1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

「鹿の王 ユナと約束の旅」観ました

なかまくらです。

「鹿の王 ユナと約束の旅」観ました。




「精霊の守り人」シリーズで有名な、上橋菜穂子さん原作の「鹿の王」を

劇場版アニメ化した作品でした。

あらすじ

欠角のヴァンは、かつてアカファ国を守るために、戦った。

しかし、東乎瑠(つおる)帝国の前に破れ、アカファは併合されてしまった。

それから10年が経ち、ヴァンは岩塩の採掘場で奴隷としてはたらかされていた。

そんなある日、採掘場が狼の群れに襲われて、次々と殺されてしまった。

ところが、ヴァンとそこに居た女の子ども(ユナ)は、かまれたにもかかわらず、

一命を取り留めていた。それどころか、ヴァンには不思議な力が備わっていた。

狼たちは、黒狼熱(ミッツァル)と呼ばれる恐ろしい風土病を体内に持っており、

その病はアカファの民には罹らず、東乎瑠(つおる)の民には罹るのだという。

そこに呼ばれたのは、医術師ホッサルであった。

ホッサルは、生き残ったヴァンの血液があれば、この病を治せると判断し、

ヴァンの旅に同行する。

ホッサルに出会うまでの間に、ヴァンはユナを狼にさらわれてしまっていた。

何故、ユナをさらったのか。ヴァンはユナに、亡くしてしまった妻と子を重ねていた。

その旅の中で失われていくアカファの生活と黒狼熱の関係が次第につながっていく・・・。


という感じのお話でした。


Production IGが作っているだけあって、映像は綺麗だし、見やすかったのですが、

あれ? こんなに薄いお話だったかな? という印象でした。

ドラマとしても普通には面白いのですが、原作を読んだ故に、期待感は満たされず。

ホッサルってもっと、帝国内でももうちょっと微妙な立場だった気がするし、

ヴァンも、そんなに朴訥としたイメージじゃなくて、もっと考える男だった気がします。

でも、「精霊の守り人」のドラマの時にも同じようなことを思いましたから、

たぶん、上橋菜穂子さんの小説の空気感というやつが、映像化するのが難しいんだろうな、

と思うのでした。なんというか、架空の世界の生物学や生態学、文化などが

生き生きと描かれているんですが、それをうまく映像を観ても受け取れないんだろうな、

ということなんだと思います。

難しいな。まあまあ面白かった。でも、もっと面白くても良かったはず!

という感じでした。

ちなみに、原作を読んだときの感想は以下のリンクからです。

「鹿の王」読みました。





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【小説】アイディアの王国

なかまくらです。

久しぶりに小説です。この作品ですが、やっと書き上げた小説の一つです。このタイトルですが、本当に何度も挑戦したタイトルでした。最初に書いたのは、23才、大学院1年生の時でしたが、書き上げたものの、どこか納得がいかなかったのでした。それから、10年、時折思い出しては書いてみたのですが、書き上がらなかったのです。

