1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】タイムマシンの罠

なかまくらです。

今日も文化祭の代休日でお休みです。

というわけで、朝から小説を書いていました。

途中、お昼寝を挟んで(・・・何て優雅なんだ)、

後半を書き上げて、とりあえずの完成。

ん~~、もうちょっと膨らめて、お芝居にしても良かったかもですね。

気が向いたら、戯曲に仕上げてみようかな。

2幕も作ったりとかして。

別の投稿サイトに投稿する都合上、刑事さんの活躍があまり描けなかったのが、

ちょっと残念なので、そのときには、そこも掘り下げてみてもいいかも、

と思っています。

それでは、どうぞ~~。

~~~~~~

「タイムマシンの罠」


                    作・なかまくら


「予告状が届いたんだって」


博物館の館長は、その声に顔を上げる。


「川面さん」


「・・・して、その怪盗・時秋(ときとき)のお眼鏡にかなった品というのは、どちらに?」


館長は慌てて、口に手を当てた。


「川面さん! お電話でもおはなしした通り、この件は非常に込み入った事情というものがありまして」


「なんですか! 込み入った事情というのは! そういうものは、持ち込まないでいただきたい!」


「ひぃえぇ!」 館長が川面の大声に思わずのけぞった。


「いいですか、館長。私の仕事はね、あくまでその品物を守ることにあるんですよ。そうでないところは、またそれが仕事の人に頼むのが筋って、そういうものでしょう」


「ええ、その通りですわ!」


「あっ、煤崎さん!」 館長が安堵の声をあげる。


「館長さん、こんなところではなんですので、このうるさい刑事さんを応接室へ案内してお茶とケーキとチョコレートパッフェを3人分、用意してくださりますね」


「いえ、私は要りませんが・・・」 川面が新しく来た女を上から下までじろりと見る。白いシャツの上にジャケット。黒のタイトスカートで、背の高い靴を履いている。見るからに機敏に動けなそうな恰好だな、と川面は心の中で嘆息した。それから、


「先に品物を見させていただきたい。作戦会議はそれからでしょう」


 



 


地下、ヘッドランプの明かりが揺れていた。


「悪いことをしているという実感はな、ないんだよ」 ちょうど金庫室の真下だった。


「例えば、気付いちまったとするよ。あんたが、いま、今更になって、自分がとんでもないことをしようとしていることに。今ならまだ間に合うかもしれない。やり直せるかもしれない」


基礎部分のコンクリートには小さな穴が開けられ、そこに挿入されたチューブへと特殊な溶剤がポンプで送られている。この建物の構造をこの怪盗に教えることができたのは、博物館の設計に携わった自分を含め、数名にしか出来ない。今回の手口から、真っ先に設計者が疑われるだろう。


「知ってしまったときが、そいつの潮時ってやつなんだろうさ。罪悪感は腕を鈍らせる。鈍った腕じゃあ、いい仕事は出来ない」


怪盗・時秋(ときとき)は、そう言うと、溶剤で柔らかくなったコンクリートをスコップで掻きだしていく。


「それでも、お金が必要なんですよ。ちょっと考えられないくらいの額が。それだけあれば、娘は治るかもしれないって」


「真っ当に生きていくなら、諦めないといけない。それが真っ当な考え方ってやつで、ただ、知っちまった。そのときが、そいつの潮時ってやつで、どうするか、決めないとな」


恐ろしい手際で、博物館の倉庫のコンクリートを掘り当てると、刳り抜いて、時秋は上へと抜けた。


「鷹野さん、あんたはそこで待ってな。案内ごくろーさん」


穴の向こうで、時秋はそう言った。


 


「さて、と・・・」 時秋は暗視ゴーグルを点灯させて、周囲を見渡した。赤外線が張り巡らされている場所を探すと、それらしい場所がすぐに見つかる・・・見つかったのだが。


「マジで手の形とはね・・・相当趣味が悪い御仁もいるもんだ」


照射されている赤外線をミラーでバイパスして道を丁寧に作っていく。『フレミングの右手』と噂されるその宝は、これまで厳重に保管されてきた。興味が湧いたら欲しくなってしまうのが怪盗・時秋という男の性質だった。その『右手』は思ったよりもずっと硬い感触だった。生きているような肌の質感に似合わず、金属だろうか、磨かれた石だろうか。硬質なそれを風呂敷に包んで、その場を離れた。


 



 


「・・・で、こちらの警備はもう、それは万全というやつでして」 館長は、倉庫の鋼鉄の扉を開ける。


