なかまくらです。
たまには小説。ワンアイディアの短いのです。
オードソックス
作・なかまくら
2014/01/19
「全自動でセックスをするAVを見たんだ」彼が作業をする傍ら、そんな話を繰り出した。
「全自動で!?」僕は思わずそちらを見る。
「そう。全自動なの。オートセックスなんちゅうの? そういうやつ」彼は作業をする手は止めずに話を続ける。
「どういう感じさ」僕も作業に戻る。
「うまく説明できないんだけど、見るとまさに、そういう感じなんだよ」彼は話したいように話す男であった。
「なんもその良さが伝わってこないんだ。でもすごく興味が湧くな。観てみたいものだよ」僕はくだらない話の踏切を見つけて、見切りをつけようとする。
「それが、どこで見つけたのか、いつ見つけたのか分からなくなってしまってしまって・・・」彼は語尾を何故か繰り返している。
「よほど大事に隠したわけだ。父ちゃん母ちゃん嫁さん息子、孫娘にも見つからないように」僕はくだらない冗談を飛ばすことにする。
「そういうことになるかな」彼は妙に神妙そうにそう言って、話を区切った。
*
「まずは典型的な色を決めていこうと思うんだ。」
―典型的な色ですか?
「そう。例えばほら、地面は土色。空は水色。海は青や緑や白。雲は灰色。」
―彩り豊かで、素敵な世界が出来そうですね。
「そうだよう。そういう世界を創ろうとしているんだから。」
―世界をおつくりになるんで?
「そうだとも。だからこうして歩き回っているんじゃないか」
―でも、飼育委員は創らなかったじゃないですか。
「この宇宙を創ってから100億年くらいがたったかな?」
―ええ、たった、百億年くらいがたちました。
「そろそろ、歩き方を覚えて動き回るというのもいい。どうだろうか。」
―あなたがそう言うならば。
「そうだよう。そうだろう。君に飼育は任せるよ。エサやり、忘れないようにね(ニヤリ)。」
―質問いいですか?
「最初からインタビューの様相じゃないかい。」
―そう言われてみればそうかもしれません。
「どうぞ。」
―土色に塗りすぎたかもしれませんね?
「そうかなぁ」神様は土色の靴下で歩いてきた道を振り返る。
その星は火星(マーズ)。まず初めに創った星。
*
すべての芸術家たちが王様に集められた。王様は玉座の上からこう言った。「太陽の色で空の天井を塗ってき給え」と。世界はだんだんと真っ黒に塗り潰されていく未曾有の危機だった。王様の顔も薄い肌色に塗り替えられていた。大臣は真っ青だし、まだ若いお姫様の真っ白だったお顔だって、今は色がついて少し見づらくなっている。芸術家たちは太陽の色を探し始める。黄色でもないし、白でもない。夜は黒く塗りつぶされるのに、白い色は太陽に似ても似つかないことに芸術家たちはようやくはたと気が付いた。太陽色が見つからない。それさえ見つかれば、それでいいのに。うまく説明できないけれども、まさに、そういう感じなんだがしかし。