1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】逆説

なかまくらです。

なんだかもどかしいものを書きたいんですよ。

そんなわけで、そんな挑戦です。どうぞ。


******

『逆説』
                          作・なかまくら



これは小説ではなく、逆説という文章の形式をとっている。
『5つの挙手があれば正しい』という言葉がある。
 
「ただいま」 そこは家の匂いがするとしよう、玄関のドアをガチャリと閉めたその時だ。茶色の足の甲が大きく見える靴が母のもの。おそろいの水色に白の水玉模様が2人の妹の。そして、黒い大きな靴があの人のものだった。この肩の荷が、家族を久しぶりに集めたのだとすると、ネズミに感謝するべきなのかもしれなかった。
 

 
あるときを境に、すべての画面の端に、ネズミが現れたとする。世界中の天才エンジニアたちが額を突き合わせてこの謎に挑んだというが、共通して得られたのは、“解なし”という、事実上の降参であった。その人類の頭脳の敗北宣言がニュースで流れたとき、突然、ネズミがしゃべったのだそうだ。
「私は、世界の外側の存在として、この意思を伝えている」
都旗ゆずるは、ブラウン管を通して、その放送を見ていた。その画面を所狭しとうねる竜を。
「3つのものだけを残すとしよう」
雲を纏い、竜は云った。「なーにを言ってんだかね、このネズミは」母がせんべいを食べながらそう言っていた。
「それ以外のものを棄て、もう一度見つめなおすのだ。・・・人選は既に為されている」
期限は一週間としよう。そう云って、竜は一か月ぶりに画面から消えていった。
 

 
・・・意外と騒然とはならなかった。それが中学生の妄想のようなものだったからだろう、その事件が起きるまでは。3日を過ぎたころ、予兆が起こった。2000メートルを超える空間に存在していたものがすべて消滅した。
都旗ゆずるは学校にいた。妙に窓越しに見える空が、澄んでいると思ったくらいだった。古典の授業中に突然校内に放送が入ろうとしていた。「ぜぇぜぇ・・・」放送の声は、息も切れ切れだった。よっぽど走ってきたのだろう。いったいどこから、何のために。「全校生徒は、今すぐ、下校するように!」
航行中であった旅客機は行方不明に。2000メートルを超える山々とその上に立っていた電波塔も消滅。人工衛星もすべて消息不明。誤作動で発射された大陸間弾道ミサイルもすべて2000メートルを超えたところで消息を絶った。
母は、仕事だろう。あの人は酔っぱらって寝ているだろう。小学校に通う妹たちを迎えに行くのは自分しかいなかった。ゆずるは手を挙げていた。「先生。」体育館の向こうのほうにいた先生がこちらを振り返った。疲れた顔をしていた。「ぼくは妹を迎えに行きます」
 

 
検討委員会の中で、ゆずるは浮いていた。
「分かるだろう、人類が生み出すことのできた、唯一の共通言語なのだよ。これを残さないでどうするのだっ!」数学者は言う。数学とは、人類がたったひとつ生み出すことのできた統一言語である。
「その言葉は、感情を持たないということがなぜわからないんだ!」芸術家は言う。芸術は、人類がたったひとつ生み出すことのできた統一の感動である。
「感情は、人を狂気に走らせる。心の安定を保たなければ、人類は少ないものの中で生き抜くことはできないだろうね」宗教家は言う。宗教は、人類がたったひとつ生み出すことのできた幸福感を与えるものである。
そして、少年は黙っていた。
「君の意見はどうなんだ」
ゆずるは、うまく言えなかった。なんとなく自信がないものだった。
 
家族は大事だ。
 
ただ、そう言えればよかったのに。
「ただいま」そこは家の匂いがするとしよう、玄関のドアをガチャリと閉めたその時だ。茶色の足の甲が大きく見える靴が母のもの。水色に白の水玉模様が2人の妹の。そして、黒い大きな靴があの人のものだった。
 
 
思えば、壊れてしまえばいい、と一番思っていることを守ってしまった。
家に帰ると、酒を飲むあの人が。あの人は酒を使って、いろいろな発明をしていた。酒で走る車、酒に電気を流してつくった照明。などだ。
だが、彼は、やっぱり酔っ払いだった。暴力を振るう。母も2人の妹もそれを嫌っていた。嫌っていた妹たちは、やがて外に出て行ってしまった。
彼には「家族」というものを知る由もなかった。だが、どうしてもほしかったそれを、手に入れる前に壊されたくはなかった。だから、あの時、家族に一つの相談をした。4つの手が上がる。父親の手が、ほしかった。『5つの挙手があれば正しい』という言葉がある。
これが家族だと、彼には認めたくなかったのかもしれない。
 
 
肉じゃがの匂いがする。
「ゆずる、ごはんよ」
「うん、今行くよ」
本を閉じると少年は部屋を出ていく。残された本の題名は「逆説」。







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「心が叫びたがっているんだ」観ました。

「心が叫びたがっているんだ」観ました。


横浜3本立て映画鑑賞のラスト1本。やっと感想書きましたよ。

さて。良かったという話を聞いて、観ました。こういうストレートなの、

昔だったら、見なかったんですが、「響け!ユーフォニアム」が良かったせいかな?

年を取ったせいかな? 観ましたよ。

どんなお話かといいますと、

小さいころのトラウマで、声が出なくなった主人公・順が、

学校の地域交流会の委員となって、ミュージカルで主役をやることになって、

頑張るという話です。んーーー、うまく言えない!