「いいですか、これからお見せするものは、他言無用でお願いしますね」 と、煤崎は黒塗りのファイルを抱えて言った。


「パフェにいささか時間がかかりすぎではありませんか。奴はそそっかしいやつですから、予告状を出したらすぐにでも行動しないと・・・」 刑事の川面は、苦い顔をしていた。味わった黒珈琲の苦みを舌の上で転がしていた。倉庫の中央、置かれているはずの場所。


「「「・・・ないっ!」」」


それは、なかった。


 



 


翌日の正午ごろ。こんこん、扉を叩く音がした。


「来客の予定はないんだけどな・・・。あんた、ここ居座ってるといいことないぜ」


「私は、この罪の行く先を見ておかなければならない、そう決めたんです」


「ああ、そう・・・でも、そこはやめときな」


そう言いながら時秋は、銃を構えて扉の横にしゃがんだ。


「はいよ」


扉をゆっくりと少しだけ開けた。


「どうもっ! こんにちはー!!」 間の抜けた明るい女の子の声だった。


 


「・・・ん?」 少しの疑問。ちらつく照明。そして、時秋は黙った。


「波奈・・・」 鷹野の足が一歩、二歩と少女へと近づく。


「なんだ、手術は終わったのか。もう、歩けるようになったのか? え?」 今にも泣き出しそうな顔。それを時秋は苦々しげに見た。


「鷹野さん」


「時秋さん、娘なんですよ。彼女は、私の娘なんです」


「そっくりなんだろう?」 時秋は、努めて慎重にその言葉を伝えた。


その一言で、鷹野の足は止まった。


「いえ、・・・ええ、そうですね。そうですよね。そんなわけないですよね。それによく見れば別人だ。背も少し高いし、年齢ももう少し上に見えるし・・・」


「お父さん・・・」 その娘は呟いて、


「波奈・・・!」 鷹野は首を振った。正気を失うまいと、髪をかきむしった。


「声まで似てるなんて、残酷すぎやしませんか! ねぇ!」


「だが、残念だが、人間じゃないらしい」 時秋は、足元を指した。


天井からの照明に対して、彼女は影を持たなかった。


「ああ・・・」


「何の用だ?」 時秋は尋ねて、娘は応える。「『フレミングの右手』が動いたので」と。


それから、娘は、右手にサッと触れて見せた。途端に空間がぐにゃりと歪んだ。


 



 


「・・・で、結局その盗まれたものというのは、なんなのですか」 刑事・川面は、煤崎を問いただしていた。


「国家の安全に関わる機密でして」


「なるほど」


「フレミングの右手の法則とは、時間と空間の関係式を形にしたものです」


そう言って、眼鏡をぐいっとあげると、大盛りのパッフェを頬張った。


「正直言って、よく分かりませんね。それで、盗まれるとどう、国家の危機なんです?」


「(もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ)」


「時間、かかりますか?」


「・・・ごくん。そう、時間なんですよ。時間が変化する。それが問題なのです。とにかく、彼から取り返してください。詳しい説明は必要があればそのときにでも」


煤崎は、そう言うと、お金を置いて、去って行った。


「はぁ・・・まあ、仕事ですから」 川面は、コートの襟を一度正した。


 



 


「また、厄介なものに手を出したな・・・」 古びた時計店のような雰囲気だった。店の主人は単眼鏡で、『右手』を見ていた。


「まあ、そう言わずに。時間があまりないんだ。明日の正午ごろだ。その時間になると、影のない女が現れて、気付けば1日前。『右手』を盗む直前の倉庫の中だ」 時秋はソファに腰掛けて、店主の作業を見ていた。


「あのときも大変だったよなぁ、『キログラム原器』を盗んだときだっけ?」


「よせよ・・・昔の話だ」


「まあそう言わずに。こいつがやっと一人前になった頃の話さ。『キログラム原器』の話になった。こいつは、1キログラムを決めている指標でな。こいつを盗んだらどうなるだろうって。そしたら、こいつ、ひょいって盗んできてよ」


それから世界は大変だったらしい。質量という概念が消失し、あるものは風に飛ばされ、あるものは、落ちた。決死の思いで『キログラム原器』を元の場所に収めてくると、それはすべてなかったように、元に戻ったという。


「へぇ・・・」 不思議な高揚感があった。世界は随分と広かった。鷹野はそれまで真っ当に生きてきた。しかし、世界の裏側はもっとワクワクとドキドキで満ちあふれているのかもしれない、と思った。


