、持参した舟型の精巧なクルトンをコンソメスープに浮かべながら、そう言った。
「あのぅ~」
「誰だっ!?」
「依頼人です!」
探偵の背後には礼をした依頼人が立っていた。探偵は、コンソメスープで一息つくと、
 
「私の背後に立つべからず、という紙を背中に貼った」。
 
「あのぅ~、この人は何を言っちゃってるんでしょうか?」依頼人は動揺し、
「仕方がないな」探偵は、事情を飲み込めない依頼人に、コンソメスープで一息つかせた。
 
パン屋が『この帰り道はいつか来た』という題の絵の裏にあるスイッチを押す。
 
ウィン
 
ターンテーブルが開いて、この街の地図が出てくる。
 
ついでに事件についてチョコっと尋ねたところ、こうだ。123。
五日前、ウォーズストリート4番街の一角にある集合住宅「百者之家(モモ・モノノケ)」の3Fで、作家のオオタナさんが殺されていた。
 
部屋には、鳥の羽が散乱しており、ペットの“かたりーぬ(ゲコ)”は、卵を産卵していた。
部屋には他に異常はなかった。強いて言えば、羽毛布団がずたずたに切り裂かれていたくらいだった。
 
「なんだ。オオタナさんはニワトリ人間とでも争ったのか?」探偵が聞く。
「まあ、ケッコーコケッコーな、人でしたから・・・」と、依頼人は答えた。
「君と犯人には一見接点がなさそうに思えるのだが?」探偵が調査ファイルを開く。
「最近近くのバーで小説クラブを結成したんです。そのメンバーでした。彼も、私も」
「小説クラブ?」探偵は、ターンテーブルに乗っかると、華麗なステップを披露した。
「はい。テーマを決めて小説を書くんです」テーブルは回転を始める。
「どんなテーマで?」探偵はトリプルアクセルを決めながら尋ねる。
「そ~れ~は~・・・」依頼人は目が回って、気が付くとすべては白日の下に曝されていた。
「なるほどな・・・」探偵を中心に世界は、回っていた。
「なんだか・・・個性的、ですね」依頼人は上の空にぼそっと言った。
 
**
 
 
数日が経ち、再び事件は起こる。
パン屋が扉に吸い込まれるように飛び込んできたので、探偵はパン屋と連れ立って、扉に吸い込まれるように飛び出た。扉についた鐘が普通にカランと鳴った。それからその音はお隣さんちに吸い込まれていった。
 
探偵たちは外に止めてあった車にムーンウォークで乗り込むと、エンジンをかけた。
 
“ながらっ、ながらながらながら・・・がらがらがらがら・・・”と車は虹色の排気ガスと生きてるみたいな変な音を吐き出し続けるので、
 
「おいパン屋、がらがらうるさいぞ、このポンコツ。車検に出したらどうだ!?」と探偵がいうと、
「今更新してきたとこなんですけどね~」とパン屋は、無駄にかっこよく車を発進させた。
 
 
事件が起こったのは会議室。煙突が伸びる製紙工場の隣。出版社本社、雑誌の編集会議の真っ只中であった。
ライターが無差別に一人を除いて全員殺されていた。あたりには、羽と原稿が散らばっている。
 
「編集長、いったいライター達に何があったんですか?」パン屋が編集長に詰め寄っている間に、探偵は、
「犯人は羽の生えた人物だ。この羽をDNA鑑定すれば・・・」と、考えたが、
「しまった・・・、それは今読んでるSFの中の話だった」現実と空想が区別つかなくなっていた。
 
「いえ、私はただ・・・もっと個性的で、面白いものを書け、と叱咤激励をですね・・・」
編集長がハンカチーフで汗を拭いていると、死体リストをみていたパン屋は、あることに気付いた。
「おい、探偵。これを見ろ!」
 
そのリストの中には、先日の依頼人の姿があったのだった。
「依頼人・・・守れなかったのか」
 
夜の風が吹いた。
 
 
***
 
 
彼が最後に何か伝えようと握っていた紙きれを、探偵はランプの明かりに照らされながら読んでいた。
 
それから、羽ペンをとる。
 
「この事件、巨大な何かが動いているような気がする」
探偵は引き出しを開けると、ノートを取り出し、横に置くと、手紙を書いた。
のっぺりとした文章を書く。それは誰にでも替えが効くような文章で、部分的にパーツを交換してもよいような汎用的な暗号。この暗号でも十分人を引き付けてやまないだろう。微熱を帯びた文章は人々に感染し、やがて治っていくのだろう。いつだって、そうやって人は人を喰らって生きているのだろう。
書き終えると探偵は、ひとつ息をついた。それから、ノートの端にマッチで火をつける。
 
「ここから先は、一人でいい」手紙はパン屋のおっちゃんに送られた。
 
 
 
探偵は、もうひとりでいい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

**あとがき**

犯人は、誰でしょうね^^;
 





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H^v^P

みてみて~ 改装しましたよ! http://elekisamurai.web.fc2.com/index.html





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アルカパかアルパカかわからなくなったとき、人はどんな行動をとるのだろう、ということについて、

アルカパかアルパカかわからなくなったとき、人はどんな行動をとるのだろう、ということについて、小一時間議論しちゃうような精神的余裕と向上心が僕にあってもいいと思うだろう、そうさ、そうなんだろう?