それをようやく書き上げました。ちょっとは実力がついていると言うことなんでしょうか。

ともかく、どうぞ。



*******************

「アイディアの王国」
                          作・なかまくら

1.
 どこか古い洋館のようなそこに行けば、物語に出会えると聞いた。
工場の煙に包まれた町の外れまで行って、その先に広がる見渡す限りの耕作地帯も通り抜けて、それでもなお自転車を飛ばしていくと、その建物はあった。
両開きのドアを片方だけ少し開けて中に入ると、本が多く置いてある場所特有のインクのにおいがした。エントランスの中央に置かれた受付のカウンターまで歩いてみる。
「こんにちは」
声が2階、3階へと響くが、返事はない。扉を数えると、見える範囲では8つの部屋が見えた。
「あ、」
振り返ると、入り口から入ってきた青年が見えた。髪は縮れて長く、目を覆い隠していてその表情は知れない。脇には紙の束を持っていた。
「あっ、すみません」
「・・・っ」
縮れ毛の青年は、顔をそらして逃げるように階段へと向かっていく。
「あ、あの・・・」
青年はそのまま3階までいそいそと上がると、扉を開けて、静かに閉じた。ひらりと一枚の紙が落ちてくる。拾った紙には、「世界のたわし」と書いてあり、そこには多くの図版が載っている。
「たわし・・・?」
そこに、一節だけ、走り書きのように書かれている言葉が目に入る。
“わたしの代わりにたわしを置いていくの“
その瞬間に、何かが頭の中を駆け巡って、膝から崩れ落ちる。それは一体、どんな物語だろうか。身代わりにたわしを置いて、自由になった誰かの顔はほとんど見えないけれど、ニッ、と笑ってどこか遠くのほうに飛ぶように行ってしまった。
「あああ・・・」
大変なことをしてしまった、という罪悪感が、通り過ぎていった物語の強い刺激に飲み込まれていく。跡形もなくぐしゃぐしゃに潰されて、ほぐされた小さな心がぽつんと残って呻いた。
「・・・ああ」
2.
「物語の始まりのようだよ!」
受付の奥の扉が開き、声のしたほうから初老の男が歩いてくる。
「大変申し訳ございませんでした!」
謝るしかなかった。
「落ちてくる紙、拾うあなた。こういうときには預かりましょう、彼に届けますよ?」
「できれば自分で届けて謝りたいと思います」
「いいでしょう、そうこなくっちゃ。そうやって物語の登場人物に人はなっていくのです。彼のことを少しだけお話ししましょうか?」
「え、ええ・・・でもその前に・・・」
「その前に・・・?」
「あなたのことを少し教えてもらってもいいですか?」
「おっと、そうですか。私は、短編小説の道先案内人。たいした者ではないんですが・・・」
男は帽子にふわりと手を乗せると、大きく円を描いて膝まで持ってくる大仰な礼をする。
「・・・ここの管理人をさせていただいております、Uと申します」
「ご丁寧にありがとうございます・・・私は佐倉と申します」
「どうも、佐倉さん。ああ、その紙については、お気になさらずに。その物語は世に出ませんよ、たいした物語ではなかった」
「いえ、そんな・・・申し訳なかったです。こんなにも、こんなにも愛おしいものだとは」
心からの悔恨の想いをよそに、Uはどこか愉快な道化のようにどこかに誘おうとする。
「・・・して、今日はどうしてご来館を?」
ドキリとした。新しい物語は貴重で、リリースを待たなければならないものだからだ。
「あの・・・すみません、道に迷ってしまったんです」
変哲のない嘘しか出てこなかったが、Uは笑わなかった。
「あなたも薬は飲んだのでしょう?」
「・・・はい」
「食料もエネルギーも限られてしまった現代において、民衆はそれを受け入れるしかありませんでしたから」
「・・・私はまだ物心がつく前だったんです」
「意識の研究が進んだ現代において、そのサイエンスフィクションのような解決手段が考えられました。全体の意識を深層において中枢につなぐことによって、人々を一つの目標に向かわせようとする力学が生じるようになりました」
それにより、今までは成しえなかった我慢を理解できるようになったという。
「でも、その代償は大きかったと聞いています。そして、先ほどそれを知りました・・・」
佐倉はあの物語体験を一生忘れることはないだろう。
Uは怒りの籠っていない声で言う。
「分かっていたのですよ、政府の人々は。彼らはその生き残りを掛けて、物語を捨てることを決めた。一度誰かに読まれた物語は、誰にとっても一度読まれた物語となってしまうようになりました」
「物語というものに出会うということは、自分ではない誰かに出会い、自分を見つける体験なのですね」
「さあどうでしょう」
Uは、そう言って笑った。
それは、その人がどんな風に生きてきたかにもよるのさ。
3.
その洋館には一部屋の空きがあった。
佐倉は庭の掃除をしながら、そのカーテンの閉まったままの部屋を見上げていた。佐倉は期間使用人となった。洋館の庭に建てられた小屋には、彼の少ない私物を置いてある。開いてしまったアイディアの対価ということだ。
落ち葉を掃き終わると、洋館のほうから、悲痛な声を上げて、寸胴で鼻の大きな中年の男が駆け寄ってくるのが見えた。ニシヅカさんだ。
「きみ! きみは、いったい、何だね!?」
「あ、こちらでしばらくお世話になります、佐倉と申します」
ぺこりと、頭を下げると、そのまま頭を叩かれた。
「名前なんて、なんでもいいんだ! 問題は、きみが、この、芸術的な、落ち葉を掃いてしまったことにあるのだということに、なぜ気づけないのだ!」
中年の男は、きっとこの落ち葉に物語を見たのだろう・・・。佐倉の中には具体的な像は結ばれず、被害は起こらなかった。しかし、そこから生まれるはずだった物語は、誰かにとってかけがえのない物語だったかもしれない。佐倉は、申し訳ありません、と謝る。
「以後、気を付けるように・・・」
中年の男も、それ以上は何も言わず、集められた落ち葉をしきりに見ていた。
そこに、落ち葉を散らせて、Uの車が戻ってくる。
今日は工場区画を抜けたその先、中枢区へ献本をしに行っているはずだった。そこから戻ってきたのだろう。そう思って、見ていると、後部座席から、一人の少女が降り立った。年齢は13~15才くらいだろうか。
「どうしたんですか?」
「彼女に部屋を案内してやってください」
彼女はどこから、なんのために、ここにやってきたのだろうか。3階の階段から一番遠い東側の部屋が彼女にあてがわれた部屋になる。佐倉は、階段を上りながら、ちらりちらりと横目に彼女を見る。その着ている服から大事に育てられていたように見える。
「こちらへどうぞ」
「・・・・・・あ、」
扉の枠を飾る龍の彫刻に目を奪われた彼女は、声を掛けてもうんともすんとも言わなくなった。佐倉はしばらくそれを待つことにする。ここには変わった人が多い。普段、気にかけないような小さな石に躓き続けている人たちが集まっている。でも、その石が新しい物語の原石なのだと思えてくる。だから佐倉はそれをそのままにしておくことにしていた。
4.
「こんばんは。少しいいかな」
管理人のUが、小屋にいた佐倉に声を掛けてくる。
「珍しいですね、こんなところまで。紅茶でいいですか」
「ああ、頼むよ」
コートを預かり、壁に掛ける。それから、薄暗い部屋にランプに火を入れる。夜はずいぶんと冷える季節になっていた。
「彼女、少し違うでしょう」
座ったUが、そう言った。
「そうですか」
佐倉は、Uの意図が図りきれず、相槌を返す。
「彼女はね、アーティストの才能があると見込んでいるのです」
「アーティストですか?」
「そう、アーティストはね、味を加える人なのですよ」
「味を加える人」
「新しい価値観や要素を社会に加えることができる人種です。それがどういうことかわかりますか」
「さっぱりです」
「これは難しい話になります。主義主張もあるでしょう。しかし、私はあなたが鍵になると踏んでいます。あなたは深層ですべての人と繋がっている。そして、あなたは物語に対する感受性が高い。だから、あなたを通して、すべての人にアーティストである彼女の物語を届けることができると思うのです」
静まり返った寒い夜だった。Uの顔は怪しく微笑んでいて、それをランプの灯が揺らめいて、表情を確定させない。佐倉はそれに恐ろしさを感じた。ただ、同時に・・・、
物語の始まりに出会える興奮を抑えることができずにいた。