「ん~~、これ、一晩、俺に預けろ」 店主はそう言い、時秋は頷いた。


「例の時間までには取りに来る。マスターに迷惑はかけたくないからな」


「おう」


 



 


そして、何度目かの倉庫。


「・・・あきらめが悪いのね」 娘がそこにいた。


「どうも」 時秋は、そう返した。それから、ふと、あることに思い当たった。


「ここで、引き返せば良いのに」 娘がそう言って、時秋は笑った。


「なるほどな。あんたは確かに、鷹野の娘なんだな、未来から来た・・・」


「・・・なんのことかしら」 娘の声が初めて強ばった。


「悪いけど、お父さんはそっちに行くぜ」 時秋が不敵に笑って、『右手』を掴む。


「駄目!」


娘が叫んだ瞬間、倉庫の扉が勢いよく開く。


「そこにいるのは誰だ!?」


発砲。その銃弾は、時秋の肩の辺りを貫き、『右手』は時秋の入ってきた穴へと、鷹野が待つ穴の中へと落ちていった。


時秋の薄れゆく意識の中で、未来と繋がる音がして、娘の姿は見えなくなっていた。







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久し振り

なかまくらです。

「先生、CM出てください!」

ということで、文化祭のCMに出演しました。

鯛焼きを貪り喰って、うめぇ! という役どころで、

んーなんて青汁。

それがですね。久し振りに演技なんてものをしまして、

すごい楽しい。これ、楽しいですわ。

極めようとしたら辛いのでしょう。

遊びでやるには、とても楽しい。

笑ってもらいましたし、悲鳴も上がったし、

満足でした^^笑







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『GODZILLA 決戦機動増殖都市』観ました。

なかまくらです。

『GODZILLA 決戦機動増殖都市』観ました。



ゴジラ映画3部作の2作品目です。

前作のあらすじは、過去の記事からどうぞ(『GODZILLA 怪獣惑星』観ました。

アニメは、「シドニアの騎士」で鮮烈な印象を与えたポリゴンピクチャーズ。

フルポリゴンなのですが、アニメっぽいタッチと不自然さの少ない動き。

むしろそこに味わいすら感じられる。いま期待のアニメ製作会社です。

さて、本作。

第1部で倒した総力をつぎ込んで倒したゴジラは、2万年前に地球を追われた時に

戦ったゴジラの亜種に過ぎなかった。

ゴジラは、2万年もの間成長を続け、体長はは300メートルにも成長し、

口から吐かれる熱線は3テラワットのエネルギー

それは、大気圏を突破して軌道上の宇宙船を破壊しうるパワーであった。

一瞬のうちに壊滅させられたゴジラ討伐部隊は、

地球に生き残ったらしい、人型の生物に助けられていた。

彼らはしかし、体表に鱗粉のようなものを分泌しており、単に子孫というには

はばかれる生物であった。

彼らは、体表を金属のように硬質化させ、ゴジラ化した生物を倒す武器を持っていた。

その武器の矢じりに塗られていたのは、ナノメタル・・・

かつて、宇宙を漂流する人型種族、ビルサルドが作りだし、

完成前にゴジラによって焼き尽くされてしまったと思われていたメカゴジラの

材料となる金属だった。

メカゴジラの人工知能は、2万年をかけてナノメタルを増殖させていた。

そして、ひとつの都市を作り上げていた。

ビルサルドは歓喜し、ゴジラに勝てる! と喜び、作戦を立てる。

その頃、地球に生き残った人型種族に手当を受けていた人たちは、

謎の不調を訴える。ナノメタルが身体に毒となっていたのだ。

メカゴジラは、本質的には怪獣に近いものなのではないか。

それぞれの星の終わりに生み出してしまうという怪獣、

ビルサルドにとってのそれが、メカゴジラなのではないか・・・?

そんな不安の中、ゴジラは、メカゴジラの存在に気付く。

そして、ゴジラを倒すための決戦が始まる!


というお話でした。

いやーー・・・衝撃のラスト!

流石、絶望に定評がある虚淵玄さんの脚本です。

そして、ヒトとしてゴジラを倒すということ、

その迷いや戸惑いが見事に描かれた良作でした。

ヒトであるがゆえに、ゴジラは倒すことが出来ない・・・

というのは、恐ろしい定義だな、と感心しました。美しい論理だ。

そして、平成のゴジラを特撮で観ていた身としては、

ゴジラの醍醐味のひとつは、人間がいろいろな兵器を開発して、

なんとかゴジラを倒そうとする様でもあるわけです。

最後にとどめを刺そうとするのが、銛のような兵器というのも、また特撮っぽい。

