なかまくらです。
HPの1000HITSリクエスト小説です。
リクエスト「レベルが99なのに、魔王に勝てない勇者のはなし」
ということで、えー・・・・・・。
ま、どうぞ(笑)
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ポテンシャルさん、勇者さん
作・なかまくら
2011.10.29
「ゆうちゃよ、どうやらまけてしまったようぢゃな」
その声で、ユウチャは目を覚ました。堅いベッドの上。知らない天井。
そこにあっかんべーをしたおじいさんの顔がフェードイン。そして、一言。
「センスがない!」
ツバをナガライア地方にあるという伝説の滝の如くぺっぺと飛ばされて、ユウチャはべとべとになった。しばらく経つと、べとべとがカラダに吸収されて、ユウチャは元気になった。
「・・・あいかわらず、清清しくない回復だ・・・」
ユウチャは足に力を入れて立ち上がると、部屋の壁にかかっているタオルを手に取る。
「どこへ行くつもりぢゃ?」
その厳かな声に大気が震える。畏怖、おじいさんは神様だったら。
「風呂だよ。カラダがべとべとで腐りそうだよ、神チャマ」
イェス、彼はチャマ界の神。(注:この物語は実際の人物、団体とは一切関係がありません)
ユウチャの99%は神チャマのツバでできている。
現在のレベルは999、攻撃力999、防御力999、魔法攻撃999(ただし、技を覚えていない)、魔法防御999(ただし、瞬きが激しい)、素早さ999、賢さ999(ただし、戦いに限る)。
で、あった。現在、魔王女っ子のまおちゃんに、1024連敗中。。。
きいっと、
風呂場のドアを開ける。
豊かな水を湛えた湯船はまるでノアの箱舟。
ざぶんぐる。
問)例をあげよ。
(解)
ゲッコー鳥の鳴く、街角。ゲコゲコ。
たったったっ、と軽やかなリズム。揺れる食パン。あらぶる鞄。
曲がり角にて、ふたりは運命の出会い。
しかし、ユウチャのレベルは999。磨き上げた肉体。強きをくじき、弱気をくじびく正義のココロ。所謂レベルMax。成長の限界。対するまおちゃんのレベルは9999。走る速度は光よりも速い。
そう、光よりも速い。
ユウチャの音速を超える域に達しない言葉は、まおちゃんに届くことはなかった。
引き離される、「あのっ・・・」というユウチャのどうでもいい第一声。慌ててあげようとした第二声。P波とS波はP波の方が速い。
そして、まおちゃんは、魔王女学園にたどり着いた。そこは男子禁制。
ユウチャはどんな逆光にも諦めないココロを持っている。手にはポラポラアンドロイドカメラという、ファインダーに収めた人のココロを奪える神のカメラ。
魔王女学園の門番は、こんばんは、
と、声をかけるユウチャに、目にも留まらぬ速さで、ババチョップをくりだそうとしている。
ゆうちゃ は どうする?
選択の余地はある。
たたかう。アイテム。にげる。
さあ、どれだ・・・。
ユウチャはアイテム、薔薇色のシンフォニーを使う。
門番のおばばは、深い眠りにつく。いびきは天高く、シンフォニーを奏でる。そう、薔薇色のシンフォーニ。
ユウチャは敵の城に入り込むことに成功する。
城の内部には柱がたくさん立っており、白塗りされている。さらに、しゃがんで進むユウチャの上のほう、部屋にとりつけられた無数の窓からはよく分からない記号の数々が、聞こえる。
「えー、ここはテーラー展開をしますと・・・それで、エックスゼロはシグマの手にかかっていますので・・・」
ユウチャは戦慄の葡萄前進を進める。そのとき、魔電話ケータに神チャマからススメールが届く。
『帰りにりんご買ってきてちょ』
怒りを原動力に変えて、ユウチャは進んだ。魔女子更衣室。扉は既に腐敗が始まっていた。入り口。
ユウチャの目とおでこがキラリとぴかる。正直まぶしい光に、ドアが開く。
ハッとする、ユウチャ。
見上げる先に、アングル的に、魔女っ子さん達の、可愛らしい、その、あの、ゆるして、のああああっ、ぐはああっ、まじ、やめ、え、ツバくさい?
こぽこぽこぽ・・・。
お風呂のお湯は、ユウチャの傷口に染みた。
*
風呂をあがると、神チャマはニヤニヤしていた。
ユウチャはなんとなく、寒気がする。風呂上り、今は冬。滴り落ちる、液体。
神チャマはのたまった。
足りないものが分かったぞ!
眉毛からできたヒロインは、ポテンシャルさんという名前で、
魔女っ子のまおちゃんと互角の角度で学校に登校して、互角の戦いを日夜繰り広げていた。
それを見たユウチャは、旅に出ることにした。
置手紙には「探さないでください」
*
この旅の途中で、ユウチャにはたくさんの仲間ができ、
まおちゃんとの戦いにも無事勝利したことを、
最後にこのユウチャの書に・・・・いや、この勇者の書に付け加えておこう。
そうそうポテンシャルさんは、その才能を活かして、世界を平和にする旅に出ましたとさ。
めでたし、めでたし。
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あとがき
HP1000HITSリクエスト「レベルが99なのに、魔王に勝てない勇者のはなし」でした。
これで、よかったのでしょうかww
ボツ案
私の仕事は大抵こうと決まっている。
私の特技は逃げ足が早いことだ。こと、危険察知だとか、そういうのは天才なんじゃないかと、思うこともしばしばあるのだ。
あ、ほら、灼熱の炎が来るよ。避けなきゃ避けなきゃ、やられるよ。
ゲームオーバーになるよ。
問題は、すでに私が死んでいることにある。
*
石畳の地面が大きく抉れている。
壁には青いローブを纏った青年がオブジェのごとくめり込んでいた。
次の瞬間、壁ごと鋭い槍で貫かれる。青年はビクリとも動かなかった。
激昂した魔法戦士が落ちている剣を拾い、駆け出すと捨て身の突きを魔王に対してくりだす。
数多の魔物を屠った伝説の剣。全体重の乗った必殺の突き。
獣のような雄叫び。
突き刺さる。
肉を、組織をぶちぶちと切り裂く音がする。
獣のような断末魔。
鋭く振られた腕から、屍骸が地面にずるりと落ちた。
長く伸びた爪の先から、ぽたり、ぽたりぽたりと赤い血が地面に滴り落ちる。
ぽつ、ぽつ。
それは静かに広がり、魔王を中心に魔法の陣を描く。
命と引き換えに発動する究極魔法、ヘルホライズン。国の三賢者が編み出した世界を終わらせる危険のある魔法。
燃え上がるように立ち上った白色の光が炎のように揺らめきながらその半径を狭めていく。
「やったか!?」
半径ゼロとともに、空間すべては光の中に包まれていた。聖なる光がすべての影を、闇を、かき消した。
勇者は先陣に立ち、巨大な期待と、小さな絶望を抱えて剣を構えていた。
―これでダメなら、もうなにをやっても・・・
そんな思いが脳裏を過ぎった瞬間、何かが目の前を通り過ぎた。
*
悲鳴を上げることもなく、勇者の頭部が三つにスライスされた。両目がひとつの切片に揃って載っていた。
・・・ボツ。