なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)
この世界の至る所は、本来色を持たない。
イデリオくんは、博士からそんなことを言われていた。当時、X才。
どうしてイデリオくんは、周りの空気と区別されていると思う?
どうして、どのように、何が原因で?
息をひそめて空気中に拡散している意識集合体、それが、ソケットモンスターだ。
ふむ。中には危険な奴ももちろんおる。
彼らはある一定以上の濃度に達すると気体→液体→固体と、変化するからな。
中でも最も危険とされているのが、イテモガスと呼ばれるソケモンだ。
イテモガスの生態はほとんど知られていないが、ファルデンルーワス博士の研究によれば、
理論上はガス分子同士の分子間力は、他のソケモンの数百倍と言われているんだ。
イデリオくん、君も彼らをガス化し、人間の住める土地へと世界を変化させた歴史は知っておるだろう?
イデリオくんは久しぶりに自分の名前を呼ばれて「あっ、そうかおいらの名前、イデリオだっけ?」
と思い出した。
博士は続ける。
いいか、君にはこの3体のソケットモンスターから一体を選んで旅に出てもらうことになる。
途中には事務所があるから、そこでソケモンに流す電流の値などを鍛えてもらうとよい。
何?
ソケモンの扱いを知らないだと!? お前さんは学校で何を学んでいたんだ。
いいか、ワシが手本を見せてやるから見ておれ。
博士は、ソケットに電球を取り付けると、電流を絞って流した。
「いけっ、ソノラグシ!」
その瞬間、光が周囲を包み、収まった時、そこには2体の怪物が姿を現していた。
「ソノラグシ、ヒートアップ!」
技が繰り出される。対峙する2体のソケモン。
イベリオくんはその様子に目を輝かせていた。ずっと昔のことである。
ずっと遠く、どこか離れた世界の事である。
*
「おい、井部。なんだ、そのデザインは?」
デスクに散らかった紙。その一枚を上司が拾い上げる。
「ソケットモンスターっていうんです。略してソケモン」
井部はおどけてそんなことを言ってみる。
「アホか・・・」
「・・・ですよね」
スケッチの数は膨大。
目の裏側ではまだ大冒険が待っていた。
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