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なかまくらです。
たまには、童話ぽいのを書いてみました。
どうぞ。
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「金のごみ」
作・なかまくら
2016.1.24
ある男は、けっして賢くはなかったが、
素直に喜んだり、悲しんだりすることの
できる人間だったそうな。男は、晴れた
日には毎日かかさず、街を歩き、ごみを
拾っていたそうな。それは、ごみをみて、
男が嫌な気持ちになるからだった。同じ
ように、ごみを見て嫌な人が出ないよう
男は、ごみを分別して持ち帰っていた。
あるときいつものようにごみを燃して
いると、煙が妙な風に集まって、その中
から、顔が現れた。その顔は、エホンと
せき払いをしてから、こう言ったという。
「お前は、実にできた人間である。お前
のような人間は少し良い暮らしをしろ。」
そう言うやいやな、燃やそうとしていた
袋の中身のごみ屑を、そっくりそのまま、
黄金の屑に変えて見せたのだったそうな。
その話を聞いた、隣に住んでいる男は、
あくる日が来ると、さっそくごみ拾いに
乗り出した。燃えるごみ、燃えないごみ、
空き缶、空きビン、ビニール製のごみ袋、
発泡スチロールのブロックに、物干し竿、
折りたたまれた傘、車のタイヤに冷蔵庫。
「大きいものほど、大きい金になるぞ」
隣の男は、ほくそ笑みながら、せっせと
拾いました。拾ったごみは、金になると、
一切合切を棄てなかったので、隣の男の
家は、ごみだらけで悪臭漂う有様だった。
それでも、隣の男は、拾い続けたそうな。
すると、長い月日のあとに、遂に、煙が
顔の形をしたそうだ。その姿を見たとき、
隣の男は、ほっとした表情をしたそうな。
「お前は、実によくごみを拾ったようだ
お前のような人間は良い心を持つといい」
言うやいなや、隣の男の心身は澄み渡り、
ごみを片付けたそうな。
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