1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】ことバンク

なかまくらです。

ひっさしぶりに、小説を。

軽ーいノリで書こうと思っていたのに、なぜか、

こうなっちまったぜ。

「ミナイミライ」が重すぎて、しばらく書けなかったような、

そんな気がしています。今年もそろそろ戯曲を書く季節がやってきた!

そんな気がしています。

それではどうぞ。

*******


「ことバンク」


          作・なかまくら



藤色の光が夜闇に乗じて差し込むと、ことの身体が輝いた。


夜が明ける少し前のこと。ことがそれに気づくことはなく、へその緒からじゅるじゅるとそれがひりだしてくる。それはうねりながら、形を考えるそぶりを見せる。足の数を増やしてみたり、角を出したり引っ込めてみたり。ひとしきり蠢くと、収まりの良い形を見つけたのか、ことの隣でシーツにくるまって大人しくなった。


 


目が覚めたことは、ああ、という嘆息を吐いてそれから、鈍い痛みをへその辺りに感じて、抑える。今日の遊びの予定はキャンセルね。


母親のことが、ドアをノックして、父親のことと一緒に部屋に入ってきた。それから、ことと、その隣に寝ているバンクに目をやって、「お祝いをしなくちゃね」と年甲斐もなくハイタッチをした。朝っぱらからいい音が響いた。


 


バンクが生まれたら、長老のおばばの所に報告することが習わしとなっていた。ことは両親に連れられて板張りの20面体のおかしな建物の一室に通された。ことが椅子に座ると、隣でバンクは同じタイミングで座った。まだ、何もしゃべらない。ことの意志で動いているような、そうでないような、不思議な感覚だった。6本ある足の内の、右の真ん中の足を上げてみようと、へそに意識を集中してみる・・・。


「さっぱりだめだ」思わず、声が出ていた。


「どうしたの?」母親のことが怪訝そうな声を掛け、


「まあ、何事も経験だからな」父親のことがしたり顔で頷いた。


バンクは、そんなことはお構いなしにすぅーすぅーと寝息を立てて眠っていた。


 



 


「バンクはね、あんたの分身なのさ」


おばばは、煙を空中にグルグルと捲いて見せた。


「こととバンクは複雑に混ざり合っている。無理に分かつことはできないね。バンクを育て、バンクと過ごしてみるといい」


「・・・バンクはどうすると消えるの?」ことがそう尋ねると、


「バンクが一生消えないものもいる」おばばは、大きな問題じゃない、とそんな調子でパイプの煤をカツンと落とした。煤は一瞬赤く燃えて、燻ぶってじとじととこちらを見ている。


「バンクが消えなければ、こととバンクはひとつになって、また、ことをひとつ生み出す。それだけのことだ。それがずっと続いてきた」


「ねぇ、バンクって、なんなの?」ことは不安げにそう聞いて、


「さあね、昔は必要だったと、言われているがね」


 


ことはバンクのしつけをしなければならなかった。散歩中に、ほかのバンクとケンカしないように。食事をした後は、歯を磨くように。言葉を覚えるように。悲しいときは泣くように、嬉しいときは笑顔になるように。そして、寂しいときには一緒に過ごすように。


 


「ねぇ、こと」1年は、こととバンクが親友になるのに十分な月日だった。


「バンク」言いたいことは、分からない。へそで繋がっているのに。


「バンクって呼ばないでって、言ったじゃない。私に名前をくれたのは、あなたが初めてよ」バンクは、少し不揃いな耳をピンと立てて抗議を示した。


「ごめんごめん、エチカ」ことは、エチカの背中をぽんとたたいた。


「・・・・・・昨日のあれ、怖くなっちゃった」エチカは震えるように半透明に黄色い身体を明滅させた。


「そうだよね。あんなの、あんまりだ」ことは思い出していた。近所に住んでいる少し年上のお兄ちゃん。ことにバンクが生まれたとき、いろいろと面倒を見てくれた。そのお兄ちゃんのバンクが、昨日、死んだ。前触れはなかったように思う。散歩コースの途中ですれ違おうとして、お兄ちゃんは立ち止まる。「ああ、僕はそういうことなんだ」不意に呟いて、ただそれだけで、バンクはあっという間にカラカラに乾いた樹木のようになって崩れ落ちた。お兄ちゃんはなぜだか、すっきりとした顔をしていた。


「ホント、意味わかんない」ことは、釈然としない仏頂面の自分の顔を鏡に見ていた。


「・・・私ね、本当は分かる気がするの」エチカは、ぽつりとそう言った。


「あのね、バンクはバンクとして生きていけないのに、ことはことで生きていけるんだよ。これって、私たちは、ことの一部だってこと」


「私にとって、なくてはならない一部だわ」あとから思えば、ことは、そんな趣旨のことを言ったような気がする。


「だからね、だから・・・・・・ああ、誰だろうなぁ、バンク、なんて名前を付けたのは。バンク・・・というか、私たちはブランク。空っぽの容れ物なんだよ、満ち足りるまでのかさぶたのような、枯れて落ちていくような、そういう類のさぁ・・・」


