1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

演劇ユニットせのび「夏に冬は思い出せない」観ました(配信)

なかまくらです。

演劇ユニットせのび「夏に冬は思い出せない」が配信されていたものを観ました。

最近、有料で配信してくれるお芝居が増えて、現地に出かけるパワーがなくても

見られるようになったのは良いことですね。ただ、これは生で見たかった・・・!

というお芝居が増えるのも、事実・・・!

さて。

今回観たお芝居は「冬忘れ」という、冬を忘れてしまう病気が蔓延する日本社会のお話です。






このお話は、難解で、ちょっと全体像をつかみ切れていない感じが強いのですが、

不思議な魅力のある作品でした。


冬を忘れてしまったことで、冬に新しく友人と出会ったことまで忘れてしまった人。

その一方でそれを覚え続けている人がいるということ。

小学校の校舎が建て替えられて、小学校の思い出を思い出さなくなってしまった人。

祖母が認知症で、次第に孫を忘れて行ってしまうことに悲しんでいる人。

祖母に逢う頻度が下がって、祖母の存在が薄れて行ってしまう人。

小学校のことであった出来事をすべて覚えているのは二宮金次郎像。

冬に仲直りした夫婦はなぜ、一緒にいるのかを忘れてしまう。

山で遭難するカップル・・・互いを探しあう。

それは、互いになぜあったのかを思い出そうとすることの暗喩のようであり、

二人は再び出会えた。足跡を増やしていく。

人間は、辛いことを忘れることのできる生き物であり、冬忘れによって、

雪国に住む人たちの自殺率は減少した。

二宮金次郎は、語る。すごく昔には、地球の自転は今よりも早く、すごく未来には、

地球の自転は今よりも遅くなる。勉強しているから、そうなることを知っている。

覚えている。

けれども、人間は、恋人たちや夫婦たちがそうであったように、

友人がそこにいるように、

理由は忘れてしまっても、そこに相手がいることに順応しようとしている。

それは覚えているからではなく、存在することが大切なのかもしれない。

春が来ることが恐ろしい。死んでいた生き物がよみがえるようであるからだ。

冬を忘れたら、きっとそんな風に思うのだろう。


けれども、このお芝居は、冬を忘れても、たくましく足跡を増やしていこうとする

人々を肯定的に描こうとしているように感じました。


冬を忘れない人はその思い出を自分は覚えておこうとするし、

忘れてしまう人は、その思い出を忘れませんように、と願う。

「金次郎さん、もう、誰もあなたの話を聞いていませんよ」

と、最後に言われる二宮金次郎像。彼の悲哀をすごく感じた。


忘れてしまうことができない彼と、忘れたくないと願いつつも忘れていく人たち。

その対比が後半、際立ち、そして、人間の足跡だけが残る形で終演を迎えました。


金次郎の「勉強していてよかった」は、忘れられない金次郎なりの、

生きていく術であるのかもしれず、なんかうまくまとめられずにこのまま終わりますが、


それでもいいよね、と終わる、このお芝居の主張しすぎない感じが、不思議な魅力でした。

おわり。





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