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「グッバイ、ドングリーズ!」観ました。

なかまくらです。

2月23日は祝日でした。

そんなわけで、映画館に入り浸っていました。

はしごすること、なんと3本!

のんびり感想を書いていこうと思います。

まずは1本目。

「グッバイ、ドングリーズ!」を観ました。



あらすじ

トトは、東京の高校へ進学したが、夏休みになって地元に戻ってきていた。

ロウマは、地元の高校に進学して実家の農家を手伝っていた。

二人は中学校の頃にはドングリーズを結成して、二人の秘密基地で普段の時間を過ごしていた。

ところがトトが東京に行ってしまったから、久しぶりの集合だった。

トトは東京の美容院で髪を切ってもらって、ドングリーズという名前もどこか恥ずかしそうだった。

そこに、今年はドロップというアイスランドから帰ってきた少年がいた。

彼らは、花火大会をドローンで撮影することを思いつくが、

その大枚はたいて買ったドローンは風に乗って遠くまで流されてしまう。

3人は、スマホのアプリに表示されるドローンの現在地を目指してちょっとした冒険に出かける。

その中で、ドロップがどうして日本に来たのか、そしてドロップが「最後の冒険」といったことの本当の意味が明らかになっていく。

途中、道に迷ってほとんど遭難したりしながらも、ドローンは見つかって、

3人は帰ってくる。


それから、少しして、トトとロウマはドロップが見たという滝を一緒に観に行くことにする。

そこには何故か公衆電話があって、宝物を教えてくれるという。

アイスランドの遠くまでやってきて、二人が公衆電話の電話ボックスで知った真実とは・・・


と、そんなお話でした。

監督は「宇宙よりも遠い場所」を世に送り出した、いしづかあつこさん。

そんなわけで、これは観に行こう! と思っていました。

「宇宙よりも遠い場所」でもそんな雰囲気はありましたが、あまりに大人が出てこないので、

少し違和感がありました。大人は何をやっているんでしょうね。

ただ、それぞれが悩みを持っていて、それをぶつかって吐露してわかり合って・・・

という青春な感じは相変わらず好きな感じでした。

すごく好きなところと、でも、「宇宙よりも遠い場所」みたいに細かいところなんてぶっちぎって面白い! に振り切るかというと、ちょっとチクチクする感じが残って少し残念だったところがあって、TVシリーズでやった方が面白かったんじゃないかな!?

