1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

【小説】網戸

なかまくらです。

小説を書きました。

どうぞ。


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「網戸」
              作・なかまくら


 網戸の前で本を読んでいたら、蚊が寄ってきた。網戸の切れ目を探しているのだろうか、或いは入り込める隙間を探しているのだろうか。網戸の端をツィーと、ヴァーチカルに上ってみたり、或いは、網戸に衝突してみたりもする。その様子を私は観察していたが、気付いているかどうかは伺い知れなかった。
手元の本の中では、密林の中に棲まうトラと思(おぼ)しき猛獣の痕跡を辿っていた。そのトラは、人の想像を遥かに超越した生態を有しており、それは社会的な生命体としての一面を有していた。そのトラは、古来から異星虎との交流を持っていることが描かれた壁画から伺い知られた。そのトラは、そのトラの貪欲でない支配欲によって、今の生息域を保っているだけで、時流を読み違えず、その貪欲さを発揮していれば、この星の支配者は人ではなかった。手元の本の中では、そのことに恐れ慄く探検家たちが、その飽くなき好奇心のために、踏みとどまれず、さらに密林の奥地へと進んでいく様が緻密に描かれていた。
 蚊に知性はあるのだろうか。蚊は、人の呼気に含まれる二酸化炭素に敏感に反応するというではないか。私は試みに、網戸越しに思いっきり息を吐きかけてみた。急激な二酸化炭素濃度の上昇。これは明らかなる罠である。而(しか)して、市販されている部屋用洗剤のスプレーを網戸越しに構える。すると、寄ってくるので、吹きかけてやる。それで、蚊はあっけなく飛べなくなって、落ちた。1匹、また1匹とその数が増えていく。3匹目は大きかった。いや、比べてみると、1,2匹目は小さかったのだということに気付いた。
 1匹目や2匹目と異なり、網戸の隙間から入ることはできないだろう。だが、入れたとして、この3匹目の蚊はそれをするだろうか。私は哀れな山椒魚の物語を思い出していた。岩屋の中で大きくなり、外に出られなくなる話だ。それから、こんなことを思いついた。万が一にもないことだが、私が、1匹目や2匹目の蚊が現れたときに、部屋への侵入を許し、それから度重なる痒みにも耐え、殺さずに血を提供し続けたとしよう。するとどうだろう、蚊たちは大きく育ち、そして、この部屋を安住の地とするのだろうか。草も生えぬ、人工物に包まれたこの部屋を終の棲家として選ぶだろうか。蚊たちはその覚悟をもって、この部屋への侵入を試みていたのだろうか。3匹目は、大きかった。これまでいくつもの殺意が飛び交う死線を搔い潜り、ここまで来たのだろう。その蚊は、網戸越しに姿を晒している私を見て、侵入を試みるのだろうか。或いは本能には抗えず、欲求がすべての知性や理性を悪い意味で調伏(ちょうぶく)し、侵入を試みてしまうのか。すなわち、改めて蚊に知性はあるのか、ということになるのだ。しかし、その問いの答えは分からなかった。スプレーのひと吹きで、地に落ちたのだ。スプレーには界面活性剤が含まれており、その性質が蚊の羽の表面を覆い、蚊を飛べなくするのだという。
 本の中では、探検家たちが洞窟の中で未知なる道具を発見し、驚きつつも持ち帰る相談をしており、網戸の向こうから私はそれを見ていた。