とりあえず、レポートは全部やった。

最後のひとつがやっつけだったから、やり直しになるかもだけど、あとはもう出した

・・・のでR





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五龍世界Ⅱ  WOOLONG WORLD 雲谷を駈ける龍 を読みました。

なかまくらです。

五龍世界Ⅱ  WOOLONG WORLD 雲谷を駈ける龍 を読みました。

あらすじ

妓女の碧耀は、ある時落籍(客に買い取られる)して、嫁ぐことになる。

しかし、それは決して明るい未来とは言い難い。たいていの場合、そういったお金持ちには本妻がいるからだ。

ところが、碧耀を運ぶ一行は、山賊の襲撃を受け、碧耀はある山麓の村に逃れた。

その村では、鉱山からの鉱毒による被害がでて、非難の声が上がっていた。

碧耀は、そこで自分と同じ妓女だった老婆に出会う。

そして、彼女の生き方は変わろうとしていた。

みたいな感じ。(いつも以上にテキトウですみません _ _ )

この作者の話はだいたい女の子が頑張る話。

でも、周りの男女の味付けがよくて、読んじゃう感じです。
中華風ファンタジーで、呪いとか、龍脈とかそういう感じの世界観。
二巻は前回脇役だった妓女の碧耀が主役。後戻りはできない展開の作品というのはドキドキしますね。碧耀よりも、脇役がキラキラ。
ちょっと物語の身近さ(視野の狭さ)と世界のうねりがうまく結び付けられてない感じがして、作者の意図通りには進んでないような。とりあえず、次巻も待ちます、ええ。





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きゅふっ

なかまくらです。

アニメ、
「輪(まわ)るピングドラム」の最終話を観ました。

「輪(まわ)るピングドラム」は少女革命ウテナ(観てないけど)の監督、幾原邦彦 の作品。

これまでの大体のあらすじ。





「僕は運命という言葉が嫌いだ。」

二人の兄と一人の妹は3人で幸せに暮らしていたが、妹の陽毬は不治の病気に冒されていて、死亡。

ところが、不思議なペンギンの帽子によって奇跡の生還を遂げる。

ペンギンのいうことには、今は一時的に余命を延ばしているだけであり、

「ピングドラム」を見つけなければ、この娘の命はやがて尽きてしまうであろう。

ということ。

二人の兄は妹の陽毬を救うために、ピングドラムを求めてある女の子に出会う。


「私は運命という言葉が好き。」

女の子は小さい頃になくしてしまった姉の残した日記をその通りに遂行することで、姉になろうとしていた。

姉がいたころの家族はとても幸せだったから。

兄弟は、女の子の日記をピングドラムだと思い、それを奪おうとする。

女の子は萃果(りんご)


時を同じくして、妹の陽毬の担当医に"ときざね"という男が現れる。

ときざねは、高価な薬があるんだけど、と、長兄・冠葉に持ちかける。

冠葉はどこからともなくその大金を仕入れ、陽毬は再び命を長らえる。


弟の晶馬は、これは僕たち兄妹に与えられた罰なんだ、と萃果に話す。

萃果の姉の死んだ事件の首謀者は、兄妹の両親だった。

兄妹は義兄妹であり、彼らはみんな生きる価値を求められていなかった。

誰かに「愛してる」って、ただ一言言ってもらいたかった。

兄の冠葉はその光を義妹の陽毬に見つけ、両親の組織を継ぎ、大金を手に入れていた。

担当医のときざねはそれを見ていた。


ときざねが畏れるのはピングドラム。それは運命を変える呪文の乗った本の名前。

ピングドラムは燃えてしまうけれど、萃果は呪文・・・一番大切な言葉だけは知っていた。


最終話、冠葉と晶馬は対峙する。

萃果は運命をその身と引き換えにして乗り換える。

晶馬は言う。「愛してる」 そして、これは僕たちの受ける罰だから。

萃果と陽毬は運命の乗り換えられた世界で何事もなかったかのように幸せに暮らす。

兄妹なんて、初めからなかった世界で。

ただひとつ、昔あった世界にあったぬいぐるみの中から、

「大スキ!」という手紙にわけもなく涙するくらいで。

おわり。






でしたー^^


もうね、なんどかぶわっと、来ました。

良かった TωT b

演出が素敵で、暗いお話なのに、暗く見せず、あくまで明るく。

大切なところは包み隠して、

優しいけれど、本当は悲しい。

思いと思いが交錯して、どれかは正しくてどれかは正しくなくないといけなくなって。

今私たちが生きてきた平穏が一番の幸せなのだなあって、

思いました。


名前とか、世界観とか、銀河鉄道の夜がモチーフになってるみたいですね^^。


小説版、読みたくなっちゃった。今度買ってこよう。





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