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1cm3惑星

なかまくらのものがたり開拓日誌(since 2011)

ウィザーズ・ブレインIX 破滅の星〈上〉読みました。
なかまくらです。

これは、感想を書かねば・・・! というわけで、久しぶりに感想記事です。


人類と魔法士の共存を望んだ青年 天城真昼が前の巻(Ⅷ巻下)で一般市民に殺されてしまって、退場。Ⅸ巻の上巻だけは驚くべき早さで刊行されましたが、下巻が出るまでは、読むまいぞ、と思っていたら、9年の歳月が流れたのでした。

さて。
天城真昼の死と大気制御衛星による雲除去方法の発見を駆動力にして物語は進んでいきます。遮光性の高い人工雲を除去するには、i-ブレイン(生体コンピュータ)をもたない普通の人間を大幅に減らし、i-ブレインをもつ魔法士の脳をリンクして大気制御衛星から雲の構造に対して、大規模な演算を仕掛ける必要がある。
そのために、魔法士の国家である賢人会議は、南極上空に浮かぶ大気制御衛星の奪取と、核戦争の末に総人口2億人まで数を減らしていた人間側の拠点である6つのシティへの破壊工作を繰り返していた。天城真昼を失った賢人会議の作戦は、人類殲滅へ向けて合理化されていく。
天城真昼の死は、世界中の世界を憂う実力者たちを動かす。世界各国で人間と魔法士の最終戦争を止めるために密やかに動いていた人々が、世界再生機構なる第三者勢力となっていく。
上巻の終わりには、賢人会議の長サクラが大気制御衛星に乗り込み、1巻の主人公天城錬と量子力学的制御を操るイルを圧倒し、衛星を掌握するところで終わります。
どんどんと極端な方向に進んでいってしまい、サブタイトルの通り、「破滅」を強く感じる上巻でした。現在の私たちの世界でのロシアとウクライナの戦争の情勢を思うと2015年に始まった物語がこのタイミングで続きを刊行されたことは、大きなメッセージとなっているように思います。
戦争の状況も確固たる意志を持って突き進む、賢人会議が数で圧倒的に勝る人間側の猛攻を巧みにかいくぐって大気制御衛星を奪取する展開は爽快感がありますし、外的な要因によって動かされているように見える天城錬の優柔不断さにいら立ちもあり、なおさら、賢人会議の正当性を感じるのでした。ラストシーンでサクラが天城錬に「私の道を否定する貴方だったらどうするのだ」と問うたときに、天城錬は何も答えられずに、衛星から排除されてしまいますが、それも当然の結果のように思います。ここからの天城錬の奮起があるのかないのか・・・。天城錬に対してはストレスの増す上巻でした。





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