なかまくらです。
タイトルは同タイトルというお題を決めて、みんなで書き合おう!
というところからの出自なので、なんかファンシーですが、
中身は、可愛くはないです(笑
最近、ずいぶんと哲学的である私です。どうぞ。
「現代プルプル」
さく・なかまくら
ゴミ捨て場でな、やり合ったんじゃに。
ひどくしわがれた声だった。鉄筋コンクリートの、優しさのないビルとビルの擦れそうな、隙間の奥のほう。室外機の上に彼は座っていた。
お前の祖父(じい)さんはな、そりゃあもう、ずる賢かった。
フッフッフ・・・、と笑うとそのすっかり老いた唇から、恐ろしく艶のある歯茎と年季の入った鋭い歯がのぞいた。
老猫は未だに爛々とした目をして、こちらを見ていた。
ゴミ捨て場でな、やり合ったんじゃに。祖父さんは、空も飛ぶじゃにゃか? あと額(ひたい)1つ分くらいで、ひゅっと、空に舞い上がるのが、得意じゃったに。でもにゃあ、あいつは、死んじまった。
ある日のことだ。いつものようにゴミ捨て場に行くと、あいつは、様子がおかしかったに。俺の姿を見ると、あいつは少し安心した顔をしたに。その意味が、当時の俺にはわからなかったに。あいつは、ゴミ袋にその体を横たえたまま、こう言ったに。
「これで、ようやく向こう側へ渡っていける・・・」
お前の祖父さんは、もともと渡鴉だったんだに。それは知っていた。だから、あいつに俺は洒落たつもりでこう言ったんだに。
「おう、後のゴミ捨て場はまかせろに!」
あいつは、笑って逝った。身体には焼け焦げた跡があって、雷に打たれたようだったに。
俺は、あいつを食った。
その味が、美味かったかと言われると、分からない。経験があるだろう、味のしない食事だった。味覚という感覚は、感情と結びついているのだと初めて知ったに。生き残るために、あいつの分も生き延びるために、食ったんだに。
老猫の顔は見えなかったが、その話し振りは、なぜか終わりが近づいていることを予感させた。
「今ならわかるに」
老猫は立ち上がっていた。その四つ足は震え、もはや野生としての終わりを迎えていた。
「先に死んだものが、後に生きるものの助けになることは、何も可笑しいことではないんだに」
命はそうやって巡るものだとようやく分かった。
もうすぐ、俺も渡るんだに。お前の祖父さんと同じように・・・。
しかし、若鴉には、意味が分からなかった。
ただ、このプルプルと震えている生き物が死んだら、食べてしまおうとは自然と考えていた。