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なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

広島大学演劇団21生卒業公演「ダブリンの鐘つきカビ人間」 観ました。

なかまくらです。

広島大学演劇団21生卒業公演「ダブリンの鐘つきカビ人間」 観ました。





あらすじ
ある霧の深い森、その近くにある一軒の家。
家には一人の老人と、旅行で村を訪れていた若い夫婦がいた。
霧の中からは誰がついているともわからない鐘の音が聞こえる。
老人は話し始める。
霧の中にかつてあったその村で流行った疫病にまつわる顛末を、
カビ人間になった男と思ったことと逆さのことしか喋れなくなった女の悲劇を。

村は疫病の蔓延を防ぐために封鎖された。
村人は羽が生えたり、電気人間になったり、目が異常に大きくなったり、といろいろな症状に苦しんでいた。そんな中、元々強欲で傲慢であった男はカビ人間として村じゅうから蔑まれるようになっていた。
村人を救うため、若い夫婦はボーグマホーンという何でも願いが叶うという剣を探しに出ることにする。
反対のことしか言えなくなっしまった娘のフィアンセである戦士も途中で仲間に加わり、一行はボーグマホーンをついに手に入れる。
村では反対のことしか言えなくなった娘をカビ人間がかばったことをきっかけに2人が心を通わせていた。
ところが、市長の計略によりカビ人間は村人によって処刑されようとしていた。
ボーグマホーンを手に戻ってきた戦士は1000人の人間を切ると願いが叶うという剣に悪党の血を吸わせていく。ところが、あと一人、というところで反対のことしか言えなくなった娘がフィアンセから剣を奪っていく。
娘は、凶弾に倒れるカビ人間をみる。
「おまえは何よりも醜い!村人の誰もがおまえを素敵だと言うが、私だけはおまえのことを憎んでいる!」
反対のことしか言えない娘はそう言って、自分に剣を突き立てた。
2人は死に、疫病は治った。
娘は、自分たちの命を救うことよりも、村人を救うことを選んだのだった。そうすることで、自分たちの幸せを得ようとしたのだ。

話は終わり、若い夫婦は涙を流しお互いに寄り添っていた。老人の手には1000人の人間を切ると願いが叶うというボーグマホーンがあり、若い夫婦の血がついていた。


というお話でした。




はい。
うん。
よくできていました。
笑いあり、涙あり。
ダンスもよく練習されていたし、SEも楽しげに配置されていて。
役者は何人か練習不足を感じる浮き方をしていましたが、主役級の方々はよく頑張っておりました。

ただ、童話のような世界観を演劇らしくしている部分が薄っぺらく感じました。演劇のファンタジーはなぜこうも難しいのか(笑)。なぜこの本を選んだのか。今伝えたいことはこれだったのか?
娘が村を救ったところ、戦士のその後を描かないところ、夫婦が別れるために旅行にきていたのに最後には絆を深めるところ、などがなんだかうーん・・・です。また、舞台の転換が多く、場転に工夫がなかったためしんどく感じました。場所が切り替わるというのはもっと演出が意識した方がよかったかな、と。剣の入手のクイズ番組もなんだか、世界観をぶちこわしているように見えて、なんか好きになれなかったです。

スタッフワーク:
大道具ですが、二階が両側にあり、頑張ってたなという感じはしましたが、高さが左右対称なのとか、鐘つき台より高いところが舞台上にあるとか、段差が前にせり出しすぎていてなんか窮屈に見えるとか、手摺りが不安定すぎて冷や汗ものとか、気になるところが多数ありました。階段の簀の子状になっているのとか、よかったけどね。

衣装と小道具はよくできていました。特に小道具は光っていました。ボーグマホーンが光ったり、柿の木とか、ほかにも多数。あ、でも電気人間は蛍光色で無駄に目立ちすぎです。電気人間って言う設定なんて後半どうでもよくなっていたと思うので、もっと地味にしておくべきでした。全体的に村人の服も白じゃなくてもう少しくすんだ色の方がよかったかなと思います。衣装が照明で綺麗な色になりすぎた気がしました。