しかし、ゴジラを倒そうとするも、ゴジラの圧倒的なパワーの前に、破れていく。

相変わらず、戦っているシーンは熱いし、ロボはかっこいい。


モスラに寄っていった生き残った地球人型種族と、

メカゴジラ化していったビルサルド。


破滅の道への不安というものを常に感じながら決戦に巻き込まれていく不穏さが

上手く表現されていたな、と思いました。

それにしても、これはもう、今度こそ人間に勝ち目はなさそう・・・。

最後は怪獣大決戦になりそうな、そんな次回の予告ですが、

はてさて、いったいどうなることやら・・・

まさか、3種の人型種族が争って、それが、3つの頭(ギドラ)であり、

それによって、星は滅びるのだ・・・。みたいなオチじゃないよね・・・?

・・・11月を楽しみに待ちます!!





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「トップガン」観ました。

なかまくらです。

すごく今更ですが、「トップガン」を観る。



テレビで放映されていたので、名作と名高いトップガンをみることに。

トムクルーズは好きなんですよね。

すごく主人公って感じ。

で、トップガン。

簡単に言うとアメリカの空軍のエリート戦闘機乗りとして、訓練を積む話です。

自信に満ちあふれた青年であった彼が、その傲慢さゆえに挫折を味わい、

一度は逃げようとする。

かつての相棒はいないが、それでも、相棒だったら飛ぶだろう。

失意のままに、卒業式に臨んだ彼は、緊急出撃を余儀なくされる。

仲間の危機に、彼はもう一度戦うことを選ぶのだった。


というようなお話。

まあ、あまり難しいことを考えずに、楽しく観る青春映画でした。

天才の挫折と復活。そんな映画でした。

音楽がかっこよく、映画と音楽のコラボってこの時代流行ったそうです。

あとは、なによりも映像が素晴らしい。

実際に撮られたのであろう空中戦が良く出来ていて、

「紅の豚」で空中戦の魅力を知ってしまった私にはたまらない興奮でした。

おわり。





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「レディプレイヤー1」観ました。

なかまくらです。

「レディプレイヤー1」観てきました。

スティーブン・スピルバーグが監督を務めた最新作です。



未来の世界。

現実世界は疲弊しており、人々は、「オアシス」と呼ばれるVR世界に熱中していた。

「オアシス」は、様々なジャンルのゲームが楽しめる仮想空間であり、

ゲームの制作者で運営会社の社長であるハリデーが遺した謎が世界を熱狂させた。

3つの鍵を集めたものに、会社の経営権を引き継ぐというものであった。

ウェイド・ワッツは、スラム街に住む青年であったが、

彼もまた「オアシス」に熱中する1人であった。

彼は、ある日、世界で初めて、一つ目の鍵を手に入れるゲームの攻略法を

見いだした。

そして、ゲームは動きだし、鍵の争奪戦が始まる。

争奪戦の中で、ウェイドは現実世界の抱える大きな問題に直面していき、

現実を生きる大切さを知るのであった。

そして、「オアシス」を賭けた最終決戦が始まる!


みたいな感じのお話でした。

簡単に言いますと、エンターテイメント!

とにかく、単純! 分かりやすい! ワクワクする!

そんな映画でした。

いろんなところにいろんなキャラクターが登場していました。

あとから、wikipediaで調べましたが、とても見つけおえません。

何度も観れば、新しい発見がありそうです。

ゲームとは元来そう言うものだったはずです。そういう面白さがあります。

ストーリーは原作があるそうですが、

わりとありそうな話。

最初の「探せ!」は「ONE PIECE」だし、

何の取り柄もない普通の男の子が、ゲームの世界でヒーローになれるのは、

「ソードアート・オンライン」という感じ。

どこかで観たことのあるものを集めて作られた作品ですが、

それすらもオマージュというか、懐かしいものを観るような

安心感とともに、物語の中に入っていける。

最終決戦のメカゴジラや、ガンダムの登場は驚きとともに、

楽しかったなぁ、という印象。

贅沢を言うなら、ガンダムの駆動音はそのまま使ってほしかった。

まあ、そんなわけでオタクな私には、大変楽しい映画でした。

おわり。





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