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NODAMAP第27回公演「正三角関係」観ました。

なかまくらです。

NODAMAP第27回公演「正三角関係」観ました。

配信されていたので、観ることができました。

3300円。・・・安い! けど、できれば生で見たかったのですが、

東京ではまた、コロナが流行っていた頃で、あえなく断念したのでした。

ところが配信されるということを聞き、この度、無事視聴。

毎回思いますが、NODAMAPさんのお芝居は、私の頭では処理しきれず、

いつも2割くらいしか、分かっていない気がするのですが、今回もその分かった範囲で、

感想を書いていこうと思います。


あらすじ。

物語は、長崎の原爆投下のお話。登場人物は「カラマーゾフの兄弟」がモチーフ。

主人公は花火師。弟は理論物理学者で、もう一人は、大浦天主堂に勤める料理人。

主人公は、父殺しの嫌疑をかけられ、法廷劇が始まる。

その証人として登場する人物の相関図から、その主人公を取り巻く、もうひとつの

物語が浮かび上がってくる。ロシアの諜報員。爆縮レンズ。ウラン鉱山の権利書。

そして、主人公とその父が貴重な、火薬あるいはグルージェシカという女性を

手に入れるためにやり取りされるお金。量子物理学に没頭する弟。

日本にも、原子爆弾が生み出されようとしていた。

裁判が行われているのは、チンチン電車が走り、大浦天主堂がある戦時下の長崎。


裁判の決着がつこうとしたとき、政府の暗躍により、主人公は無罪となる。

爆縮レンズを作り出すために、主人公の花火師としての技量が必要だったのだ。


無罪となる主人公。原子爆弾の炎に包まれる長崎。

生き残る主人公。死んでしまった、そのほかすべての人たち。


一人の人間を殺した嫌疑で裁判にかけられた主人公。

大勢の命を奪ったが裁判は行われない戦争。


いつか、花火によって、笑顔があふれる世界を信じてもいいだろうか。

主人公の独白で物語の幕は閉じます。



さて。

キャストは豪華でして。

松本潤とか、永山瑛太、長澤まさみが、3兄弟を演じており、脇を竹中直人や野田秀樹が

固めています。池谷のぶえもどこかで見たことあるな、と思ったら、イキウメの舞台で

観たことがあるのでした(たぶん)。

それぞれが、まくしたてるようなテンポでもって、台詞の応酬。そして、法廷と、

政治と、愛憎劇が、目まぐるしく入れ替わり、ごちゃ混ぜになっていく様子は、

恐ろしく緻密で、完成度の高いものだったと思います。


そして、目まぐるしい舞台の演出。アイディアが豊富でした。

テープで作られたリングや、録音機のテープレコーダーなど、惜しげもなく、

テープをびりびりと引き出す。傍受しているときのテープがビ、ビ、と引き出される音は、

唸りました。また、陽子や中性子の動きを、赤や青や黄の球を持った人達の踊りで表現する

のも、印象的でした。あとは、電車ですね。

電車を棒と半透明な布を広げたトンネルのようなもので、表現しており、これもすごかった。


全体としては、

おおよそ、20分くらいのところで、なんとなく物語の方向性が見えて、

最後は、原子爆弾が落ちるところまで行ってしまうだろうってこと。

主人公は原子爆弾を作り出してしまうか、父殺しをためらったように、

原子爆弾を作るのをためらって終わるのか、みたいな、

そんなところへ向かっていくのだろうな、と想像しながら見ていたのですが、

そこに、法廷劇がうまい具合に連れて行ってくれて、そのフワッとした終着点が

軌道修正されながら、中身を非常に濃いものにしていってくれた感じでした。


そして、ラストシーンで、爆発で、舞台全体に薄い布が掛かり、

すべて灰色になってしまった世界で、独白する主人公のシーンは予想を超えて、

迫真の感があり、震えました。


面白かったです。







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【戯曲】末裔

なかまくらです。

新作、書き上げました。

構想開始は2021年で、ちまちまと書いたり消したり、

4年かかりました。最初は、協力することの大切さとか、

人を信じることをテーマにするはずだったのですが、

途中で、怪獣の魅力にはまった時期がありまして、

そんな感じになりました。

それではどうぞ。


  2025.8.14 末裔 (80分; 男4 女1)
      *** 怪獣はいる。それは、物理的に建物が壊れるとか、そういう被害じゃないんだけどさ。
           人間の心の中に、怪獣はいて。毎日の満員電車に乗っているときにも、
           視界のどこかにきっと怪獣の片鱗は映っているんだよ。星を守る巨人の物語。







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演劇集団キャラメルボックス「かがみの孤城」観ました(DVD)

なかまくらです。

演劇集団キャラメルボックス「かがみの孤城」をDVDで観ました。

主演は生駒里奈さん。



あらすじ

安西こころは、学校でいじめに遭って、学校に行けなくなってしまう。

そんなとき、部屋の鏡が光りだし、不思議な城へと導かれる。

そこに集められた7人は、次第に仲良くなり、そして、

みんな学校へ行っていない中学生であること、

実は、同じ中学校へ通っていることが分かった。


城に集まった7人は、オオカミ様から、課題を与えられていた。

3月30日までに、願いが叶う鍵を探すこと。


3学期の初めの日、7人は学校へ久しぶりに行ってみる約束をした。

助け合えば、学校でもやっていけるのかもしれない・・・。


けれども、学校では皆には会えなかった。


そこには、時間を越えて集められた彼らの真実があったのだ。


最後の日、事件は起こる。7人のうちの一人が、

学校に行けない理由だった、継父との関係が悪化し、

期限を過ぎて、城に残ろうとしたのだ。


こころは、オオカミ様の謎の答えにたどり着き、そして、皆を救い出した。

それから7人は別れを告げる。

未来でまた会えることを強く願って。



という感じのお話でした。

それぞれが、悩みを抱えていて、それが明らかになっていく、

というストーリーって、高校生がオリジナル脚本を書くと、起こりがちな展開なのですが、

それがこんなにも面白くなるのは、流石でした。


舞台は背景に孤城がそびえたっているほかは、結構シンプルで、パネルを動かしたり、

机が置かれていたりするだけで、シンプルな感じでした。


大人になるときに、それぞれがいろいろな悩みを抱えて、学校に行けなくなるのって、

別に全然珍しいことじゃなくて、時々起こってしまう。


そのときに、どうしたらいいのかなんて、正解は見つからなくて、

ただ、それを分かち合ったりして、それを足掛かりに、もう一度勇気をもらえたら・・・、

もう一度前に踏み出すことを支えてくれる言葉があったら、

なんて素敵なことなんだろう、と思える、良いお芝居でした。


キャラメルボックスさんらしい、心温まる、よい舞台でした。

コロナ禍の最中であった2020年に行われた公演で、きっと、観に行こうと思っても、

行けなかったと思いますが、こうして、映像でも観れてよかったです。


おわり。





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新しい枕とそのカバー

なかまくらです。

枕を新調しようと思いまして、購入してみました。

枕って、本当に難しくて、ホテルで寝られないときってだいたい、

枕が違うから眠れない、私です。


そんなわけで、今使っている枕も気づいたときには、この枕でした。

たぶん、大学生になったときに買った枕だと思います。


そのあと、別の枕も買ってみたのですが、それもそこそこ使ってはみたものの、

先に捨ててしまいました。


しかしまあ、かれこれ、20年くらいになってきて、そろそろ穴も開いてきましたし、

洗ってみたものの、という感じだったので、いよいよ処分しようか、というわけで、

新しい枕を買ってみたわけです。

前の枕も捨てないまま、新しい枕で寝てみること3日。


初日は、朝、猛烈な首のこりに襲われましたが、2日、3日とだんだんと

枕なのか、私なのかがフィットしたような感じになってきました。


そこで、よし!

というわけで、枕カバーを買いました。

今治タオルのよさげな奴です。





ぐっすり眠れるといいなあ。






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