「私にとって、あなたがそういうものだって、私がそう思っているっていいたいの?」ことはムッとしてそう言い返した。


「私たちって、きっと昔はべつべつの生き物だったんだろうなぁ、ミトコンドリアや葉緑体がかつてそうだったようにさぁ・・・そうしたら、私たち、もっとちゃんと友達になれたのかなぁ」エチカはとめどなく吐露を続けた。夜が更けていく中、ことの頭の中にあの時の、お兄ちゃんの表情が張り付いていた。


 


 


 







拍手[0回]

映画「太陽」 観ました。

なかまくらです。

映画「太陽」 観ました。



世界中に、ウイルスが蔓延し、多くの人間が死んだ。

しかし、ウイルスに耐性のある人間が生き残る。

彼らは、強い光に弱く、太陽の下では生きられない身体になっていた。

彼らはしかし、優れた回復力と強い身体能力そして、明晰な判断能力を持っていた。

彼らはノクスと呼ばれた。

一方、ウイルスの脅威におびえながら生きる旧人類の生き残り。

彼らはキュリオと呼ばれた。

ノクスは反映し、キュリオは次第に衰退していった。

しかし、ノクスには致命的な欠点があった。子どもがほとんどできないのだ。

そんな真実を知らないまま、キュリオは、ノクスを夢見て、転換手術を受ける。

ある村でも、2人の若者が家族に翻弄されて、ノクスへの転換手術へと向かっていく。

ノクスになりたかった少年と、ノクスになりたくなかった少女。

最後にノクスになった少女は、ノクスにならなかった少年に、

こういうんですね。「今までいろいろ悩んできたのが馬鹿みたいだった」

それを聞いたノクスになりたかった少年は、ノクスになることを辞めるのでした。


そんな物語。

この映画の原作は演劇なんですよね。イキウメという映画。

2011年だったかな? に当時住んでいた広島から、大阪まで観に行って、

感動した思い出があります。

それほどに、この「太陽」は、私にとって大切な作品。

映画版は、家族に焦点を当てた物語になっていました。

だから、医者の金田の役割は映画版ではなくなっていました。

ノクスの出生率は、実質0、という部分は少し緩和されて、

ノクスは滅びゆくのだということは、すこしベールに包まれた感じになっていました。

まあ、思い出補正もあるでしょうが、舞台版の「太陽」のほうが好みでしたね。

ただ、

映画版の良いところは、

映像の美しさですね。

日本の映画特有の少しベールのかかったような画面。

アングル、風景。

そういったものが、「太陽」に対して持っていたイメージをさらにグンと

深めてくれたように思いました。

いい映画でしたよ。





拍手[0回]

ストレス耐性

なかまくらです。

まあ、詳しい事情は例によって話せませんが、

まあ、ごたごたしております。

あーー、きたきた。

ちょっとこんな感じに息苦しくなるやつ。

ストレスがいっぱいいっぱいですわ。

こういう時は、泳いだり、整体に行ったりして、

ストレスをグングン減らすしかないんですねぇ。

ストレス耐性って、会社員をやっていくうえで、

物凄く重要なパラメータだと思いますね。

なぜ、いろんな会社の入社試験に取り入れられないかが、疑問なくらい。

ちなみに、私のストレス耐性は、並み、ということだそう。

→ 疲れたなぁ.com





拍手[0回]

アンバランスな毎日

うわぁあああ、ぐらっぐら!

なかまくらです。

なんだか、いろんなところがグラッグラで、

ホント気が抜けない毎日を送っております。

いやー、これ、危ないでしょ。

手抜き工事ですわ。

そんな感じの集団を作ってしまったという反省があります。

どんな言葉を使うべきなのか、選ぶのに、時間がかかってかかって仕方がない。

そういう職業なんですよねぇ、先生って。

ともかく、明日に備えて寝よ。





拍手[0回]

蛙、飛び込む

なかまくらです。

スタンプを作ろうと思いまして、



自分で描いた池に飛び込む蛙って面白いんじゃないかっていううことで、

そんなスタンプを作ってみました。

届きましたよ~。さっそくポン!



いやー、ちょっと細かすぎたか・・・!?

字を丁寧に! というメッセージが、一番読みにくい(苦笑

送った画像のサイズが小さいのも原因かなぁ。

次を作るときの反省材料ですねぇ・・・。





拍手[0回]

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
2
3 4 5 6 7 8 9
10 12 13 14 15
18 19 20 21
24 25 26 27 28 29 30

アーカイブ

フリーエリア

ブクログ



ブログ内検索