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なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

磐田市高等学校演劇祭「南へ」

なかまくらです。

磐田市高等学校演劇祭「南へ」を観てきました。

磐田市の高校、東、西、南の合同公演なのだそうです。

11年目ってすごいな。私が高校在学中にもやっていたんですねぇ。

で、今年の演目は、野田秀樹の「南へ」なのだそうで。

チラシを見て、「えっ」となる。「これやんの・・・?」という。

このお芝居、本で読んだことがありまして、「ううーーむ、わからぬ」

となったものでした。

あらすじ

南のり平は、火山観測所に赴任しにやってくる。
そこには火口に飛び込もうとしていた女がおり、
女に南のり平という名を奪われてしまう。
女は言う「あなたが南のり平であることをどうやって証明するの?」
火山は噴火しようとしていたが、データを読める人間は観測所にはいなかった。

そのとき、麓の宿には天皇の先触れを名乗る3人組が訪れていた。
この山に天皇がくる! ということを知った村人たちは大騒ぎになる。
この村も観光名所になって豊かになる! 人々は集まってくる。
南のり平という男は「火山が噴火する」ことを伝えるが、
火口に飛び込もうとしていた女(南のり平? あまね?)の問いかけをきっかけに、
本当に自分が南のり平ではないことに気付いてしまう。
一体自分は何者なのか。日本人であること以外に自分の何が曖昧ではないのか。
女は言う「私は記憶を学んだの」
女の話は誰かからの受け売りばかりだったのだ。
誰かの言葉を自分の言葉としてもう一度言うだけ。

女は300年前の古文書をまことしやかに読み上げる。
現在と同じような天皇の行幸の先触れ、南のり平というオオカミ少年の話。
ついに300年前と同じように噴火が起こると思われたその時、
火山活動は急速に鎮静化する。人々は村を離れ、元の静寂が戻ってくる。

女はテレビに映ってしまっていた。注目を浴びてしまっていた。
女は「連れ戻されてしまう」と叫ぶ。
どこから来たのか、と問われると「北から来た」と答える。
謎の男たちは女を連れて行ってしまう。

南のり平はしばらくして目を覚ます。
何も変わりのない観測所の風景。河口に飛び込もうとしていた女はどこへいったのか?
さっきまでそこにいたのに・・・、と、
一番最初、南のり平が観測所に赴任してきた時間のようだった。

おわり。


というお話で、
え、夢落ち? っていう(笑)。

この物語の気に入らないところは、「日本人である」ということを言うところ。

なんでこんなにストレートな物言いにしたんだろう。北から来たということは、

ん? 中国・・・というよりは北朝鮮のスパイかなんかなのかな? と思うわけですが、

そういうことを匂わせてもいいけれど、「日本人」とさえ言わなければ、

どこかそういう平衡世界があって、その世界からのスパイ

・・・とかそういうぐらいの感情で観れるのになぁって。

それと同時に、これを高校生がやっていいのか(笑)、とは非常に強く感じました。

戦争の頃の思想を感じて、現代の教育を受けてきた人間としては、

ひどく居心地の悪い気分になりました。伝えたい部分が別にあったとしても、

決して無視できない部分だ・・・。

ただ、露わに書くことで、代わりに伝わることもあります。

戦争の時、朝鮮人が井戸に毒を入れるのではないか、そう疑われて無実の朝鮮人が多く殺されたそうです。

あなたが疑われた時、あなたは自分が何者なのか、証明することはできるでしょうか?

また、この戯曲は奇しくも(なのか?)東日本大震災と時を同じくして書かれた作品でした。

人々は刺激を求めている。平穏な日常に変化が欲しいという。

変化に飛びつく。その渦中になった人間は、夢中になってしまう。

嘘も交えてまことしやかに話してしまう。

他人から次の発言を期待されることほど、恐ろしいことはない。破滅するだけだ。

人々はすぐにそれを忘れる。今の私たちが、もはや地震の事をああ、そんなこともあったねと、

思うようになってきているように。

ひとつ次元を上げようと思う。

このお芝居を観て、まず、結局何が本当なのかほとんど分からなかったわけです。

後ろで見ていた人も、感想・・・なにをかいたらいいのだろうか

・・・などと呟いておりました。

で、最後は元に戻るのですが、とりあえず、追ってみていくと、

嘘をそれぞれが持ち寄る。

火口に身投げをしようとした女の嘘に乗っかる。

するとまるでひとつの出来事が着々と進んでいるように見えて、

しかも、便乗してあっちこっちから嘘が噴出してきて、嘘の世界は固められていく。

ところが、どこかの段階から気付き始める。

というか、観客席では、最初から分かった上で見ている。

「これは嘘の世界の物語なんだ」

そういう約束で劇場に足を運んでいるわけで。ところが、このお芝居はもう一段、

観客を裏切りに来る。

「はい、さっきまでの物語は全部嘘です。適当に作ったものです。切り捨てて構いません」

オオカミ少年の一連の話で、すっかり嘘が露呈してしまってもう駄目だ、と、

観客は見切りをつける。まだ、一生懸命舞台上ではそれぞれの役が生きているのにも関わらずだ。

けれども、私にはそれは作者の狙いのように見えました。

醒めた目で事の成り行きを見ていました。あれ、演技をしているのは誰なんだっけ?

そんなことを考えさせられる物語でした。





さて、ここからはスタッフとかその他の話。

役者さんは、全体的に実に上手でした。よく練習されていました。

ただし、「上手だけど面白くない」という感じでした。

笑いを取る技術が未熟なのか? とかそういう問題というよりは、

んー、観にくい、という印象。どうしたらいいのかは・・・分からないです。

でも、最近そういうのばかり見ていたなぁ、となんだか今日ふと得心が行きました。

滑舌とか声量は一部の生徒さんはもう一歩、と言う感じでした。

個人的にMVPは道理(ミチスジ)さんの人か、VIP(伝書鳩)の人かなぁ。

綺麗に溶け込んでいて好きな感じでした。道理さんの人みたいな自然な感じで演技できる人って好きです。動きのバリエーション増えるといいですねぇ。VIPの人はダイナミックな(?)演技が滑らかでなんか実に楽しく見れました。ほかの役も見てみたい演技でした。

あまねさんとか南のり平とかずっと舞台に立っていた人も上手でしたよ。

はい。

スタッフの事。

まず舞台。ちょっと奥行きを使いすぎていて、遠い気がしました。

会場の前のほうの席、席の位置が低すぎて首疲れそうで座らないので、

役者さんが結構遠かったです。あと、平台が客席に完全に平行においてあって、

面白みがなく感じました。

それから、音響。・・・なぜ音響はなかったのでしょうか。

音響なしで、2時間保(も)たせるのは至難の業ではないかなぁと思います。

足踏みが音響効果の役目をしていたのかもしれませんが、それでもつらかったです。


さて、締めます。

今年初めて見に行きましたが、また来年も続いていくといいですね。

高校生が高校生活の中でお芝居をするというのは正直すごいことだな、と感心します。

自分は芝居するたびに情緒が不安定になっていた人間でしたので(笑)。

それでも、その時にしか出来ない貴重な経験だと思います。

またの活躍を期待しています。

(あ、公演情報とかってもらえないのかなぁ・・・)


以下、検索したら出てきた情報。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130321-00000018-at_s-l22

http://karakoro.hamazo.tv/e4302413.html

http://urazacho.eshizuoka.jp/





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