この映画の面白さをうまく伝える言葉を持ち合わせていないのです。

けれども、この映画は、面白い。

大切なことは、言葉にして伝えなければわからない。

それが、この映画の一番大事なメッセージなんだと思います。

そうして、彼らはだんだん仲間になっていって、大きな物事を成し遂げる。

それぞれに、それぞれの事情があっても、それらを乗り越えて、成し遂げる。

それがいいんだなぁ。

そんな良い映画でしたよ。





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Harmony-ハーモニー- 観ました。

Harmony-ハーモニー- 観ました。



伊藤 計劃(いとう・けいかく)というSF作家が書いた小説をアニメ化したもの。

この作家さんは、わずか34才でこの世をすでに去ってしまっているんですよね。

どんなお話かといいますと、

生まれた時から、WatchMeという健康状態をモニターする装置を身体に埋め込まれている。

この装置は、成人すると起動し、政府がWatchMeを通じて管理をする。

生活をコントロールし、他人を愛し、公共の為に尽くすようになる。

トァンは、学生のころ、ミァハという友人と一緒に自殺をしようとした。

ミァハは優しい世界を憎んでいた。

そしてそれから、歳月が経って、トァンはWHOで、健康管理の監察官をしていた。

そんなあるとき、世界中で、自殺事件が起こる。なぜ、集団自殺は起こったのか?

トァンはその真実を突き止めようとする中で、”意識”というものの研究をしていた

組織に行きつく。人の意識をコントロールする研究とは。


まあ、そんな感じのお話でした。

SF! ザ・SF!

なんといいますかな・・・。まず、すごく丁寧に作りこまれていたなぁと思いました。

いろんなところに、手がちゃんとかかっていて、余計なものが気にならない。

物語に没入できました。身体の健康管理の次に訪れるのは、精神の健康管理ですか・・・。

政府に管理された身体は果たして、自分のものなんですかね?

そして、精神の管理がなされたら、たぶんそれはもう自分じゃあなくなる。

自分ってやつは、こうやって、痛いとか、苦しいとか、あれは嫌だな、

あれがしたい、身体に悪いことや危険なことだってしてみたくなる。

そういうのをひっくるめて、初めて自分なんだと、この映画を見て、気づきました。

よく知らない他人に対して、思いやりをもって接しなくっちゃ、というのは、

行き過ぎれば、実はちょっと気持ち悪いことでもあるんだと思います。

もちろん、心底そう思えるならそれはそれで素晴らしい方なのだと思いますが、

それを強制されるのは違う。そういう”優しさに絞殺される”ような社会に対する息苦しさ

というのは、実在しているんだと思うんですよね。

まあ、そういうのは、いろいろあって、例えば、若手が頑張って働かないといけないとか、

高齢者が運転するときには、高齢者がブレーキの認知が遅いとか、

歩いていて横断歩道じゃないところを渡っちゃうとか、

そういうのを許してあげましょうねって、習うんですよね、自動車学校で。

それでいいのかよ、と思うわけです。

話がそれました。

ともかく、この映画は、丁寧に作られている良作でした。

惜しくらむは、この作家さんがすでに亡くなってしまっていること。

こんなに、命のことをまっすぐに取り上げた物語・世界が紡げる作家さんが。

もっと、多くの作品を世の中に出してほしかったなぁ。。。

おわり。

そういう風に





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デジモンアドベンチャー tri. 第1章「再会」 観てきました。

デジモンアドベンチャー tri. 第1章「再会」 観てきました。



全国10館でのみ、上映、ということで、ん~~~~~~~、と思っていたら、

まさかの一か月ぶりのお休み! これは、見に行く宿命・・・。そう、

宿命と書いて、さだめと読む! そんなわけで、横浜まで観に行ってきました。

どんな話かというと、

選ばれし子どもたちが、17才の高校2年生となった頃の物語。

街に電波障害のニュースが流れ、太一の前にクワガーモンが現れる。

そして、アグモン。グレイモンに進化して、クワガーモンを撃退するも、

太一は、その破壊の跡に、あのころとは違う感情を持った。

デジタルワールドの異変。そして、現れるアルファモン。

これから、どうなっていくのだろう。

そんなところで、1章は終わりです。


感想。

んーーーーー、★★★☆☆ 星3つ ってところです。

すごく面白くはない。あの頃の、デジモンを観ることはもうできないのだろうか、

と改めて、感じる出来でした。監督は、元永 慶太郎という人で、

わりと有名な人みたいですね。ヨルムンガンドのアニメの監督なんだそう。

ヨルムンガンドは、面白かったけどな。これは、違う感。

なんというかな・・・。

たぶん、この監督と私では、

デジモンに対する憧れ方が根本的に違っているんだと思いました。

最初に作られたアニメ・・・グレイモンとコカトリモンが戦う。

背景で流れていたのは、ボレロ。飽きることなく流れ続けるボレロの中で、

怪物同士がたたかっている。

その、デジタル化への見えない不安や社会の閉塞感のようなものが、

延々と繰り返される同じフレーズに表されていたように感じたのです。

そういう、思想というか、伝えたい思いというか・・・

・・・そういうものが伝わってこなかったんですよね。

簡単に進化して、オメガモンになっちゃうけど、選ばれし子どもたちの

それぞれの心の情動が、デジモンを進化させるんじゃなかったのかな??

そういう思いが、奇跡を起こし、デジモンを進化させて、道を切り開く。

それが好きだったのでした。

そういうのとは違うかなぁと。

ただ、デジモンというキャラクターを使って、敵を倒したいなら、観なくてもいいかな。


次を観に行くかはまだもう少し考えることにします。





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お出掛け


横浜なう









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