なかまくらです。
「数学は最善世界の夢を見るか?――最小作用の原理から最適化理論へ」
イーヴァル・エクランド著 南條 郁子 訳 読みました。
光の反射と屈折の法則について、理解を深めたくて行き当たった最小作用の原理(停留作用の原理)を読み解くために、手に取りました。
自然は、作用(m∫v ds)を最小化するように運動を決定しているのではないか、と考えたモーペルテュイから始まる壮大な科学の取り組みを記述した本。自然界を統一的に表すことのできる究極の理論があるのではないか、と理系で学んだ私ももちろん思っていたし、いまでもワクワクするテーマで、それに挑んだ科学者、数学者たちの軌跡にワクワクしました。
解析力学をもっとちゃんと学んでからもう一度読んだら、理解が深まるような気がしていて、それが残念でした。
そのほかの残念な部分としては、著者がモーペルテュイのことが嫌いなのか、結局、最小作用の原理は何の役にも立たないかの如く扱い続けるために、最小作用の原理は結局正しいのか正しくないのかよくわからないまま最後の最後まで進んでいってしまうことです。最後の結論で一言触れられなければ、最小作用の原理などというものは結局存在しなかったんだな、と読者は結論付けてもおかしくないな、ということと、後半、社会の最適化についての議論へと進んでいきますが、数学的な議論から離れてしまい、哲学的な何かになってしまうため、著者の考えを聞かされているだけになっている気分で読み進めることになったのが、惜しいな、というところでした。
ガリレオの振り子の等時性の話といい、興味を途切れさせないで中盤まで読めただけに、終わり方は少し残念でした。