演技の良し悪しはよく分からない私ですが、
押目さんは、押目侍の押目さんでした。剣士姿が勇ましい。走ったりすると「あ、押目さんだ」、っていう。あと、ドヤ顔ね(笑)。いや、勇ましかったです。
戦士の伸哉くんは年とってました(笑)。抜群の安定感が現れだして、どこか危うさがなくなって、まとめてきた感じ。小池君にキャラとられ始めています(笑)。落ち着いてるので安心して見られるし、構えに貫禄はありました。
和俊君は今回悪役市長として登場。そうか、その手があったか!と配役した演出の三村さん、木邨さんには拍手。だけども、なんかもうちょっと悪っぽくできたような気がする。いや、実に楽しませてくれましたが。
侍従長の藤井くんは、鉄砲の件がいらないよね。流れが異常に悪くなっていた気がします。誠実な男と後半のギャップ。よく出ていたと思います。
王様がよかった。上手でした。
村人たちは多すぎ(笑)。目立ってやろうという野心がありすぎてやっぱりこれも流れが悪く、物語全体としてこの部分が大事なのか大事でないのか分からなくて、見づらかったです。後半は盛り上がっていて、よかったです。

斉藤さんはマイクもてて良かったですな。でも、全体的に斉藤さんでした。高木さんも高木さんでした。ゲロッパ生き生きしすぎ(笑)。まあ、ふたりとも実に楽しそうだったので良かったです。

森くんは悪神父として登場でした。前半苦しいところに颯爽と登場して舞台を暖めるところはさすがでした。19の卒業公演の「レンズ」のミゾベ的な、お父さん的なポジションで安定感抜群でした。

藤田くん好きだわ~。目デカ男似合ってました。ちょっとわくわくさんぽかった。

さて、21にはだいたい書いたかな?


さてさて。

このお話ですが、童話の体をとっていますが、なんだか何が伝えたいのだろう、というお話でして。

ものすごくシンプルにとらえれば、
カビ人間と、カビ人間を愛する娘が村を救う話。

付け加えるなら、カビ人間は反対のことしか言えなくなった娘の「あなたが素敵だ!」と言われたことを勘違いして、人の温かさを知ったせいかもしれない・・・。

カビ人間は、鐘をつくことにどうしてこだわったんだろう。カビ人間が鐘をつきにくると、村人たちが信じ集まるのはどこか滑稽です。彼らはカビ人間の何を信じていたのか。
カビ人間は村人が手に手に武器を取り集まっている鐘つき台にやってきます。彼にとって、鐘をつくことは誇りであり、神様はその行いをきっと見ている。彼にとっての救いとは何だったのだろう、と考えてしまいます。カビ人間は「自分は村じゅうから嫌われている」と言う度にどこか傷ついているのを隠して笑うように言っていました。本当は愛されたいと思っていたのでしょう。でも、彼にはどうしてそこにいることしかできなかったのか。彼には彼を愛する娘ができて、居場所を守ろうと思ったのか、それともほかの生き方を知らなかったのか。ただ、私にはカビ人間も村人たちもひどく滑稽に見えました。それはほかに居場所を知らずに自殺していく子供たちのようだ、と。私はそんなひねくれてしまっていますが、後ろの席で見ていた高校生はぐすんぐすんしていました。誰かに好かれたいという気持ちで動くのではなく、神様がきっと良いようにしてくれる、という気持ちで動くカビ人間の純粋さが心を打つのでしょうね。


さて。

私が一番多く一緒にお芝居をしたのは21生であったと思います。彼らは個性豊かでまとまって何かをすると言うのは苦手なメンツ、という印象でした。しかし、まあ、途中で離れてしまった人が多くいたのは非常に残念でしたが、最後に無事卒業公演を行ったこと、卒業公演にふさわしい素敵なお芝居を作り上げたこと、大変なことであったと思います。

何はともあれ、楽しかったならよいのです。学生のサークルなのですから。


お疲れさまでした。

おわり。

 









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