という惜しさのある映画でした。

面白かったですけどね。


おわり。





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先を行く人4:発問する。・・・問題から「分かる」を引き出す

なかまくらです。

ついに、「発問」が来てしまいました。「発問」って、なんだか嫌いな言葉だったのですが、ようやく(?)ここに、私なりにたどり着いたのかもしれません。

さて。

今年度ももうすぐ終わろうとしています。

今年度は、物理を教える機会が多くて楽しかったです。

今年度の私の仕事での取り組み(目標)は2つありました。

1つ目は、ジグソー法に少し近いもので、対話をしながら結論を探るというもの。
物理なので、答えは決まっている。けれどもジグソー的に、それぞれが問題を解いてきて、
その要素を組み合わせて結論を得ようというパズルのようなものです。
1年かけて、2つだけテーマを見つけることしかできず、まだまだ発展途上という感じでした。


2つ目は、問題演習をする中で、「分かる」を育てる授業ができないか、という取り組みでした。
私は、その内容が理解できるというのは、「分かる」と「解ける」の両方が満たされている状態だと思っています。そのため、「分かっている」だけだと問題が解けないし、「解ける」だけだと実は分かっていないけどなんか問題は解ける・・・という状態になってしまいます。
ならば、問題を解く中で、「分かっている」かどうかを問う問題を作れれば良いじゃない。
そんなわけで、それって発問というやつでは・・・? ということになったのです。
授業自体は非常にゆっくりと進行しまして、1時間に1~2問しか解けませんでしたが、
継続は力なり。1年間で50問ほど、取り組めました。

発問・・・というよりも、ただのツッコミかもしれません。

例えば、2物体の単振動の問題です。単振動って、高校生が躓くポイントNo1だと思います。

だけど、問題はわりと解けるようになります。しかし、いつまでもふわふわしている。


だから、例えば、

「物体Bと物体Aの間の垂直抗力は単振動の間に変化し続けているけれど、物体Bは本当に単振動しているのか?」

といったことを聞いてみると、あれっ? となったりするものです。

また、もっと単純に、

「2物体A,Bの間の垂直抗力が負になるとAはBから離れると言うけれど、それは何故?」

と聞くだけでも、理由が分からなかったりするのです。

数学的には確かに離れるから・・・というところから抜け出せない。

Bはつり合いの位置を越えると、今度はバネの弾性力によって減衰する力を受けるのです。


そんなわけで、1年間取り組んだところ、

「学ぶ中で、1問1問の解き方、取り組み方が変わった。問題を深く考えるようになり、他の授業でも、それが生かされるようになった」

と生徒から嬉しいコメントをいただきました。


アクティブラーニングにはまだまだいろいろあるな、と新しい可能性を感じたのでした。

過去の研究記事はこちらです。







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「てんぐの小太鼓」使ってみました。

なかまくらです。

最近はキャンプブームらしいですね。

ロケットストーブなるものの存在を知りまして、災害時の対応として買ってみました。

「てんぐの小太鼓」というストーブで、火が煙突を吹き上がって、上にヤカンなどを

乗せれば、お湯が沸くという代物です。名前の通り、上手に燃やせばポコポコと

音が鳴ります。


サイズは高さ30cmくらいで、車にホイッと入れておくのに都合の良い大きさです。

実際に火を入れてみて気がついたのは、火をおこすことの難しさです。

これって・・・すごく科学的だぞ!?

動画とかを見ると、火起こしには割り箸が良いみたいですが、

やっぱり、細くて乾燥していると良く燃えるみたいです。

災害時用、ということで自動車に積みっぱなしにしたいので、

ライターじゃなくて、マッチが良いのですが、マッチだとなかなか火がつかない。

新聞紙から木に火を移そうとしても、新聞紙からはなかなか炎が上がらなくて、

炎が上がらないと木材に火は燃え移らなくて、じりじりと新聞紙だけが燃えていく。

火がついても、厚みのある木材はなかなか燃えないし、

木の密度の高い(重い)木材はなかなか燃えてくれない。

ところが木材も、黒く炭になってくると良く燃える。ブスブスと赤熱した状態で

静かに燃えている。

燃えているからといって、次々と木材を入れていくと、隙間が足りなくて

密閉されてしまうと空気が不足して火が消えてしまうのも面白いです。

空気を吹き込むと炎がボッと上がるのですが、吹き込み終わると、

空気がまた足りなくなって、直ぐに消えてしまう・・・。面白い!!



そして、写真の通りですが、木材に纏わり付くように火が回っています。

これを見て、ふと思い出したのが、「ハウルの動く城」です。

火の悪魔カルシファーが薪にしがみつく様子が、こんな感じだったな、と。

さすが宮崎駿監督。よく観察して作られているな、と思うのでした。

おわり!





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