1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】アホ毛を切って

なかまくらです。

久しぶりに小説です。

なんとなく後味が苦めなのは気のせいじゃないです。

着地しようとしたら、なんか自分の中の何かが邪魔してきた感じで、

こうなりました。

どうぞ。

ーーーーーーーーー

「アホ毛を切って」

                           作・なかまくら
「ね。お金なんだけどさ・・・」
そう切り出す友人に、内心嫌悪感を覚えながらも顔には出さないように気を使った。
「ああ、いいよ。せっかくまた会えたんだから」
カードをかざすと、私の情報が照合され、働いている場所、支払いに滞りのない信用できる人物であるか否かを照会される。そして、特に問題のない人物と判定され、「ピ。」と支払い完了の効果音が鳴る。
「ごめんね」
「そういうの、やめてって」
「うん」
「・・・」
高校生の時はそういう関係ではなかった。勉強ができるとか、できないとかではなくて、気が合うとか、そういうことしか考えてなかった。私は勉強はできたけれど、勉強のできることを良いことに、いかにもそれらしく振舞う連中になりたくはなかった。友人は、そんな私の気の置けない友人だった。音楽が好きだった。好きなバンドを追いかけるためにアルバイトで軍資金を稼ぎ、全国を巡る高校生だった。夢中で話す友人の話に、たいした夢のない私は耳を傾けて、少しだけそれを分けてもらっていたような気がしていた。
私が大学へ行って、友人が就職して、まもなくある装置が発明され、それを使ったサービスが始まった。「働き足りないあなたへ・・・」というコピーで、駅のホームに大きな看板が何枚も並んだ。AFO(Anti Fiction Object)という名前のその装置は、睡眠を売買できる装置だった。売ってしまえば、売った側はその夢を見たことは忘れる。買った側はその夢を見ると同時に、思考が整理され、頭がすっきりするという触れ込みだった。その頃の私は、大学の講義についていくのがやっとで、けれども学費も稼ぐためにアルバイトもしなければならない状態で、ひどく疲弊していた。それで、興味本位で調べてみると、サービスの提供価格は当時の私にはとても手の出ないものだった。
「ね。聞いてる?」
「あ、うん・・・何の話だっけ?」
「疲れてるんでしょ、一流企業に勤めるサラリーマンは辛いですなぁ」
「いや、そんなことは・・・あんまりないよ」
「ちょっとはあるんだ」
「まあ、多少はね。そっちはどうなの?」
「からっきし。だから副業とかもしててさ」
「副業?」
「今、流行ってるんだよ、個人投資家ってやつ。あとはWEBで記事書いてさ、広告収入?」
「投資? 危なくないの?」
「古い! ・・・古いよぉ。大丈夫だって、みんなやってるし」
「それにしては・・・そんなに羽振りがいいようには見えないんですが?」
「てへへ、ちょっと今月はピンチなのです。・・・あ、そろそろ行かなくちゃ。このあと仕事でさ。じゃあね、また」
「・・・うん」
何かが喉の奥のほうで詰まって・・・またね、という言葉は飲み込んだままになった。それが何か、感覚的には分かっているような気がしていた。
 翌日からは仕事に戻った。朝早く出社してデスクに山積みにされた仕事を黙々と片付けていく。時計と書類を交互にチラチラとみる時間がしばらく続いて、それから同期と連れ立ってランチに出かける。
「ねえ、AFOって結構いいらしいよ」
「へぇ・・・なんか危なくない?」 私も聞いたことがあった。
「心療内科が治療に使ってるくらいになっているみたい。保険適用はさすがに難しいかなぁ・・・」
「睡眠障害の人とか、立ちどころに治っちゃう! みたいな?」
「へぇ~・・・」
あくびを噛み殺しながら、私は大学生のころに見た料金を思い出していた。
「一度行ってみてもいいんじゃない? ほら、最近いつも眠そうだし」
「うん、そうかもね」
「あー・・・、ただ、装置を使うとアホ毛がとまらないんだって。副作用で」
「アホ毛、って、あのアホ毛?」
店へと向かう道すがら、それだけが気になっていた。あの、久しぶりに会った友人の、アホ毛だらけの髪の毛が脳裏から消えなかった。
店は、整体院のような佇まいであった。90分のコース、180分のコース、270分のコースがあり、それぞれに値段が設定されていた。サービスの普及とともに安くなってもいいものだが、まだそんなには安くなかった。ちょっと豪勢な宿に一泊するくらいの値段であったが、財布を取り出して支払った。
 夢の中では、好きなバンドがあって、そのために一生懸命お金を貯める女の子だった。そのために、お金を稼ぎ、それに見合う格好をするためにお金を稼いで、友達に自慢した。それが何よりも楽しかった、輝いていた・・・・・・夢の外の本当の私は、学生だった頃、そんなことを思ったことはなかったけれど・・・。
 誰が売った夢なのか、直感的にわかってしまった。
効果は抜群で、ここ最近、ずっと心の中でジトジトと湿り気を帯びていたものがどこかへ行ってしまったようだった。
けれども、明日、友人を呼び出そうと思った。自分は、ついにお金も仕事も夢もすべてを手にしてしまったけれど、では、あなたから何を奪ってしまったのだろう。もう友人ではいられないのかもしれない。夢を語り合えなくなってしまったのかもしれない。
だから、「私にとってあなたは、夢を語る人であり続けてほしい」と伝えよう、と思った。
そうしたら、アホ毛を切って、カフェに行って、履歴書を一緒に書くのもきっと素敵だ。そして、いつか分かってもらえる日が来たら、私たちはまた友人になれるだろう。






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温暖化って感じ

なかまくらです。

ここ最近、毎日暑いですね。

今年はコロナウイルスの影響で、夏休みらしい夏休みが少しだけとれたので、

部屋にいるせいか、例年よりも部屋の暑さが気になります。

風がない分、下手すると外よりも厚いんじゃないか?

