なかまくらです。
少し前のこと。
「RITA&RICO(リタとリコ) ~「セチュアンの善人」より~」観ました。
静岡県の県民劇団SPACの作品。
ベルトルト・ブレヒトの「セチュアンの善人」を下敷きに描いた作品。
貧しいリタは、あるとき、地上に降りてきて様子を見ていた、神様に良いことをする。
すると、リタはたくさんのお金をもらって、それを元手に商売を始める。
ところが、そこにはたくさんの貧しい人たちが集まってきて・・・
リタは、自分が困ってしまうくらい、貧しい人たちを助けてしまう。
そして、リタは、リコという従妹の設定の、変装したもう一人の自分を作り出す。
リコは、利己的であり、言いたいことはすべていう。
リタは困るたびに、リコに頼るようになる。
リタは、飛行士を目指す男と恋に落ち、
金策に困った自分を助けてくれた人を裏切ってまで、飛行士を助けてしまう。
ここで、リコとなって飛行士を裏切って、
周りの人を裏切って、今あるお金で工場を作れば、
貧しい人たちをこき使って、お金持ちとなって、利己的な人間となって、
周りの人をみんな不幸にして、自分は裕福な暮らしができる。
リタは、リコになることを拒む。
もう、リコにはなりたくない、と悲しむのだが、
リタは泣きながら、リコへとなっていくのだった。
・・・というお話でした。
なかなかにしんどいお話でしたが、同時にすごく心をグラグラさせるお話でした。
自分のためだけに生きたら、きっと周りは不幸になってしまうから、
それぞれが周りに気を使いながら、周りを助けながら生きているでしょう。
けれども、本当は自分が一番かわいいのは当たり前で、
その心の葛藤の中で、上手に折り合いをつけて生きていこうとする。
けれども、本当に苦しくなったり、本当に貧しくなったとき、
きっと、我々は、リコになってしまうんだろうな、と。
それはいけないことだと知りつつも、それを受け入れるんだろうな、と
そんなことを思うお芝居でした。
ちなみに、「セチュアンの善人」の原作では、リコ(役名は原作では違う)が、
工場を建てて、周りをみんな不幸にしてしまうところまで描かれているそう。
観たくないような気もしますね(笑
おわり。