と疑問に思ったので、試しに、1時間おきに部屋の温度を測定してみました。

ちなみに、部屋の窓は全部開けっ放しです。

その結果が次の通り。



朝7時から31℃を超えていてびっくり!

そして、みるみると部屋の温度は上がっていき、18時にピーク!

面白いのは、夕方にピークが来るということ。

考えられる要因は、

① 日中の熱が残っている

② 出かけていた人が夕方に帰ってきて、クーラーを入れるため、その室外機の熱気。

といったところでしょうか。

それにしても暑い。扇風機回しっぱなし+1時間にコップ一杯のペースで、

一日中水分補給をし続けました。

水が手に入る環境って大事なんだな、とそのありがたみを感じるのでした。

おわり。





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「落第騎士の英雄譚」観ました。

なかまくらです。

「落第騎士の英雄譚」観ました。

dアニメストアの会員になったので、アニメが見放題です!(やったぜ!

・・・と思ったのですが、案外見ないものです(もったいない!



今、放映中の「魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~」(長すぎる!

とか、「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」(これもまだ長い!

が、頭からっぽで見れて、割と面白かったので、

夏休みを機に、その監督の大沼 心の過去監督作を追いかけてみることにしたのです。


で、見始めたのですが、ちょっと痛い感じでした!苦笑

身体強化しか魔法が使えない落第騎士が、その身体強化を極限まで極めることで、

並みいる強敵を倒してトーナメントを勝ち進んでいくお話。

戦闘シーンのカメラワークとかが迫力があってGOODでした。

そして、、その構成力はさすが。

12話という限られた中で原作の魅力を伝えるために、どこをどう端折れば、

アニメから入る人にわかりやすい物語とすることができるか、が、

分かっているのでしょうね。

どこかのソードアートオンラインとか、とある魔術の禁書目録をアニメ化している

スタッフに教えて差し上げたいところですね。


なんでしょうね、お金がたくさんかかっていたりすると、しがらみが多くて、

ここは削っちゃダメ、とか

そういうモノ申す人がたくさんいてうまくいかないものなのでしょうか?

ともかく、才能ある人を見つけるって大変だし、

静かに結果を出し続ける人を見ると、面白いな、と思うのでした。


そういう職人芸みたいなのをまるっきり別業種ですが、

一人の職業人として私もできたらいいな、と思うのでした。

おわり。





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「前田建設ファンタジー営業部」観ました。

なかまくらです。

「前田建設ファンタジー営業部」観ました。

ヨーロッパ企画の上田誠さんが脚本を書いているということで、

え、じゃあ、たぶん面白いじゃん、ということで観ました。




大手ゼネコンの前田建設の広報の企画として、

アニメの世界の建設物の見積もりを立ててしまおう、というお話。

その建設物とは、マジンガーZの格納庫

アニメの中の映像では、建設物の構造はわりとぶれていて、

はっきりとしたものを定めるのが難しいというのに、

そもそも、召集されたメンバーは全然乗り気でなくて、

部長だけがノリノリという状態。

しかも、それを残業でやれというから、非難はごうごう。


ところが、それぞれのきっかけで情熱の炎が宿り、

やがて、チームはひとつになっていく。

そして、その情熱は、関連会社も巻き込んで、

きっちりと見積もりを仕上げることに成功するのだった。

広報の一環として始めたホームページの特設サイトも、

アクセスが急上昇。

プロジェクトは成功するのだった。


というお話でした。

雰囲気としては、「ウォーターボーイズ」みたいな感じでした。

最初はみんな乗り気じゃないのだけれど、

気が付いたらみんな燃えてる。

王道展開なのですが、こういうの大好きです。


また、主要キャストが良いです。はまり役でした。







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鉛筆への回帰

なかまくらです。

実は現在、仕事の傍ら、大学生やっています。

通信教育学部の科目履修生として、情報の教員免許の取得を目指しています。

3年かけて取得する予定です。

おかげさまで、21時まで仕事をして、そのあと22時~23時は勉強、という

なかなかストイックな生活となっております。

本を読んだだけとかだと覚えられないので、

やっぱり紙に書きますね。

腱鞘炎の私は、手が痛い! そこで、鉛筆の登場です。

鉛筆のほうがいいですね。鉛筆には鉛筆削りでしょう!

そんなわけで、久しぶりに鉛筆削りを買いました。

ハンドルをぐるぐるとまわして削るのも懐かしい。





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